概要
和名 | モツゴ |
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別名 | 雑魚、モロコ、クチボソ、ヤナギモロコ、イシモロコ、ヤナギハヤなど |
学名 | Pseudorasbora parva |
英名 | stone moroko、topmouth gudgeon |
分類 | コイ目 コイ亜目 コイ上科 コイ科 カマツカ亜科 ヒガイ族 モツゴ属 |
環境省レッドリストカテゴリ | 未掲載 |
体長 | 5~15cm |
分布域 | 日本(中部地方以西の本州、四国北東部、九州北部)、台湾、香港、中国東部、朝鮮半島、アムール地方 |
コイ科の淡水魚。河川中下流域やワンド、ため池、湖、農業用水などの流れが緩やかか全く無い場所を好む。
水草が生い茂る泥底の環境が好みだが、水草が一切存在しない場所や、砂利底やコンクリートの環境でも生息可能。
水質汚濁などに強く、三面コンクリート張りや外来種が多い悪環境でも生存可能なポテンシャルを持つ為、市街地の河川や公園の池などで大抵見られる身近な魚。
本種は遺伝的に大きく分けて2系統が存在する。
和名の由来は「モツ」は脂っこいのを「むつこい」ということから「むつ」が「もつ」に変化し、「ゴ」は魚を表す語尾「こ」が訛ったとする説や、産卵後のオスが巣に産み付けられた卵を守る習性から「持子」とする説などがある。
分布
東アジアに広く分布し、国内分布は一般的に関東地方以西の本州、四国、九州とされているが、近年関東地方の個体群は国内外来種とする説が有力視されている。
その他、北海道、東北地方、隠岐諸島、南西諸島などに国内外来として移入分布する。
中国産の外来個体群も各地に定着している。
本州では個体数が非常に多いが、四国や九州、琵琶湖では生息地が限られ、個体数も少ない。
ヨーロッパや西アジア~中央アジア各地、イランなどにも外来種として侵入しており、侵略的外来種として猛威を振るっている。
形態・生態
口は受け口で細く尖り、体側に1本の黒色縦帯を持つ。
口ヒゲは無い。
側線が完全な点が近縁種との違い。
底生動物やプランクトン、付着藻類などを食べる雑食性。
食べる際にコツコツと音をだすが、何のためにどうやって発音しているのかは研究されていない。
イラスト左側がオス、右側がメス
繁殖期(4~8月)になると、オスは黒色縦帯が消失し、鱗が黒く縁どられ、黒紫がかったいぶし銀の婚姻色と追星が現れる。メスは腹部が卵で膨らみ、体色が黄金色に変化する。
オスは産卵に適した場所(石や流木、水生植物の茎、コンクリート護岸など)を掃除して産卵床を作ってその周辺に縄張りを張り、近づく他のオスと激しく争う。
メスが近づくと求愛行動を行い、自らの産卵床に誘って産卵を促す。
メスはオスが用意した産卵床に粘着卵を産み付け、オス親は稚魚が孵化するまで卵の世話をし、近づく天敵を追い払う。
孵化した稚魚は約1年で成熟する。野生下での寿命は3年ほどとされるが、飼育下では5年ほど生きることもある。
文化
小物釣りの対象種になる他、釣り餌にも使われ、一部地域では佃煮や甘露煮、唐揚げなどに加工して食される。モツゴ専門の漁師も存在する。
観賞用に飼育される事もあり、飼育は容易。黄変品種のヒモツゴが存在する。
近縁種
シナイモツゴ
東北~関東に分布するが、関東をはじめ、各地で地域絶滅している。
国内外来種のモツゴとの遺伝的攪乱(遺伝子汚染)が問題となっている。
側線は不完全。
ウシモツゴ
別名ケンカモロコ、東海地方(濃尾平野)の固有種で、モツゴとは泳ぐ水深を変えて棲み分けている。
平地の農業用水やため池などに生息していたが、現在は数える程しか生息地が残っていない。
モツゴが持つ体側の黒色縦帯を持たず、非常に気が荒い。
側線は不完全。
中国ムギツク
中国の河川上中流域に分布する魚。
モツゴよりムギツクに近縁だが、何故かモツゴ属に分類されている。
日本では観賞魚として流通する。
ムギツク
モツゴ属に近縁なムギツク属に分類される淡水魚。
流れがある河川や農業用水路に生息する。
繁殖生態は大きく異なり、オヤニラミやドンコなどの肉食性淡水魚の巣に托卵する。
モツゴとの交雑種が発見されている。
一対の口ヒゲがある。
クロムギツク
朝鮮半島に分布するムギツクの近縁種。
名前の通り体色が黒っぽく、ヒレには矢形模様がある。
コウライオヤニラミなどに托卵する。
ホソムギツク
朝鮮半島に分布するムギツクの近縁種。
ムギツクに似るが、ニョロっとした細長い体型でフラフラ頼りなく泳ぐ。
コウライオヤニラミなどに托卵する。