奇獣重工業
きじゅうじゅうこうぎょう
特撮テレビ番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』放送終了後、大阪中之島美術館で開催された「タローマンまつり」にてデザイン画が公開された未登場奇獣。
デザインのモチーフとなったのは、岡本太郎が1949年に描いた絵画「重工業」。
メタリックな台形のボディに歯車型の車輪がついたロボット奇獣とも言うべき外観を持ち、尻尾はネギ、両腕は円錐を重ねたような形状をしている。また、胴体正面の開口部からは炎のようなものを吐き出している。
上記のデザイン画では微妙にデザインが異なり、右腕がネギ、左腕が円錐となっている。
1972年の『TAROMAN』本放送第18話「捨てる主義のすすめ」に登場。
墜落した宇宙カプセルの強大なエネルギーによってネギと工場という相反するもの同士から生まれる四次元対極エネルギーが暴走、CBGの研究者・五里博士すら巻き込んで融合・奇獣化した姿。
凄まじい対極エネルギーによってビルをも簡単に引っこ抜く程の超馬力を誇るらしい。
『TAROMAN』は1970年代に本放送された作品のうち、フィルムが現存する話のみを再放送したという体裁を取っているが、『TAROMAN』への登場が実際に検討されていた没デザインなのか、没デザインという体で「タローマンまつり」のために新たに生み出された奇獣なのかは不明だった。
後に特番『タローマンヒストリア』にて「登場話のフィルムは失われてしまったが、ビルを持ち上げタローマンと格闘するシーンを写したスチール写真が残されている」という設定が明かされ、樋口真嗣氏へのインタビュー内で彼が最も印象に残っているエピソードとして紹介された。
また、書籍『タローマンなんだこれは入門』では、『TAROMAN』のパイロット版「重工業T」を元にして、この奇獣が生まれたということが明かされた。
『タローマンなんだこれは入門』には解剖図や18話の絵物語も収録されており、本編未登場奇獣の中で優遇された立ち位置にある。
イベント『超凱旋!タローマン』開催に際して着ぐるみが制作され、初展示される。
その後、「2023年になって第18話のフィルムが発見された」という体で、特番『帰ってくれタローマン』にて新作エピソードとして放送された。
作中での動向
ある夜、対奇獣技術の研究・開発に励む五里博士の研究所に、巨大な宇宙エネルギーを持つ隕石(なぜか「カプセル」ではなくなっている)が落下した。
そして衝突の瞬間、工場の機械とネギ、五里博士の知性と凶暴性という対極する物体同士がぶつかり合い超融合を遂げたことで、巨大奇獣「重工業」と化してしまう。
鷲野ビルヂングのビルを次々と破壊しめちゃくちゃに暴れ回る重工業に対し、五里博士の安全を考慮してなかなか攻撃に踏み切れないCBG。
風来坊と高津博士が重工業の体内への侵入を試みる中、「タローマンと言い、なんでわしのビルばかり壊すんだ!」という鷲野社長の嘆きを聞きつけたか、元祖ビルを壊す巨人・タローマンも姿を現した。
ビルを軽々と持ち上げる重工業に、タローマンは「自分だったらもっとべらぼうに持ち上げられる」と対抗意識を燃やし始める。
むくむくとそんな気持ちが湧いてきたら、やらずにはいられない。
惹かれるものがあったら、計画性なんて考えないで、やりたいことをやったらいい──そう岡本太郎も言っていた。
制止を訴えるCBG隊長の叫びをまるっきり無視して近くの鷲野ビルヂングのビルを持ち上げ見せつけてきた力自慢をしたい巨人・タローマンと、そのままビルを凶器にした格闘戦を繰り広げた。
鷲野社長「わしのビルが~!」
部下「社長~!」
(5回くりかえし)
一方、風来坊と高津博士は重工業の中央コンピューター室に突入。
その中で、変わり果てた姿となった五里博士と対面する。
「初めて常識人間を捨てられた気分だ」と高揚しながら語りつつ、タローマンにも一緒に町を破壊しようと囁く五里博士。
……しかし、すでにタローマンの興味はたまたま近くの工事現場に停めてあった鉄球クレーン車に移っていた。
ワイヤーで繋がれた鉄球を見てアメリカンクラッカーを思い浮かべたタローマンは、五里博士の呼びかけを無視してクレーン車に近づいていく……。
五里博士「おい、タローマン!こっちを向くんだ、タローマン!」
しつこい五里博士にいら立ったタローマンは、持っていたビルを投げつけて重工業を転ばせてしまう。
高津博士「諦めるんだ!ビルのぶつけ合いに、タローマンは飽きてしまったのだよ」
五里博士「そんな無責任な……」
高津博士「途中で放り投げてしまってもいいんだよ。やろうと思ったことが大事なのだ!その瞬間に情熱をほとばしらせ、すべてを懸けていればそれでいいのだ……そう岡本太郎も言っていた。結局、君は、奇獣になっても常識人間を捨てられなかったようだな……」
自分がでたらめですらなかったことを思い知らされた五里博士は、なおもしつこく「もっと気軽なお遊びでもいいから続けよう」と食い下がったものの、その女々しい態度に加え、気軽なお遊びを許さないタローマンの怒りが爆発。
「芸術は爆発だ!」で倒され、五里博士もそのまま帰らぬ人となった。
高津博士「かわいそうな五里博士。しかし彼の研究していた対極主義エネルギーは、私が必ず完成させてみせる……」
その直後、五里博士が実験用に注文していたネギ50箱分が届き、CBGの面々によってすき焼きの材料として使われることになる。
笑いあう隊員たちを尻目に、タローマンはクラッカー遊びにすっかり夢中になっていた。
一方、タローマンと重工業によって過去最大の被害を被った鷲野社長は、都会のビル事業に代わる新ビジネスを始める決心をしたものの……。