概要
冬季戦技教育隊(Cold Weather Combat Training Unit)とは、陸上自衛隊の教育隊のひとつ。寒冷地帯や豪雪地帯での戦闘の研究と訓練を担当している教育隊で、日本唯一の冬季戦専門部隊である。所属は北海道北部方面隊直轄の北部方面混成団。所在地は真駒内駐屯地。
通称「CWCT」、「冬季レンジャー」、「冬戦教(とうせんきょう)」。
……あるいは「頭戦狂(とうせんきょう)」。
解説
陸自でも伝統ある部隊の一つで、創設は1970年代まで遡る。長年に渡って冬季戦を研究し、装備や戦技の研究開発に注力してきた結果、現在では雪中戦において装備面でも運用面でもアメリカ陸軍をも凌ぐと言われる。ここで培われた研究は一般部隊にも活用されており、北方の部隊ではほぼ全隊員がスキーでの機動を可能としている。それこそ全土が寒冷地のフィンランド軍などを除けば、自衛隊の雪中戦能力の高さは最強格とまで言われるほど。
雪中戦とゲリラ戦に対応できる隊員の養成を目的とした冬季遊撃課程の指導も担当しており、この課程を修了した隊員には「冬季遊撃レンジャー」の資格が与えられる。その訓練は数あるレンジャー教育の中でも特に過酷で、北海道でも特に雪の多いニセコ山にて、真冬に零下30度&激しい豪雪というベテラン隊員が男泣きするほどの過酷な環境の中、3~7週間に渡って猛訓練に励むことになる。
この部隊が「頭戦狂」と呼ばれる所以はこのような部分に表れている。
経歴
その歴史は古く、1961年に特別戦技訓練隊として北部方面隊に設置され、1964年に北方特戦隊として、1971年に北部方面スキー訓練隊を統合して現在の冬戦教となった。2011年には現在のように北部方面混成団に隷属替えした。
かつてはバイアスロンやスキーを教育訓練する「特別体育課程教育室」が部隊内にあり、冬季オリンピックのバイアスロン競技などに日本代表選手を送り込んでいたが、2016年に教育室が自衛隊体育学校へと編合されたため、現在は冬季戦の研究や冬季レンジャー課程の指導のみを担当している。ただし現在でも、全日本スキー技術選手権大会に毎年参加している隊員がいるという。
特殊部隊?
かつて北海道はソ連軍と対峙する第一線だったことから、冬戦教は優秀な隊員を集めて編成された対ソ連のゲリラ部隊としての側面が強く、現在も有事に特殊部隊として活動すると言われている。このため陸自特殊部隊の特殊作戦群とも頻繁に訓練しているほか、原子力発電所など重要施設の警備訓練、潜水訓練、ゴムボートによる渡河訓練など、夏季戦技の訓練も頻繁に行っているとのこと。まさしく頭戦狂である。
余談
漫画家の小林源文によると、冬戦教は「極秘でベトナム戦争に隊員を派遣していた」らしい。これは実戦経験を得る目的での派遣で、他にも第1空挺団や富士教導団、さらに空自や海自からも計15名の隊員がベトナム戦争に派遣されていたという(空自はFACやCCT関連、海自はSEALs関連への研修とのこと)。
ただし、当然だがそのような記録は自衛隊も防衛庁・防衛省も公表していない。可能性としては十分あり得る話なのだが、仮に事実なら自衛隊の存続に関わるレベルの一大スキャンダルである。
しかしこのような話は小林氏だけでなく、小説家の佐藤大輔なども著作『黙示の島』にて同じく15名の自衛隊員がベトナム戦争に派遣された話をしており(ただしこちらは派遣者全員が冬戦教隊員としている)、どうも何かしら元になった話が存在する可能性はある。
また仮に話が事実でも、あくまで観戦武官として派遣されたか、南ベトナムに設立されたコマンドー訓練センターに隊員が参加したか、よくてもアメリカ軍のLRRP(長距離偵察作戦)に同行したくらいだそう。日本による本格的なベトナム戦争介入……とかでは一切無いらしい。
ちなみに冬戦教の所在する真駒内駐屯地には、駐屯地史料館に何故かAK-47が展示されている。これは「冬戦教の隊員がベトナムから持ち帰った戦利品」とも噂されているが、真相や如何に。
関連動画
北部方面隊公式動画