概要
2021年3月26日にスクウェア・エニックスが発売したワンダーアクションゲーム。新たに立ち上げたブランド「バランカンパニー」の第1作。
多くのプラットフォームに対応しており、PlayStation4・5、NintendoSwitch、Xbox(One、series X、seriesS)、steamのいずれかでプレイ可能。
『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』や『NiGHTS』を生み出した中裕司と大島直人のタッグによる20年ぶりの新作であり、キャラクターのイメージや世界観は『NiGHTS』を連想させる。
モチーフは『劇場』。人間のポジティブな感情とネガティブな感情が入り混じった不思議な世界「ワンダーワールド」が舞台で、ネガティブな感情に偏りつつある世界のバランスを取り戻す為にプレイヤーを操作して各心象世界を冒険、最深部に潜むボスを倒して闇に囚われた人々を救うのが、大まかな流れ。
各世界はどれも特徴が異なる個性的なものばかりで、コスチュームの力で謎を解き、蔓延る敵を蹴散らしながらステージを突き進むことが攻略の鍵となる。
声を担当する声優は全世界共通。世界中の人々に楽しんでもらえる様「バラニーズ」という架空の言語で話すようになっている。
……とのことだが、実際には単なる英語の逆さ読みである。
(例:Excellent→テネレスケ)
登場キャラクター
()内は小説版で使われた仮の名前。
主人公
- レオ・クレイグ(『ストリートのビート』)
CV:土屋神葉
『バラン劇場』に導かれた少年。プレイヤーキャラのうちの1人で、エマのどちらかを選択する。
普段はクールに振る舞っているが、過去に親友と喧嘩し仲違いをしてしまい、それ以来誰も寄せ付けずに孤独を好む様になった。
- エマ・コール(『戦う少女』)
CV:Lynn
『バラン劇場』に導かれた少女。プレイヤーキャラのうちの1人で、レオのどちらかを選択する。
普段は周りの皆んなからちやほやされているが、周囲が自分の事を嫌っていると思い込み、心を閉ざしている。
ワンダーワールドの住人
- バラン
CV:鈴村健一
ワンダーワールドと繋がる不思議な劇場『バラン劇場』の支配人。
白いシルクハットがトレードマークの謎の男で、常に笑いを絶やさない。
ステージ中では時折しか姿を見せてくれないが、ミニゲームでは障害物を拳やキックで粉砕し、ランスと肉弾戦を繰り広げるというゴリゴリな戦いぶりを見せてくれる。
- ティム
CV:木野日菜
ワンダーワールドに住んでいるヒヨコのような生き物。ポジティブな感情の化身。
プレイヤーの冒険を手助けしてくれるお助けキャラ。
- ランス
CV:櫻井孝宏
ワンダーワールドにて災いを振り撒く、ネガティブの化身たる怪物「ネガティ」の統率者たる存在。バランによく似たフォルムを持ち、背中に複数の触手を生やす。なかなかの美形。
心のどん底に突き落とされネガティブな感情に支配された人間達を、ネガティに変貌させている。
心象世界の人々
ステージとなる全12個の心象世界を形成した人々。心に不安や悩みを抱えていて、それに目をつけたランスによって怪物の姿に変えられ、ボスとして心象世界の奥底に潜む。
最初のうちは選べるステージが少ないが、下記のバランスタチューという像を一定数集めることで新たな世界が出現するようになる。ナンバーは割り振られているが、どのステージに進んでも構わない。
また、ステージ中にふと現れたり、巨大な姿でいきなり出てくる事もあるが、彼らの僅かなポジティブな感情で形成された幻影で、ステージのゴールまで案内する道標なのでご安心を。
- ホセ・ガリアルド(『農園のかかし』)
CV:佐藤美一
トウモロコシ農園を営む農夫の男性。トウモロコシが鬱蒼と広がる、からくり仕掛けの農園の心象世界を形成している。
現実世界で自分が丹精込めて育てたトウモロコシ畑が嵐で壊滅状態に陥り、全てを失い絶望してしまう。
- フィオナ・ディミトリア(『海を見つめる人』)
CV:依田菜津
ダイバーの女性。海底遺跡を彷彿とさせる心象世界を形成している。
イルカのことが大好きで「友達」だと信じてきたが、とあるトラブルでイルカの事を信じられなくなった。
- ユリ・ブランド(『虫愛でる子』)
CV:佐藤美由希
虫の事が大好きなおとなしい雰囲気の少女。虫達が生息する神秘的な森の様な心象世界を形成している。
虫好きなのをいい事にクラスメイトに世話を押し付けられ、育てても気味悪がられて近寄ってくれず、自分の好きなことを他人に認めてくれない事に不満を抱く。
- ハオユー・チャン(『空を見つめる人』)
CV:佐々木拓真
空を飛ぶのを夢見る少年。様々なガラクタが散らばる浮遊島の心象世界を形成している。
空飛ぶ自転車を作ろうと試行錯誤を繰り返しても失敗が込み、いつしか挫折していってしまう。
(小説版では少し流れが違う。)
- サナ・ハドソン(『森の守護者(ガーディアン)』)
CV:ニケライ・ファラナーゼ
森を見守る黒人の女性。鬱蒼とした森林が広がる心象世界を形成している。
自分が大事にしている森林が土地開発の影響で開拓されてしまい、自らの無力さと人の身勝手さに心を押し潰されてしまう。
- キャス・ミリガン(『時計台の子』)
CV:大地葉
とある街に住む少女。可愛らしいモチーフが点在する時計塔の心象世界を形成している。
偶然出会い、可愛がっていた仔猫が車に轢かれそうな所を目撃し、あまりのショックで逃げ出してしまい、時間を戻して欲しいと後悔と罪悪感を引きずっている。
- カル・スレッシュ(『白と黒の王様』)
CV:河本邦弘
チェスの世界チャンピオンだった長身の男性。チェスのモチーフが点在した広大な城のような心象世界を形成している。
チェスの腕前は一流で負け知らずだったが、とあるチャレンジャーに敗北を喫して以来負けが込むようになった。それでも現実を受け止めず、かつての栄光にすがり続けている。
- イーベン・ビア(『白夜の美女』)
CV:嶋村侑
クールな印象を漂わせる美女。全面が氷で覆われた心象世界を形成している。
なに不自由なく幸せなひと時を過ごしていたが、両親を事故で亡くして以来、哀しみから逃げるように愛を拒絶するようになった。
- アッティリオ・カッチーニ(『もの想うピエロ』)
CV:鵜澤正太郎
遊園地でピエロに扮した青年。ネオンがキラキラ輝く夜中の遊園地の心象世界を形成している。
自分の事を助けてくれた女性に恋をし告白しようにもピエロの格好越しでしか話せず、中々勇気を出せない事に自らを追い詰めていってしまう。
- ルーシー・ウォン(『麗し館の女』)
CV:きそひろこ
ふくよかな女性画家。騙し絵のように入り組んだ美術館の心象世界を形成している。
周りの賞賛に応えようと創作活動に勤しむが、いつしか作品の出来に納得ができず、スランプに陥ってしまう。
- アイス・グローヴァー(『街の守護者(ガーディアン)』)
CV:綿貫竜之介
新米の消防士。そこかしこが燃えている侘しいオフィス街の心象世界を形成している。
子供の頃からヒーローになるのが夢で消防士の職に就いたが、本物の炎と対峙して恐怖で足がすくんで自信を無くしてしまう。
- ブルース・ストーン(『見えない清掃員』)
CV:多田野曜平
ゴミを拾い続ける老人。様々なトラップが仕掛けられた朽ちかけた遺跡の心象世界を形成している。
街を綺麗にしようとゴミを拾い続けても周りが気にせずゴミを捨てていき、少しずつ心が疲弊。周りとの孤独感を感じる様になる。
システム
コスチューム
今作における最大のシステム。ワンダーワールドの住人「キャスト」の力を衣装として身につける事ができ、それに応じた能力を使えるようになる。
操作はコントローラーとボタンだけの簡単操作。コマンドを押すだけで能力をすぐに使える。
だが、衣装によってはジャンプが出来なかったり、攻撃自体が出来ないものもあるので、無闇に衣装を変えることは禁物。
最大3つまでストック可能で、更に変更したい場合は各セーブポイントに現れる更衣室で今まで手に入れた衣装の変更・整理ができる。
因みに、上記の画像はほんの一部で、衣装の総数はなんと80+α種類。
ミニゲーム専用や特殊なコマンドを使わないと手に入らない物など千差万別。衣装の力で一工夫しないと手に入らないものあり、じっくり探してみるのもあり。
また、衣装の元であるキャスト達はステージ上にバックダンサーのように踊っている。
バランチャレンジ
各ステージにある金色のシルクハットを触ると発生するミニゲーム。バランが爽快に障害物を壊しまくる。
バランの動きに合わせて姿が重なり合った瞬間にボタンを押し、上手く成功するとステージ解放に必要なバランスタチューといった報酬が手に入る。
ただ判定がシビアで、ノーミスパーフェクトがこのミニゲームクリアの絶対条件であり、一度でもタイミングを間違えると評価が直ぐに下がってしまう為、結構難しい。
しかも一度終えると、ボスステージをクリアしない限りいくら経っても復活しないので、やり込みたいプレイヤーとっては最大の関門かもしれない。
評価
世界観やキャラクターデザインは悪くなく、BGMやグラフィックのクオリティは高いものの、残念ながら数々の不満点や「発売が10年遅い」とすら言われるチープなシステム、「各国で楽しめるように、また人によって様々な解釈をして欲しい」ということで作られた架空言語のはずなのに「誰がどう見ても同じ解釈しかできない」レベルでシナリオの底が浅い、やりこみ要素がシビアすぎる上に面倒過ぎる等様々な要因が積み重なった結果、2021年度クソゲーオブザイヤー大賞を受賞してしまった。
一部だがその要因を紹介する。
- ゲーム中の描写だけだと情報が少ない
本作の独特で神秘的な物語を彩るキャラクターの詳細、旅の目的やティムの細かな育成方法、敵の個別名すら本編では明かされないレベルの情報・説明不足が目立つ。
ゲーム中で登場人物の名前はほとんど表示されず、確認できるのは公式HPと言ったゲーム外の限られた所のみ。
攻略本も発売されていない為、ネットの様々な情報をかき集めない事には完全攻略は難しく、前もって情報を入れ込んでいるプレイヤーならまだしも、何も知らないプレイヤーにとっては消化不良になる事もある。
また、公式イラストが公開されていないキャラクターも多い(一部のキャラクターのシルエットは出た事はあるが、完全なイラストは未公開。一生世に出ないかもしれない)。
ただ、ゲーム本編の補完として同作の小説版が発売されており、興味があれば読んでみるのをオススメする。
- 衣装は基本的にその場限り
数多くの衣装が存在するが"その衣装でないとダメ"な部分はほぼなく、ピンポイントで必要な箇所以外は完全上位互換が相当数存在する。
挙句マリオのように敵に触れた瞬間服が消失、カービィのように特定位置に戻るかステージをやり直さなければ服が得られない為とにかくノーミスを強いてくる。
また衣装は三つまでしか保持できない、移動用、攻撃用(移動用はジャンプやそれに準ずる大移動が出来るが攻撃出来ず、攻撃用はジャンプが出来ないのでこの二つの枠は攻略の際必須)そして謎解き用で枠がいっぱいになる。
そしてチェックポイントにストックしている服(攻撃されて失わなければチェックポイントで三つの枠とストックしている服を入れ替えられる)と謎解き服を入れ替える為に何度も引き返して服を変えなければならないのでとにかく面倒くさい。
- 余計なお世話
上述通り、敵に触れた瞬間服を失ってしまうので、可能な限り敵は倒していきたいのが人情というものだが、ここでそれを阻害してくるのが「バランスAI」という独自の難易度設定
上手いプレイヤーには難易度を高く、下手なプレイヤーには簡単に、という理念は素晴らしいのだがその判定条件は「ノーミスで倒した敵の数」、つまり服を失わないように先手を打って敵を倒せば倒すだけ、どんどん敵が増え、中ボスも強バリエーションに変化し、難易度が跳ね上がっていく。
トロフィーや称号には強バリエーションを倒すことが条件になっているものもあるため、それを目指すやり込みプレイヤーは常にノーミスを意識しなければならないし、サクサク進めたい人は、逆に「一体も倒さない」無血開城プレイを要求される。
安全策を取ろうとすると後の道のりが余計に危険になるため敵をビビり散らしてイライラ棒をやらされるのを強制されるこの難易度設定はまさしく「余計なお世話」だろう
- 理不尽な判定
例えば離れた浮島に空中浮遊の服で降り立とうと飛んで行ったとして、着地できるのは左端か右端だけ、真ん中は距離が足りているにもかかわらず見えない壁に阻まれており、阻まれたが最後、左端にも右端にも航続距離が足りず墜死する、当然服を失う為また拾い直しである。
余談
制作の指揮をとっていた中裕司は、発売後ほどなくしてスクエニを退社。同時に「開発段階で不本意な形で現場から外された」などスクエニ上層部を批判し、法的な争いに持ち込む構えも見せるなど大人の事情を垣間見せることとなった。
だがその後、なんと中がスクエニ内部でインサイダー取引を犯していたことが判明し、逮捕されるという展開となった。
本作の評価もさることながら前科もついてしまったため、彼が今後ゲーム開発に復帰することは難しいと言わざるを得ないであろう。
RTA in Japan Winter 2023
RTAイベント「RTA in Japan」では、2人同時プレイを一人で操作する荒業を披露。
2人同時プレイのみ行える「ジョイント」をフル活用して別ゲーのような挙動を見せていた。
1人プレイでもこれくらい自由に動けていれば違った評価が得られていたかもしれない。