宇宙船ビーグル号の冒険
うちゅうせんびーぐるごうのぼうけん
カナダ出身の小説家A・E・ヴァン・ヴォークト作の古典であるといわれる長編SF小説で、1950年に『The Voyage of the Space Beagle』という題名で書籍が発売された。
本作は800名の科学者と200名の乗組員、計1000名の乗った球形宇宙船ビーグル号が、宇宙の旅先で出会った危険な宇宙生命体による危機と、それを地球人の知恵と技術でいかに乗り越えるのかを描いた作品で、1939年に『アスタウンディング』誌に掲載された「Black Destroyer」を皮切りに、時を置いて発表された4作の中編を加筆修正して長編として発表したものである。
特に、今作発表前から文筆業を行っていたヴォークト初のSF作品である、現在においても様々な創作でオマージュされる宇宙生物クァールが登場する「Black Destroyer」は、ジョン・W・キャンベル編集長が非常に高く評価し、人気作家であったC・L・ムーアの作品を差し置いて表紙絵の題材とされたというエピソードがある。
日本においては名作SFの古典として何度も邦訳されたものが刊行されているが、児童書として翻案されたものは『宇宙怪獣ゾーン』(「M33 in Andromeda」は未収録)という書名である。
長編化にあたり、本作の時代に創設された新学問・総合科学の専門家である、総合科学者エリオット・グローブナーという主人公が設定された。
Black Destroyer(黒い破壊者)
このエピソードが新しいと評されたのは、見た目は大きなネコ科動物のようなクァール(Coeurl)視点の描写があることで、これまでのスペースオペラに登場するたんに凶暴なだけの怪物との戦いではなく、知的な存在どうしの頭能戦として描かれたことである。
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チャールズ・ダーウィン:著書『ビーグル号航海記』が題名の元ネタ。
シートン動物記:ヴォークトはシートンと同郷であるので、作中に動物視点の描写がある『動物記』の影響を受けたという説がある。
出渕裕:クァール・イクストルをモチーフにしたキャラデザインを行ったデザイナーの一人。
ダーティペア:作中オリジナルの宇宙生物を登場させようとしたが、クァールと同じになってしまったので引用であると巻末に明記した。
ファイナルファンタジーシリーズ:クァールをモンスターとして採用して一般化させてしまったゲーム。シリーズを重ねるごとに、触手も漆黒も関係無いただの豹になっていたり、ケアルという単語が別の意味で商標登録されていたりと、原作を知っていると色々カオス。