概要
最初の時間軸でミーアの専属メイドだった少女。ティアムーン帝国の中央貴族であるローゼンフランツ伯爵家の三女。
原作第12巻の電子書籍版特典の番外編「専属メイドになりそこなった少女」では、彼女が主役を務める。
Web版では初期におけるミーアの回想にモブ同然の扱いで登場するが、のち第九部のミーア学園編にて本格登場を果たす。
人物像
肩口で切り揃えた髪と、どこか勝気な瞳が特徴の女性。
要領が良くお世辞を言うのが上手くミーアの専属メイドになったのも上司やミーアへのおべっかや太鼓持ちが功を奏してのこと。
だが主人に対する忠誠心は低く、ミーアの知らないところで陰口を叩いていた。メイドとしての仕事はそつなくこなせる一方で、仕事としてでもその技量を高めようという気概は持ち合わせておらず、いわばメイド仕事は「お嬢様の箔付けのための腰掛け(形だけの花嫁修行の一環)」という側面が強い。
ティアムーン中央貴族の出自であるため新興の家や辺土貴族を貴族と認めず見下している。また他国やそれらが持つ国際的な権力(パワーバランス)や、他国の文化や常識も、かなり侮り軽く見ており(時には露骨に見下し)理解もしていなかった傾向がある。
前者は当時の帝国貴族の"常識"であった(そういう家庭環境であり、そういう親に育てられている)ため、いかんともし難いかもしれないが、後者に関しては「国際政治の舞台にも立つであろう姫殿下のメイド」としては(抜擢された時点で自ら理解して勉強しなくてはいけない事柄であり、またセントノエル学園自体がそういう「多様な価値観と柔軟性と国際性」を学ぶ場であるため)かなり致命的な欠陥といえる。
お茶会が大好きで事ある毎に開き、仲間と流行やイケメンの話題や恋バナに花を咲かせるなど、ミーハーなところもある。また派手好きな部分があり堅実な事は嫌いで、ゆえに物事の本質を見抜く事が出来ていなかった。ちなみに、虫が苦手。
作中での動向
最初の時間軸
前述の通り、ミーアの専属メイドに抜擢され、セントノエル学園に同行する。しかし「自分にうつされたくないから」という理由で風邪をひいたミーアを放置して友人とお茶会を楽しむなど、専属メイドとしての仕事は不真面目であった。
セントノエル学園到着時の荷解きの際、流行には程遠い地味な手縫いのシンプルなクラシックドレスを見つけるが、それを皇帝がわざわざミーアの荷物に入れさせた意味を理解できず「こんなドレスを姫殿下に着せるなんて」「だからといって自分に下賜されるのも困る」と奥深く封印してタンスの肥やしにしてしまっている。
何よりも、セントノエルの新入生歓迎ダンスパーティーの裏で勃発していたティオーナ監禁事件においても仲間たちと共にお茶会に興じており(しかもペトラの「仲間」の中にはティオーナを監禁した実行犯やその友人も存在していた可能性がある)、事件への積極的な関与こそないものの、事実上の同じ穴の狢となっていた。
この事が「ティオーナ・シオン・ラフィーナ」の3人に対しての悪印象となり、また最終的には彼らが「ミーアこそが事件の主犯格であり、そのそもそもの原因はティアムーン帝国こそが民を虐げ苦しめる事を是とする、中央正教会の教理に逆らう『邪悪なる神敵の国』であるがゆえ」と決めつけてしまう決定打と化す。そして、この事件が、のちのティアムーン革命におけるティオーナ・シオン・ラフィーナ」によるアンチミーアトライアングルを構築させるきっかけとなっている。
つまり早い話、ペトラの迂闊がミーアをギロチンに押し上げた最初の契機である事になる。またそれゆえにペトラは最初の時間軸でミーアがラフィーナから無視される原因を作った張本人でもあるという事になる(この時点で仲間から事件のあらましを聴取しミーアに報告して適切に対処させていれば事態の悪化は緩和できていた可能性が高い)。
その後、帝国全体に不穏な空気を感じ取ると専属メイドをあっさり辞職し、実家に出戻った。しかし、革命の炎はローゼンフランツ伯爵領にも及び、あっさりと失陥。両親は暴徒に捕らわれて処刑され、二人の姉は消息不明となり、一瞬にして天涯孤独の身となる。
途方に暮れた彼女は帝都ルナティアにあるローゼンフランツ伯爵家の別邸に向かうが、そこも既にもぬけの殻、金目の物は元使用人たちが、退職金代わりの餞別というタテマエで(無断で)持っていってしまっていた。
さらに、帝都ルナティアで流行していた流行病に冒されて衰弱した彼女の身体は既に限界を迎えており、そのまま行き倒れになるが、そこへ偶然通りかかったミーアに発見され、彼女にメイドとして雇い直される(という名目で実際にはミーアがペトラを看病する)という形で命拾いする。
その後、帝都ルナティアと白月宮殿が革命軍の手によって陥落すると、彼女は「ミーアに虐められて衰弱したメイド」として保護された。一旦は否定しようとした彼女だったが、自身が貴族の娘でありミーアの専属メイドだった過去を知られることを恐れ、それを否定する事はできなかった。そのとき彼女は「今更自分がミーア姫殿下の弁護をしたところでミーア姫殿下の死刑は変わらないのだから、下手なことをしないほうが得策」と自分に言い聞かせた。
体調が回復した後、専属メイド時代のミーアとの楽しかった日々を思い出し、自分にもまだ出来ることがあるとミーアの世話をするために地下牢に向かおうとするが、そこで同じくミーアの世話をしにきたアンヌの姿を発見。自分よりミーアに冷遇されていたはずのアンヌがミーアの世話をしようとしていること知り、その姿に自らがミーアにした仕打ちを顧みて「もはや自分にはその資格はない。今更どの面下げて姫殿下の御前に出られるだろうか」と自身の身の振る舞いを恥じ、アンヌに母の形見でありミーアに使おうとしていた櫛を託した。
その後は、新月地区にある小さな教会で孤児の面倒を見ていたようだが、革命政府の分裂瓦解を経て小国となった元各領と周辺国が覇を競い、弱肉強食を是とする戦国地帯となった"旧ティアムーン地方"においては、いかな手段を以てしても弱き孤児たちを守るような事は出来ず、子どもたちの生死や荒みをただ無為に見送るしかなく、結局は運命の荒波に潰され無意味に過ごす、終生自分を許す事の無い人生を送った。
本編の時間軸
アンヌが専属メイドに任命されたことにより、メイドを続ける意味をなくしていたが、実家に戻る気もなかったためメイドを続けていた。最初の時間軸の記憶が「夢」という形で影響しているのか、ミーアに対しては後ろめたさを感じており、自分が専属メイドに任命されなかったことも「ミーアさまの専属メイドには彼女(アンヌ)の方が相応しいから」と素直に認め、受け入れている。そのため、アンヌが専属メイドになったことに不満を持つ下級メイドたちをたびたび嗜めていた。
その後、ミーアが聖ミーア学園を設立すると実家の反対を押し切り入学。その学園生活を楽しむ中で、年少の子供たちの面倒を見ることを懐かしく感じていた。この時期に聖ミーア学園を訪れたエメラルダに対しては前述の理由から「自分がこの学園に通っていることはミーアさまにはご内密にしてほしい」と頼んでいる。
第九部のミーア学園編にて学園の生徒として登場するが、前述の「ミーアに会わす顔がない」という思いから薔薇柄の仮面をかぶり謎の薔薇仮面として姿を表す(…が、当然エメラルダはおろかミーアにすらバレバレであった)。
エメラルダが学長のガルヴに働きかけていたこともあり、卒業後は聖ミーア学園から教師にスカウトされ快諾。自身の貴族としての教養や礼儀作法を生徒たちに教え込んだ。
その功績により、女帝となったミーアから勲章を賜ることを提案されたが、自分には忠義もなくミーアを裏切った人間であると告白。その言葉を聞いたミーアから自身の記憶にない裏切りを許され勲章の代わりに「夢」で出来なかったミーアの髪を梳くことも許可される。
後年の歴史書では聖ミーア学園を代表する教師であると同時に、ミーアの良き友人として記載されることになる。
余談
元々はミーアが最初の時間軸を回想したシーンにのみ登場するモブキャラの一人に過ぎず、「伯爵家の三女」などの基本情報以外は特に設定されていなかった。しかし、コミカライズ版で設定された容姿を原作者が気に入ったことから、番外編「専属メイドになりそこなった少女」が執筆され、名前などの詳細な設定はこの時に明かされた。
アンヌとペトラは様々な設定が対になっている。
- アンヌは平民出身で、ペトラは中央貴族出身
- アンヌはきょうだいでは一番上(長女)で、ペトラは三姉妹の末っ子(三女)
- アンヌは要領はあまり良くなくドジだが、敬愛する主人が相手でも言うべきことは面と向かってハッキリ言う。ペトラは要領が良くお世辞を言うのが上手いが、裏で主人の陰口を叩く
- アンヌはメイドの仕事に対しては真面目で主人への忠誠心が高い。ペトラはメイドの仕事に対しては不真面目で主人への忠誠心が薄い
関連タグ
アンヌ・リトシュタイン(後任)