はじめに
この記事の内容には、既に作成されていた「げんこつ電車」の記述を移記したものが含まれます。
概要
北総鉄道7000形は、かつて北総鉄道(北総開発鉄道)が保有していた通勤形電車。千葉ニュータウンを発展させるため1979年に登場し、6両編成3本が製造された。登場翌年の1980年には鉄道友の会からローレル賞を受賞した。
車両概説
下記に示す特徴的なデザインや機構は、当時の社長であった黒岩源男氏(元・京成電鉄顧問)のトップダウンで決められていったといわれている。本形式のローレル賞授賞式では、黒岩氏が満面の笑みを浮かべていた様子が写真に残されており、まさに氏の理想を具現化した電車であった。
車体
親会社・京成の3500形同様のセミステンレス製車体をもつ冷房車であるが、特徴的な「Σ」形の正面形状は、利用客らにかなりのインパクトを残し、「げんこつ電車」や「シグマカット」と呼ばれて親しまれた。後年の直通先である京浜急行の乗務員からは、「ガンダム」と呼ばれたといわれている。
しかし、車両製造メーカーにとっては溶接の工程が多くなってしまい製造が大変だったほか、その後のメンテナンスや清掃作業も大変だったという。なぜこのようなデザインになったかというと、雪やごみが付着しないようにするためと、下面の視界を広げる効果が期待されたからである。実際に直通先の新京成電鉄新京成線(2025年4月から京成松戸線)においては、踏切事故の防止に一役買っていたといわれている。
なお、前面貫通扉にはサボ受けが取り付けられているが、営業運転では使用されなかったらしく、試運転等の非営業時に用いられた模様。
車体の青色部はカラーフィルムを用いており、これは日本の鉄道車両においては初の採用例であった。
冷房装置が収まるキセは、開業した区間は堀割が多く上から眺められる機会が多いことから、一体のものとし美観の向上に努めた。
内装
着席定員を明確化した座席をはじめ、吊革を廃止して網棚前に線路方向の握り棒を設置するなど、新路線への投入を見越してか実験的な要素が多いのが特徴である。しかし、吊革がないのは不便であったらしく、のちに握り棒へ直接取り付けられている。
窓も冷房を搭載したことから、熱線吸収フィルムを貼った一枚窓とし、ロールカーテンも省略されている。この側窓は大半が固定窓であったという。
走行機器
台車はシュリーレン式のダイレクトマウント空気バネ台車のHS-101形(電動台車)およびHS-001形(付随台車)を使用した。
制御装置は界磁チョッパ制御、駆動装置はTDカルダン駆動を採用した。
登場時は4M2Tの6両編成を組成していたため、起動加速度は2.8km/h/sであった。
増結中間車7200形
1990年に8両編成化を行うにあたり、新造された電動車ユニットである。
これらは既存の車両と外観や一部の機器が大幅に異なっており、わかりやすいところでは側窓が一枚窓から二段窓へ変更されたのが目立つ。これはセミステンレス製車体に起因する腐食を減らしたり、コストカットを行ったりするための変更であることが考えられる。
車内においても吊革は最初から設置されており、実状を反映した変更もなされている。
また、補助電源もMGからSIVへ変更されており、駆動装置もWN駆動が採用されている。
運用
開業時
開業当初は制御付随車で電動車ユニット2組を挟む6両編成を組成していた。
当時の北総線は、さまざまな事情から西白井から先が開業しておらず、都心直通への暫定的な手段としてそこから連絡線を経由して新京成線松戸方面へ直通しており、本形式も北総線から新京成線への直通運用へ充てられていた。
2期線開業後
2期線開業後は、京急・京成・都営地下鉄との直通に備えて、1990年に全編成に中間電動車2両が増結され、京急の車両規定に合わせるために先頭車が電動化された。
その後2000年代後半になると老朽化が進んだため、京成からのリース車両(7300形ならびに本形式よりも古い7260形)と7500形に置き換えられた。
リース車両の運行開始に伴って、2006年に2編成が引退。残った1編成も7500形の運行開始により2007年に引退し、本形式は全廃となった。
余談
2022年現在、7001号車のみ西白井駅構内で静態保存されている(2021年まではブルーシートに覆われて非公開だった)。
本形式の後に製造された北総鉄道の車両(千葉ニュータウン鉄道保有の9000形および9100形を除く)は、すべて親会社である京成電鉄の車両と完全共通設計となったため、本形式は(現時点で)北総鉄道が作った最初で最後の完全自社設計の車両となっている
2005年に東宝系で公開された映画電車男の劇中では、要所要所に本形式が“出演”しており、もはや第三の主役とも呼んでも過言ではない。引退が近づいていた本形式への最後の花向けだったのであろうか。