ナガンM1895は、ベルギーの著名な銃器設計者であるナガン兄弟(仏:Nagant)によって設計された、7連発の軍用回転式拳銃である。
モシン・ナガンM1891/30などのナガン兄弟が設計した火器はロシア帝国で多く採用されている為、本銃もロシアで設計された軍用銃と認識されがちだが、元設計はベルギーにおいて行われている。
本銃は主としてロシア帝国、ソビエト連邦で使用された。
M1895はロシア帝国で制式採用された年度に由来するモデルナンバーである。
概要
口径は7.62mmと小径であるものの、シリンダーには7発装填が可能であり開発当時の軍用拳銃としては装弾数が多かった。
また、この銃を象徴する機構としてシリンダーと銃身の隙間を塞ぐ特殊機構が備わっていた。
これは、ハンマーを起こすとシリンダーが前進して銃身後端(ホーシングコーン)と密着するというもので、銃本体以外に弾薬(7.62×38mmR 後述)も独自のものであった。
これは、シリンダーギャップを塞ぐことで弾薬の威力を落とさずに発射できるようにする為と思われるが、後にサプレッサーを装着できるようになると本銃を特殊なリボルバーとして一躍有名にした。
撃発機構はダブルアクションで、大日本帝国陸軍の二十六年式拳銃と同じく馬上での扱いを考慮しての事であった。
一方で、シリンダーのスイングアウト機構や中折式ではなく、排莢や装填はコルトSAAのように右側のローディングゲートから一発ずつ行う手間がかかるもので、1800年代末に設計された回転式拳銃としてはやや時代遅れの感があった。
シリンダーはエジェクターロッドを回して引き抜き、シュラウドをずらしてからシリンダー軸を外せば取り外すことができた。
上述の装填の手間もあって、逐一込め直しをするよりは撃ち切って予めフル装填しておいた予備のシリンダーに交換するという、オートマチック拳銃のマガジン交換のような扱いをしていた者も多かったという。
7.62×38mmR
本銃向けの7.62×38mmR弾(7.62mmナガン)は、一般的なリボルバーの弾薬と違って薬莢の長さがシリンダーの長さより僅かに長く、通常の弾薬であれば薬莢から露出する筈の弾頭はテレスコープ弾や散弾銃のスラッグ弾と同様に薬莢の中に収まる。ハンマーが起きてシリンダーが前進すると、シリンダーから僅かに飛び出た薬莢の前端がホーシングコーンに噛み合う仕組みである。(更に言えばシリンダーそのものにもホーシングコーンと噛み合う凹みがある)
薬莢前端は銃身の内径より狭められており、発砲するとこの部分が広がってホーシングコーンの内側に貼り付いてガス漏れを防ぐという2段構えとも3段構えとも言える念入りな構造である。トリガーを戻すとシリンダーが後退し、薬莢の先端は引き抜かれる。
運用
1895年よりロシア帝国によって制式拳銃となり、1898年より輸出開始。
日露戦争や第一次世界大戦等で運用され、特にかの最後のロシア帝国皇帝ニコライ2世とその一家、そしてかのラスプーチンの殺害事件でも本銃が使われた。
ロシア革命によって社会主義政権が誕生すると、赤軍やNKVD、後にソ連軍などが運用者となった。
1933年に後継となるトカレフTT-33が開発されたが、第二次世界大戦が終結した1945年までは(あるいはその後も)製造されたようであり、特に世界中の諜報機関の最盛期だった冷戦ではKGBのエージェントらの中にはオートマチックが故にジャムなどの不安が付き纏ったトカレフより、確実性の高いこの銃を選ぶ者も少なくなかった。
別名・表記ゆれ
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