概要
2016年9月3日放送
脚本:中野貴雄
監督:冨田卓
予告
惑星侵略連合の次なる一手。
それはオーブのニセモノを差し向けることだ。
ババルウ星人め、俺に化けて悪事を働こうたってそうはいかねえぜ!
...ってあれ?様子がおかしいな?
次回、ウルトラマンオーブ。「ニセモノのブルース」
闇を照らして、悪を撃つ!
ナレーション:クレナイ・ガイ(演:石黒英雄)
本編
惑星侵略連合に属する宇宙人の1人で、メフィラス星人ノストラに高い変身能力を買われて招集されたババルウ星人ババリュー。
惑星侵略連合配下の宇宙人として、「ウルトラマンオーブに化けて街を破壊する様を人々に見せつけ、オーブと地球人の絆を壊す」という破壊作戦を命じられ、にせウルトラマンオーブに変身し地球に降り立つ。しかし実行に移そうとした矢先、突如現れた(ノストラも想定していなかった事態)テレスドンから自らの身を守るために必死に迎撃したところ、謀らずも逃げ遅れた少年たちを救うことになる。
テレスドンを地中に撤退させた後、ババリューは正体を隠すために等身大になるが、その様子がジェッタに見つかってしまう。とっさに地球人に変身して誤魔化すもオーブの変身前の姿だと誤解されてしまい、名前を聞かれた際に「馬場竜次」という偽名を名乗り、何とかその場を切り抜ける。
その後、ビートル隊の基地近辺で偵察活動を行っていたところを渋川一徹に怪しまれて職質されるが、ジェッタやガイと出会ったことでやり過ごすことに成功し(ジェッタは高校の先輩だと一徹に偽証し、これ以降、彼からは「馬場先輩」と呼ばれ慕われることになる)、集まった大勢の子供達の前でヒーロー・ウルトラマンオーブのフリをする羽目になる。
地球侵略に来たつもりがすっかり子供達に「ババリューさん」と呼ばれ懐かれてしまい、正体や本来の目的を明かすことができずに困惑するババリューだったが、オーブに宛てたプレゼントを受け取ったり、更にヒーローに憧れるジェッタの思いを知ったことで徐々に気持ちが揺らいでいく。そして人に喜ばれることの気持ちの良さを知った彼は、子供達に向けて笑顔を見せ、遊び相手になるなど性格も軟化していき、「このままオーブとして生きていく人生もありなんじゃないか」とすら思い始めるようになっていった。
だが彼による破壊作戦が遅々として始まらないことに業を煮やしたメフィラス星人ノストラの円盤が出現し、破壊作戦の開始とその手始めとして子供たちを踏み潰すように命令される。
しかし、これまでの地球人達との交流を経て、地球への深い愛着とヒーローとしての自覚が芽生え始めていたババリューは自らの意志でノストラに離反した。
ノストラ「まず手始めに、その子供たちから踏み潰せ!」
ババリュー「それは…」
ノストラ「どうした? はやく踏み潰せ!!」
ババリュー「…できません」
ノストラ「なんだと!?」
ババリュー「そんなことできません。俺は今、ウルトラマンオーブなんです!」
ノストラ「お前はニセモノだっ!!ババルウ星人だろうっ!?」
ババリュー「確かに俺は、悪の星の下に生まれた暗黒星人だと思ってました。
だけど、こいつらが教えてくれたんです。
運命は変えられる――俺だって、ヒーローになれるって!!」
激怒したノストラはジャグラーにケルビムを解放させ、ババリューの処刑を命じる。ババリューは子供達を守るために必死に戦うが、力の差は歴然であり、とうとう戦いの中で変身が解け、ババルウ星人としての姿を晒してしまう。
ババリューは、これまでオーブだと偽り騙していたことをジェッタや子供達に詫びる。
「そうだ…俺はウルトラマンじゃねぇ……。暗黒星人のババルウさ…。お前達を騙していたんだ…」
「すまねえ…所詮俺はニセモノなんだ」
しかし、子供達の反応は意外なものだった。
「がんばれ! ババリューさん!」
「がんばってー!!」
子供達はケルビムに痛めつけられるババリューを必死に応援する。
さらに、ジェッタもババリューに言葉を投げかける。
「そうだ……諦めるな馬場先輩!!
あなたが誰であろうと関係ない……子どもたちに言ってくれたじゃないですか!!
『夢を追いかければ、いつかはヒーローになれる』って!
あなたが…あなたが僕たちに夢を見せてくれたんじゃないですか!!」
ババリューは、変わらずに自分を信じる彼らからの声援を受けて再びケルビムに立ち向かう。
「そうだ…おまえの言うとおりだ……ここで…諦めてたまるかぁぁぁーーーッ!!」
しかし力及ばず、ついにババリューはケルビムの猛攻を前に倒れてしまう。
トドメを刺されそうになった瞬間、本物のウルトラマンオーブが登場。
オーブは猛攻でケルビムを圧倒し、ハリケーンスラッシュのトライデントスラッシュを打ち込んでこれを撃破。
助けられた後、「やっぱ、本物はすげぇや…」と言い残し、彼を追うジェッタと子供達の前から静かに姿を消そうとする。ジェッタはババリューを追おうとするがガイが制止する。
「行かせてやれよ。ヒーローってのは、風のように去るんだろう?」
そうして、ババリューは子供達の前から姿を消した。
その後、地球人に身を窶し、髪を黒く染め清掃員としてひっそりと生活しているところをガイに目撃されている(ババリューの方もガイに気づき、嬉しそうな表情で顎に手を当てる仕草を見せている)が、ババリューが地球で静かに生きていくことができるよう配慮してか、ガイはその場にいたジェッタにそのことは知らせず、結局、彼の消息を知るのはガイ1人のみとなった。
余談
店長によると、「昔は相当なワルだったが、今はすっかり人が変わった」とのこと。また、戦友と呼ぶほど彼のことを気に入っていたようである(これは、同じ『ウルトラマンレオ』の登場キャラクターだったことを踏まえての小ネタと思われる)。
なお、ちょうどこの頃、不穏な気配を察知した宇宙人たちが次々に地球を後にしていたことが語られているが、ババリューも地球を脱出していたかどうかは不明(仮に不穏な気配を察知したとしても、子供達に好かれ、地球への愛着を持ったババリューが、そう易易と地球と子供達を見捨てて宇宙へ脱出するなど考え難い)。
また、ババリューの写真が黒髪ではなく金髪だったことから「来店し写真を残したのは連合離反直後~(改心時)では?」という考察も存在する(現在の彼は黒髪に染めている)。
- この回は『オーブ』の中でも特に人気・評価の高いエピソードの1つであり、ニコニコ生放送で実施されたアンケートでは「1.とても良かった 98.9%」を記録している。また『ウルトラマンオーブTHE_CHRONICLE』でも再放送された。この時の放送は"悪からの出自でもヒーローになれた"ジードという、同時期に公開されていた劇場版『ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』との関連ゆえと思われる。
- 中村曰く、地元の友達が、自分の息子に「誕生日のプレゼント何が良い?」と聞いたら「ババリューさん」と答えたとのこと。また、必死に戦うババリューの姿を見て泣いてしまい、放送後には子持ちの友達から「ウチの息子と喋ってくれ」というテレビ電話が多数かかってきたという。
- この回の脚本を担当した中野貴雄は70年代ドラマによくあった「〇〇のブルース」にちなんだこのエピソードについて、「90年代からヒーローもののパロディばかり作ってきた自分が本物のウルトラマンを作っていいのだろうか」と苦悩した時期があり、ババリューの心情にその時の自分の思いが投影されていると語っている。また前作の「X」でも同様の話を考えていたが実現せず、リベンジの意味が込められているという。