CV:原田知世
「ガラスってね、ほんとはゆっくり動いてるのよ」
概要
『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』第40話に登場するガラス工芸作家。自称「魔女をやめた魔女」。
後に『おジャ魔女どれみ16/17』にて再登場する。
※これ以降、本項目は『ドッカ〜ン!』および『16』シリーズの盛大なネタバレを含みます。
どれみとの出会い(『ドッカ〜ン!』)
下校時、友人たちの都合で一人になってしまったどれみが、回り道をした際に偶然見つけた、ガラス工房のある民家の前で出会った女性。出会い頭にイキナリどれみが魔女見習いである事を正確に指摘して、どれみをビビらせた。
直後に自らも魔女である事を明かし、呪いの対象外である事を告げて、どれみを安心させるも同時に自分自身を「魔女をやめた魔女」であると告げる。
ガラス工房に興味を持ったどれみに、ガラス工芸の技術を教えると同時に、自らの身の上を少しずつ明かしていく。幾度となく短いサイクルで引っ越しを重ねている事。かつての知人たちに「自分の子孫」を演じながら出会っている事。それは全て自らが魔女である事に起因していた。
魔女である未来は人間と比べて長く生きる。自らの愛する人間たちと同じ時を生きる事が出来ないジレンマは、作内全体において語られる、先々代の女王様・マジョトゥルビヨンの哀しい実例を出すまでもなく、人間の中で生きていくには大きな障害となる。未来はそれを防ぐために、一所にはとどまらず、愛する人たちと適度に距離を置き、人間から見れば非常に永い時を歩み続けていたのである。
それらの体験を語り、どれみに人間から見た魔女の生をガラスに例え、その行く末を諭す。同時に、それでも魔女の道を選ぶなら、という前置きをした上で、どれみに自分と共に来る事を誘う。
しかし、どれみの答えを聞く前に、彼女は再び引っ越してどれみの前から姿を消した。どれみに残されたのは未来からもらったビー玉と、彼女と共に作ったガラスの器。一緒に撮った写真と、そこに書かれた「ごめんね。また、どこかで会いましょう」というメッセージだけだった。
しかし未来と過ごした日々と彼女の言葉は、どれみの心の中に大きな影響を与える事となる。
結論としては、本編におけるどれみの「最終選択」に最大級の影響を与えるキーキャラクターの一人。それゆえか、たった1話のみの登場でありながら、その存在は多くの視聴者に鮮烈な印象を残した。
※以下、最大のネタバレ
その正体と縁者(『16』)
実はハナちゃんよりも前の世代においてウィッチークイーンローズから生まれた魔女であり、他ならぬ魔女界の女王様(ゆき先生)の双子の妹である。魔女名はマジョアヴェニール。その名たる「アヴェニール」とはフランス語で「未来」を意味する。
『どれみ16』3巻「TURNING POINT」序盤にて魔女名のみ先行して登場し、同巻の終盤にて未来である事が確定する(もちろん、そのための伏線はきちんと張られている)。
そもそもウィッチークイーンローズから生まれる子は、常に別の花から同時に生まれる双子として生を受ける。かつてはローズから同時に生まれた子を姉妹として育て、優れた方を女王としていた魔女界だったが、実はこれが後に凄惨な骨肉の争いを生む事となった。ゆえに、その後から現在まで、ローズから生まれた双子はそれぞれの発見者が親となって育てると同時に、それぞれに引き離され、本人には姉妹の存在は隠す事となったのである。
が、ふとしたきっかけから魔女界の女王様は、女王となる直前にそれを知り、12歳の頃に元老院を説得して妹である未来と邂逅を果たす。その際に姉妹として定期的に出会うことを望んだ女王様に対して、未来は(上記の凄惨な歴史の事もあり、姉を守るためにもあえて)人間として生きる事を望み、以降「魔女をやめた魔女」として生きる事を選んで自ら魔女の力を封じた。
のちに女王様は、ゆき先生として人間界に降り立った際、何度も暇を見つけては、自らの妹を探した。また同時に女王として元老院の力まで借りて探索を続けていた。
しかし結局、魔女の力を封じてしまい見た目だけは人間と同じになってしまった妹を見つける事はできなかったという。
ただし、ゆき先生が美空市にいた時に、たった一度だけ気配を感じるも巡り合わせが悪く、すれ違ったとされる。(逆に未来の側も姉の存在に気付いたから慌てて引っ越したと、とることも出来る。)
どれみと別れた後、未来はフランスはパリのMAHO堂で一人の少女を引き取る事となる。パリのMAHO堂のオーナーにして少女の養い親であったマジョルブールが長寿の果てに痴呆症に近い状態になってしまったためだった。引き取った少女の名はユメちゃん。ウィッチークイーンローズから生まれた年若き魔女の子。他ならぬハナちゃんの妹だった。
未来はユメに対して、多少は魔法を使う事をさせはするものの、最終的には「普通の女の子」として接し、そのように育てていた。ウィッチークイーンローズから生まれた子どもの倣いに従い、その出自も隠していたのである。
が、それで収まらないのが妹の存在を知ったハナちゃんだった。彼女は魔女界と人間界を股にかけて騒動を引き起こし、結果としてどれみたちの介入の果てに未来の元へとたどり着く事になる。未来は悩んだ末に一つの条件を出す。
「ユメちゃんに会うのは5年ほど待ってもらいたい。ユメちゃんが12歳の誕生日を迎えた時に訪ねて来て」
12歳というのは前述の通り、未来と女王様が出会い、それぞれに道を決断した年齢であり、同時にどれみたちにとっては魔女見習いから正式な魔女となるかどうかの決断を迫られて一応の結論を出した齢である。重要な選択肢を自らで判断できる年齢を彼女はそこで区切ったのだ。
ユメの事を思っての、その判断にどれみたちは一応は納得し、これを受け入れる事となる。
関連イラスト
備考
テレビ版で佐倉未来が登場した『ドッカーン!』第40話は、明らかに従来のどれみシリーズと空気感が違い、リアリズムにこだわった映像演出が随所に詰め込まれており、1980年代の映画作品に影響を受けたかのような、本来の視聴者の年齢層よりも高い年齢層向けの表現が頻出している。
実はこのエピソードは、スタジオジブリで宮崎駿の次をやっていたかもしれない細田守が演出を担当している。細田は当時は『ハウルの動く城』の更迭騒動があって休眠していた時期であり、このエピソードはハウル更迭の鬱憤を晴らすかのようにある意味でやりたい放題やった話で、少なからず自分のことも描いていると言われる。何の予告もなく突然、TVアニメの一話分を細田が担当したことは、どれみのファン以上に当時から細田を知るコアなアニメファンからの話題になった。
声優に原田知世を使ったことからも、1983年に公開された映画『時をかける少女』の影響がアニメファンに考察されていた。実際、細田はのちに2006年版時をかける少女を手がけることとなるのだが、同作にはこの『ドッカーン!』第40話に似た場面・表現が多少なりとも登場する。そのため、この回は細田作品の(解りやすい形での)プロトタイプと見られることも多い。
それまでの話との空気感の違いに当時の幼女先輩も困惑したことは窺えるが、この話は4年をかけて描いてきたどれみシリーズの最終回に向けて、「魔女」というメルヘンな存在を現実に落とし込むために必要なものであり、空気感の違いは必然であった。
ちなみに『どれみ』側に細田が起用されたのは、おそらくは『デジモンアドベンチャー』がらみと思われる(両作とも担当プロデューサーが関弘美)。
関連タグ
表記揺れ
人物
春風どれみ ハナちゃん 魔女界の女王様(ゆき先生)ユメちゃん
作品
おジャ魔女どれみ(おジャ魔女どれみドッカ〜ン! おジャ魔女どれみ16)
その他
細田守(該当回の演出担当)