フラッシュポイント
ふらっしゅぽいんと
人生において確かな事はただ一つ……
偶然の介在も認めるにせよ……
ほとんどの事件は人が起こすという事だ
DCコミックにおいて、それまでのニューアースと呼ばれる世界設定と、そこから世界設定ごとリブートしたNEW52というシリーズをつなぐエピソード。
「フラッシュポイント」の一連のエピソード内で起きた歴史改変を、ヴィランを撃破したフラッシュは元に戻そうとしたのだが、それが中途半端に終わってしまい、その結果それまでとは異なる新しい歴史であるNEW52が生まれてしまった。
2023年公開の劇場版「ザ・フラッシュ」の原案でもある。
にもかかわらず、日本語訳の発売元であるヴィレッジブックスが2022年末に出版事業から撤退してしまった為、同映画公開の時点で本書の日本語版を入手する方法は、書店に残っている在庫か古本しか無い。
粗筋
世界最速のヒーロー「ザ・フラッシュ」ことバリー・アレンが居眠りから目を覚ました時、世界は一変していた。
フラッシュの能力とコスチュームは消え、妻とは結婚しておらず、幼い頃に何者かに殺された筈の母親は生きていて、妻殺しの容疑で獄中で死んだ筈の父親は平凡だが幸せな一生を終えていた。
だが、何かがおかしいのはバリーとその家族だけではなかった。
どんな悪人でも殺さない筈のバットマンはジョーカーの手下を平然とビルの屋上から突き落し、スーパーマンの事は誰も知らず、若手ヒーローの一人だったサイボーグはアメリカで最も有名なヒーローとなり、ワンダーウーマンの祖国セミッシラとアクアマンの祖国アトランティスの間の戦争に巻き込まれヨーロッパ西部は滅んでいた。
世界が一変した謎を解き明かすべく、バットマンに協力を仰ぐ為にゴッサムに向かったバリーだが、バットマンの基地であるバットケイブの様子は彼が知っているものとは違っていた。
だが、バットケイブ内で幼い頃のブルース・ウェインとその両親の写真を見付けたバリーは、自分を侵入者と見做して叩きのめしたバットマンに、
「ブルース、待て! バリー・アレンだよ。まさか忘れたのか、ブルース……」
と呼び掛けるが、返ってきた答は……。
「ブルースは……死んだ」
果たして、この世界では何が起きていて、歴史が変った原因は何なのか?
小ネタ
- 実写映画版「ザ・フラッシュ」の原案なのだが……よりにもよって本作のヴァリアント・カバーの中には「赤毛で海底王国のお姫様」という同時期に劇場公開されたディズニー映画の主人公と共通点が多いメラの生首を手にしたワンダーウーマンというものが有る。あまりと言えば、あまりに酷い偶然と言える。
この世界と本来の世界の主な相違
- 粗筋と登場人物を見て気付いた人も多いだろうが、元の世界のバットマンのオリジンではブルース・ウェインが両親を事件で失ったが、この世界では事件で死亡したのはブルース・ウェインだった。生き残ったブルースの父親であるトーマス・ウェインはバットマンとなり……母親であるマーサ・ウェインは狂気に囚われて、この世界におけるジョーカーと化した。
- 赤ん坊の頃のスーパーマンが乗っていたロケットはメトロポリス市に落ち、市内を壊滅させた。その後、約30年間、スーパーマンは力の源である太陽光が届かない地下施設に監禁され、ガリガリに痩せ細った常人並の能力しかない男と化していた。しかし……その地下施設から解放され、太陽光を浴びた途端……「あれが地上最強のパワーの持ち主か?」「逃げ足だけは最強だな」
- なお、この世界では服のマークの「S」はアメリカ政府による呼び名である「サブジェクト1」の頭文字。
- 前述の通りセミッシラとアトランティスは戦争中。ワンダーウーマンは和平交渉に出掛けるが……よりにもよって、アクアマンの恋人のメラを殺した時に奪った兜を被って行ったせいで、当然のようにアクアマンの御機嫌は更に悪くなり、両国の関係は更に悪化。
- 本筋とは関係ないが、ハル・ジョーダンにリングを託したグリーンランタンはこの世界線では生きている。なお、グリーン・ランタンにならなかったハル・ジョーダンは……ヨーロッパの西半分を壊滅させても、なおも続く戦争の最中に戦闘機のパイロットをやっているという嫌な予感しかしない状態。
結末
セミッシラとアトランティスの戦争を止める為、アメリカのヒーロー達と共にヨーロッパに向かったバリーだったが、一行の中にセミッシラのスパイが混っていた為に、逆に状況は悪化。
にっちもさっちもいかなくなった所で……宿敵のリバース・フラッシュが姿を現わし、残酷な真実を告げる。
バリーはこの世界を生んだ歴史改変を行なっていたのは、リバース・フラッシュだと思っていたのだが、実際は、自分の母を殺したのがリバース・フッシュだと知ったバリーが、それを止める為に過去に行った際に2人の力がぶつかった事で起きたアクシデントのせいだったのだ。
そして、そのアクシデントの結果、リバース・フラッシュは歴史改変の影響を受けない「生きたパラドックス」と化してしまった。
それまではバリー・アレンが存在しなければ、今の自分は無かったという背景の為に、バリーを殺せなかったリバース・フラッシュだが、ようやく殺せるとばかりにバリーを叩きのめす。
そしてリバース・フラッシュは勝ち誇って告げる。
因果律から外れた存在になった自分は、いつでもバリーを殺せる。今この場でも、バリーが母親の胎内に居る時でも、望む時に。
だが「ヒーロー」であるバリーは自分を殺せない、と……。
しかし……。
「私ならどうだ?」
「医師の忠告だ…戦場で警戒を怠るな。寿命が縮むぞ」
偶然にも、バリーは「人を殺せるヒーロー」である、この世界のバットマンを連れて来ていた。
歴史を自由に改変出来る神にも等しい存在と化したリバース・フラッシュは「単なる少々強いだけの何のスーパーパワーもない人間」に過ぎないバットマンに、あっさりと背後から刺殺されてしまったのだ。
元凶であるリバース・フラッシュを倒した後、バリーは超高速移動能力を使い、母親の死を阻止しようとしていた過去の自分を更に阻止し……。
だが、何故か時間軸が3つ存在している事を知る(メタな見方をすると、DCコミックの過去の2つの世界設定と、これから始まるNEW52の世界設定)。
その中で、謎の女の声を聴く。
時間軸を3つに分けたのは、ヒーロー達の力を削ごうとしている存在であり、3つの時間軸を統合し、本来の姿に戻せるのはバリーだけだ、と。
そして、再び、バリーが居眠りから目覚めた時、世界は元に戻っているかに見えたのだが……?
コメント
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今更ですが、コミック「フラッシュポイント」のバリーとトーマスが切な過ぎ。 NEW52! のバリーがどこまでフラッシュポイントの世界を覚えているのか不明ですが、母親のことを覚えているならトーマスのことも少しは覚えていてもいいのでは、とラストの数ページの背景をバリー視点で想像・創造・捏造しました。個人的な解釈です。ご了承ください。 「フラッシュポイント」ネタバレ&「フラッシュポイント バットマン」「フラッシュ 邪悪なる閃光」の内容に少し触れています 題名は「フラッシュポイント」の皆の行動を表してる言葉だなと個人的に思って。 ※読みにくい部分を少し修正しました。3,322文字pixiv小説作品