※本項目はトイ・ストーリー3のネタバレを含みます!
概要
声の担当:ネッド・ビーティ(原語版)/勝部演之(日本語版)
穏やかな老人風のぬいぐるみで、歩くときは杖を持ち、普段はおもちゃの車で移動している。
トイ・ストーリー3におけるロッツォの活躍
保育園のリーダー
アンディ・デイビス少年の所有するおもちゃは密かに動き、生活していた。
だがアンディの成長と共におもちゃ達は一つずつ、姿を消していった。
ついにアンディは大学に進学。一人暮らしを始めることとなり、彼が最も大事にしていたカウボーイ人形・ウッディだけを手元に残し、他を実家の屋根裏部屋にしまう事となった。
ところが、おもちゃは母親の手違いで彼女の知り合いが勤める「サニーサイド保育園」へと寄付されていってしまう。
そのサニーサイド保育園のリーダーがロッツォであった。
はじめ、サニーサイドは所有者の必要を無くしたおもちゃ達の救済の場であると、辿り着いたバズ・ライトイヤーをはじめとするおもちゃ達に説き、歓迎する。
ところが、バズ達が生活する場となったのは、分別のつかない幼年の「イモムシ組」の部屋で、バズ達はらくがきされたり、舐められたり、尻尾を取られたりと、やりたい放題にされてしまう。
一方のロッツォらは年長組である「チョウチョ組」という比較的おもちゃを大事にして、可愛がる子供の部屋でのんびりと過ごしていた。
これに抗議すべく、バズはロッツォと接触を図る。ところが、新入りは「イモムシ組」へ強制的に移送されている事実を知る。とんでもない真実を知ったバズだったが、ロッツォの配下に見つかり、捕まってしまう。
拘束されたバズだったがその前にロッツォが現れ、拘束を解いてくれた。
ロッツォはバズの意見を聞き入れチョウチョ組への移動を約束してくれる。他の仲間たちにも伝えようとしたバズだったがイモムシ組にも遊び相手が欲しいとそれは止められる。しかしバズは家族同然である仲間を置き去りに自分だけ安全な所に行くことに納得せず抗議を続けるが「家族」という単語がロッツォの地雷を踏んでしまいバズを再び拘束する。
そして彼の体内にあるリセットボタンを押し、記憶を消して自身の部下にしてしまった。
ネタバレ注意!
ロッツォの真実
「俺たちはみんな、いつか捨てられるゴミだ。それが"おもちゃ"なんだ!」
実は彼こそが本作のディズニー・ヴィランズ。
当初ウッディは仲間であるおもちゃ達をアンディの元へ帰そうとするも、アンディに捨てられた気になっているおもちゃ達を説得することはできなかった。後に、Mrs.ポテトヘッドがアンディの部屋で失くした右目でアンディの部屋の様子を感知し、アンディが「自分達を本当は屋根裏部屋にしまうつもりでいて、今も探している」という真実を知り、ウッディの主張は本当だった事で、その誤解は解ける。
ウッディは紆余曲折の後、かつてロッツォと共に過ごしていたチャックルズというピエロの人形と出会い、サニーサイドがロッツォの恐怖政治によって支配されていることを知る。
かつての持ち主『デイジー』の大のお気に入りだったロッツォは、デイジーが遠方の公園へ遊びに行った時の手違いでビッグ・ベビーやチャックルズと共にその場に取り残されてしまう。やっとの思いで持ち主の家に辿り着くも、そこで彼が目にしたのは“新しく買われてきたロッツォ・ハグベア”を可愛がる持ち主の姿だった。棄てられたロッツォはショックを受け、彼の中で何かが壊れ、他者への信頼を持たなくなる。その結果、彼は『トイ・ストーリー』史上、最も凶悪且つ冷酷で、自己中心的なクズ野郎へと豹変してしまう。
そして流れ着いたサニーサイド保育園のおもちゃ社会を恐怖と力で支配し、同じおもちゃであろうと貶め、傷つけることをいとわず、新入りを乱暴な子供部屋に送り、監視の目を付けて、脱走する者には容赦をしない、恐るべき独裁者に成り果てたのである。
ウッディはバズ達を救出しようと、保育園に侵入。監視の目を掻い潜り、記憶を消されたバズを味方に付け(途中、リセットボタンの設定の変更のせいかスペイン語を話したりするが、一応は元の記憶を取り戻している)おもちゃ達を園外に通じるダストシュートへ導くが、あと一歩の所でロッツォに先回りされ、脱出を阻もうとする。
しかしバービーへの愛を選んだケンが反旗を翻し、更にウッディがビッグ・ベビーに真実を語る。実は新しいおもちゃに買い替えられたのはロッツォのみで、ビッグ・ベビーとチャックルズは買い替えられていなかったのだ。(つまりロッツォは既に居場所を失ったが、 2人はまだデイジーの下に戻る選択肢が残っていた。)だが、ビッグ・ベビーが目撃していない事を利用したロッツォは自分の身勝手な独占欲と嫉妬心でビッグ・ベビーに対して「俺たちみんなの代わりだ」と説明し、ビッグ・ベビーをデイジーとの思い出から意図的に遠ざけていたのである。
「ママ………」
「何だと!?ママのところに戻りたいのか!?
愛されてもいないのに、赤ん坊みたいな事を言うな!」
真実を知らされ、更にチャックルズがウッディに託していたデイジーの名札入りペンダントをロッツォが壊したことでビッグ・ベビーが反乱を起こし、ロッツォをゴミ箱に放り込んでしまうが、他のロッツォ一味のメンバーも内心ではロッツォの独裁に嫌気が差していたため、誰一人ロッツォを助けようとしなかった。
そこに現れたゴミ収集車の回収作業に巻き込まれ、ウッディ達と共にゴミ処理場に連れられてしまう。そして処理場のベルトコンベア上でゴミに挟まれ粉砕機にかけられそうになった事で助けを求め、ウッディとバズの情けで助けられる。
その後、焼却炉に落ちそうになった際に停止ボタンを発見しウッディたちの助けで押しにハシゴを昇りきるも……
「アンディは助けに来るかな!?保安官!」
なんと焼却炉を目前とすると、助けるフリをして自分だけ逃亡し、ウッディ達を見殺しにした。
焼却炉の炎の前に覚悟を決めたウッディ達であったが、リトル・グリーンメンの活躍によって無事に助かり、ゴミ処理場の外へと戻る事が出来た。
彼らはロッツォの裏切りに憤慨し、ハムは「なぁ、ロッツォのやつを探そうぜ?」スリンキー・ドッグは「あぁ、あいつの縫い目ほどいてやる!」と悪態をつくも、ウッディからは「ほっときゃいいさ、仕返しする価値もない」と吐き捨てられ、当のロッツォは逃走の最中にゴミ収集車の運転手に気に入られて拾われ、ゴミ収集車のフロント部分に紐で全身をガッチリと拘束され、無様に飾りとして晒される(その時他の飾られているおもちゃから「おい相棒!口は閉じてた方がいいぜ!」とからかわれていた)という、ある意味処分よりも厳しい罰もとい因果応報な終わりを迎えることとなった。
子供の遊び相手ではなく、トラックの飾りとして拾得されたとはいえ、新たに持ち主と呼べる人物が現れた以上、「これから彼に改心して欲しい」という人も少なからず居るが。
ロッツォがいなくなったその後のサニーサイド保育園は、晴れて正式な恋人同士となったバービーとケンが新たなリーダーとなり、かつてロッツォ一味だったメンバーもビッグ・ベビーの反乱をきっかけに改心。
階級差は撤廃され、交代制でイモムシ組の相手をし、砂場で遊んだり、夜にダンスパーティーを行う等と皆が楽しく過ごせる住みよいサニーサイドに変えることに成功し、ウッディ達とも和解した。
余談
圧倒的不人気
哀しい過去があるとはいえサニーサイド保育園で独裁体制を敷きバズ達を迫害したゲスさ、ウッディ達を何度も窮地に追い詰め、最後の最後まで裏切る鬼畜の所業からディズニー・ヴィランズの中でもファンからぶっちぎりで嫌われている。トイ・ストーリーシリーズでも特に重くシリアスな話であるため、悪役の凶悪性が増すのは致し方無いのかもしれない。
しかし、一見すると可愛らしい見た目であるため、ビジュアルのみを評価している人や、作品を観た事がない人からはそこそこ人気があり、ディズニー側もそれを理解しているのか、彼を模したグッズは意外にも多い。尤も映画を視聴し、彼の本性を知っているファンはキャッチーなグッズを着けている様に強烈な違和感を覚えるというが…
哀しきヴィラン?
「1」に登場したシド(おもちゃの破壊や改造を楽しむワルガキ)やスカッド(おもちゃ達に容赦無く襲い掛かる獰猛な犬)、「2」のアル(プレミアものだったウッディを盗み、売りつけようとしたマニアのおっさん)やプロスペクター(アンディの元へ帰ろうと決心したウッディ達の意思を無視して無理矢理博物館へ連れて行こうとした金鉱夫のおじさんのおもちゃ)やザーグ(バズを倒す為、彼らの行手を阻んだロボットのおもちゃ(これは設定のキャラに沿った行動である))とは比べ物にならない程、凶悪でクズなヴィランだが、過去のトラウマに縛られ、力と支配でしか自分を正当化する事ができなかった哀れなオモチャであったと言えよう。ウッディ達を見捨てる際に吐き捨てた「アンディは助けに来るかな?」という台詞は自分たちはアンディに捨てられてないと信じるウッディ達への悪意と嘲笑を込めた皮肉であり、かつて持ち主の事で絶望を味わった経験を持つロッツォからすれば、ウッディ達のアンディへの信頼は下らない妄想でしかなかったのだろう。
ただし、幾ら辛い過去があろうと幼稚園で独裁政治を敷いていい理由には微塵もならない。仮にそれらの行動に何らかの目的があったのならまだ説得力もあったのだがそういった思惑すらなかった。そもそも人間を恨むならともかく、同じような境遇のオモチャ達、言わば自分の同胞とも言える者達を理不尽な独裁政治で苦しめるというのは、もはや八つ当たりも同然の蛮行に他ならない(実際、チャックルズからロッツォの過去を聞かされたウッディも同情ではなく自分の仲間を道連れにした行為に怒りを見せていた)。これならば上記の圧倒的な不人気も納得である。ただし、辛い過去のせいで心が歪んでしまってはまともな思考ができなくなってしまうのも無理はない。
ロッツォは意図的にビッグ・ベビーをデイジーから遠ざけることで味方に付けていたが、一緒に現場を見ていたチャックルズはビッグ・ベビーに真実を告げていない。
これには、ロッツォの気持ちも少しは理解できたので同情していた、それから直ぐに捨てられてボニーに拾われたので話す機会を持てなかった、あくまで見たのはロッツォの代わりのぬいぐるみのみだったので「自分とビッグ・ベビーの代わりもあったのかもしれない」と考えていた所をロッツォに付け込まれた、ロッツォから脅されており同時に自身も負い目を感じていたので話せなかった等、様々な説がある。
トリビア(?)
ラストシーンでロッツォがくくりつけられていたゴミ収集車であるが、フロントに書かれていた数字がまさかの334。
全くの偶然かつほぼ日本(それもごく一部)でしか通用しないネタとはいえ、ロッツォの末路と照らし合わせてみれば中々皮肉が効いたシーンと言える。
匂いについて
イチゴの匂いがする彼だが、置き去りにされてから随分時間がたっているにもかかわらず、今もイチゴの匂いがするあたり、買われたばかりの新品の頃は、かなり濃い匂いだったのではないだろうか?