概要
内閣法第9条によれば、「内閣総理大臣に事故がある時、または欠けた時には、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が臨時にその職務を行う。」とある。これに基づいて万が一の時に内閣総理大臣臨時代理として首相職を代行する事となっている国務大臣の通称(法令で正式にそのような官職が存在している訳ではない)が副総理である。ただし、内閣官房長官が指定された場合に関してはこの通称は用いられない。
当初は実際に首相職の代行をさせる、という意味で副総理に指定されるのではなく、専ら首相に匹敵する大物政治家や連立政権を組む政党の党首が入閣した際に指定されるという、本来立場が平等なはずの国務大臣達の中で差別化を図るためのものとして利用される事が多かったという。また、正式に指定を行わず、その都度内閣総理大臣臨時代理を期間限定で立てるというパターンもあった(この際、組閣時に官報の出る正式な指定ではないながらも首相から口頭で指示を受けるという事もあり、そのような国務大臣は「副総理格」などと呼ばれる事も多い)。
しかし、2000年に当時の小渕恵三首相が脳梗塞で倒れて以降は状況が一変する。この時内閣総理大臣臨時代理となったのは青木幹雄内閣官房長官(当時)であったが、「(昏睡状態にあったと思われる)小渕首相から代理に指名された」との就任理由が疑問視され、その正当性が問題視され論争になったのである。
これを受け、後任首相となった森喜朗以降の内閣においては、正式に万が一の時の首相職代行者としての就任予定者を組閣時に5人指名する事が慣例となった。基本的には内閣官房長官が予定順位第一位となる事が多いが、鳩山由紀夫内閣での菅直人国家戦略担当大臣(のち財務大臣)や野田内閣での岡田克也行政改革担当大臣、および第二~四次安倍内閣や現在の菅義偉内閣での麻生太郎財務大臣などそれ以外の国務大臣が臨時代理予定順位第一位に指定される事があり、このような際に「副総理兼○○大臣」といった呼称が用いられている。
その他
現行の慣例では内閣組閣時に内閣総入り大臣臨時代理予定者が5人指名される事となっているが、仮に内閣総理大臣もろとも予定者5人が欠けるような事態が起きてしまった場合、残った閣僚の中から協議の上で臨時代理が選出される事になっている(明文化されてはいないが、2000年にそのような政府見解が出されている)。フィクションにおいては例の特撮映画で実際にこのような状況が起こった際、この手順に基づいて臨時代理が指名された事を示唆する描写がある。