概要
アメリカ合衆国の大手楽器製造会社・ギブソン社が生産するエレキギターのブランド。
1952年、ギタリストのレス・ポール氏(1915年6月9日~2009年8月13日)と共同開発した、レス・ポール氏のシグネイチャー・モデルである。ギブソン社初のソリッド・ギターでもあった。
世界各国で「"レスポール"タイプ」と称する類似品が出回っている。
外見の特徴(通常モデル)
ボディはマホガニー材の上にメイプル(楓)材を貼り合わせ、メイプルの部分を丸く盛り上げたアーチ・トップ。
最初のレスポールは豪華に見えるという理由で金色に塗装されていた。
1958年から採用されたサンバースト塗装は褪色が早くクレームが来たため、1960年から褪色しない塗料に変更された。しかし、最初期のサンバースト・モデルは経年変化で美しい杢が表れ、現在では非常に高い価格がついている。
ネックはボディに臍(ほぞ)を切って差し込み、接着剤で固定したセットネック。
ネックとの接合部付近のボディは高音弦側が抉られたシングル・カッタウェイ仕様となっている。
ヘッドは削り出しで角度を付けてあり、ペグの配置は両側3連。
24+3/4インチ(約628mm)のネック・スケール(弦長)はジャズ・ギターから受け継がれた伝統的な長さで、その出自を物語っている。
ピックアップはリズム(ネック)側とトレブル(ブリッジ)側の2箇所で、3点切り替えのトグル・スイッチで切り替える。
1968年以前のレスポールは、ネックのジョイント部分をボディに深く食い込んだロング・テノン(ディープジョイント)という仕様であったが1969年以降では廃止され、後述のギブソンカスタム製のみの仕様となっている。
音質
最初のレスポールに搭載された「P-90」は、シングル・コイルながら巻き数が多く、大出力で「太く甘い」音だが、高域の抜けが良く倍音が豊かである。ただし、大出力のためハム・ノイズを拾いやすい欠点があった。
1957年にセス・ラヴァーによりオリジナルのハム・バッキング・ピックアップ(ハムバッカー)が開発され、ピックアップの裏に「Patent Aplied For(特許出願中)」と書かれたシールが貼られていたことからP.A.Fと呼ばれている。
ギブソン製のハムバッカーからの音は「太く甘い」と形容され、特にオリジナルの「P.A.F」は、「レスポールらしさ」の基準にされている事が多い。
ヘビーメタルのギタリストの間ではピックアップのカバーを外し、高域を稼ぐ改造が流行したが、ギブソン社も「496R/500T」などのハイゲイン・ピックアップを用意している。
「マホガニー・バック/メイプル・トップ」のボディ構造により、メイプルのタイトな特性とマホガニーの暖かみのある特性がバランスされている。
ネック接合がセットネックのため、ボルトオンのギターよりもサステインを得やすい。
歴史
1952年、最初のモデル「ゴールドトップ」が登場。トップ材はハード・メイプルだが、金のソリッド・カラーで木目は見えない。ピックアップは「P-90」だった。1957年まで生産。
1954年、「カスタム」が登場。指板がエボニー(黒檀)材で、バインディングや金属パーツは金色。ヘッドにスプリット・ダイヤモンド・インレイが施され、塗装にも高級感がある。ボディはマホガニー材単一。ピックアップはリズム側が「アルニコV」、トレブル側が「P-90」だった。
同年に廉価版の「ジュニア」も登場。通常モデルからメイプル・トップを取り除いたようなボディで、アーチ・トップ加工は無く軽量。ピックアップは「P-90」シングル。テレビ映りの良い「TVイエロー」のソリッド・カラーに塗装された。
1955年、「ジュニア」のピックアップを2つにした「スペシャル」が登場。
1957年、「カスタム」のピックアップが「P.A.F」×3に変更。
1958年、「スタンダード」登場。木目が透けて見えるサンバースト塗装のため、トップ材がブックマッチの2ピースとなった。ピックアップは「P.A.F」×2。本体が重く、パワーがありすぎて使いにくいギターとされた。
同年、「ジュニア」、「スペシャル」のボディ形状がダブル・カッタウェイになる。
1960年、販売不振により生産が打ち切られる。
1961年、SGスペシャルの流れを汲むギターが「レスポール・モデル」の新型として発売される(SG)。レス・ポール氏は自分のシグネイチャー・モデルと認めずギブソンとの契約を打ち切った。
1966年、ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズのアルバム「Bluesbreakers With Eric Clapton」で、ギタリストのエリック・クラプトンがレスポールを使用。マーシャル・アンプとハムバッカー・ピックアップの組み合わせは多くのフォロワーを生んだ。
更には、ヤードバーズ時代のジェフ・ベック、レッドツェペリン時代のジミー・ペイジなどの使用により、レスポールは人気になり中古価格が高騰した。
1968年、レスポールが生産再開。しかし、再生産「スタンダード」は金のソリッド・カラーでピックアップは「P-90」という「ゴールドトップ」のスペックだった。一方の「カスタム」もボディがマホガニーバック/メイプルトップ仕様に変更されている。
1969年、再生産「スタンダード」はエリック・クラプトン的サウンドを求めていた消費者に不評だったため、ピックアップをエピフォンの「ミニ・ハムバッカー」に換装した「デラックス」が作られた。また、マホガニーの良材不足により、マホガニー・メイプル・マホガニーの3層を張り合わせてボディが作られ、「パンケーキ構造」と呼ばれた。
1976年、サンバースト塗装でハムバッカー×2の「スタンダード」が復活。
'70年代後半からストラトキャスタータイプの製品に押され気味であったが、'80年代後半からはガンズ・アンド・ローゼズのギタリストスラッシュの使用などで人気が再燃した。
また、この時期から50~60年代のレスポールを再現した復刻品の販売が展開されていた。
1983年、「スタジオ」が登場。バインディングなどの装飾をなくしたモデル。トップ材のメイプルの木目はあまり綺麗でなく、厚みも「スタンダード」より少ない。廉価版の「ジュニア」は音のキャラクターまで変わってしまったので、レスポールらしさを残しつつ価格を抑えた。
1992年、通常の生産工房から独立したハイエンド専門工房の「ギブソンカスタム(別名ギブソンカスタムショップ)」が設立。50~60年代のレスポールを復刻した「Historic Collection」や著名アーティストモデルの再現などを手がける。
2004年、「カスタム」が通常の生産ラインから外れ、カスタムショップの生産ラインに変更された。
2008年、「スタンダード」のデザインやパーツが大幅に変更された。これに伴い、従来の「スタンダード」の仕様を引き継いだ「トラディショナル」が登場する。
2010年、カスタムショップからコレクターやアーティスト所有のレスポールの再現を目指した「Collector's Choice」を展開。
2012年、「スタンダード」のデザインやパーツが大幅に変更された。
2015年、レス・ポール氏生誕100年。「スタンダード」のデザインやパーツが大幅に変更されたが、従来のレスポールの仕様と大きく異なり、2015年~2018年にかけてモダン路線へと突き進んだ。
また、カスタムショップから「Historic Collection」に代わり、ビンテージレスポールのさらなる再現を目指した「True Historic」を展開。通常の復刻品よりコストをかけて再現度が極めて高くなったが、あまりにも高額だったのか、「Collector's Choice」とともに2017年に終了し、「Historic Collection」を復活させる。
2019年、「スタンダード」のデザインやパーツが大幅に変更された。モダン路線から従来のビンテージ路線に回帰し、ラインナップは再構成された。
関連タグ
ギー太 : 平沢唯(けいおん!)が、使用するレスポールにつけたニックネーム
スカーレッドライダーゼクス : キャラの名前として登場
関連イラスト