概要
野尻抱介のSF短編小説。あるいは、この小説が収録された短編集(単行本)の書籍タイトル。
短編「南極点のピアピア動画」にて第40回星雲賞日本短編部門を受賞。単行本同時収録の短編「歌う潜水艦とピアピア動画」にて第43回星雲賞日本短編部門を受賞。
結果論ではあるが、シリーズとして見た場合においては星雲賞(短編部門)を2回受賞したシリーズとなっている。
世界
- ボーカロイド「小隅レイ(こずみれい)」が存在。声は初音ミクに類似。
- 「ピアピア動画」というサイトが存在。
- 「ハミングマート(ハミマ)」というコンビニチェーンがある。
- 月に彗星が衝突し、細かい塵やガスが吹き上がって地球にまで到達した。このために月面探査計画をはじめとして様々な宇宙開発は中止・計画修正などを余儀なくされ、地球を回る人工衛星にも悪影響が出ている。
構成
4つの短編小説からなる。
南極点のピアピア動画
蓮見省一は大学院で日本の次期月探査に参加したが、彗星衝突で計画は無期延期に。愚痴をこぼし続けたために恋人の奈美にも去られてしまう。
だが衝突の際に吹き上がった塵やガスが地球の両極で双極ジェット現象を起こすと判明。これを利用すれば(ロケットよりは)簡単な機材で宇宙へ行ける。
省一が友人に相談すると「電車男の宇宙版・宇宙男になってピアピア動画上でプロジェクトを立ち上げろ」と提案される。
奈美はピアピア動画はよく閲覧していた。省一は友人と共にプロジェクトを始動し、ピアピア動画上で進行状況を報告。音信不通の彼女に「お前を宇宙に連れて行ってやる」とメッセージを送る。
コンビニエンスなピアピア動画
片田舎のコンビニ(ハミマ)で、バイト店員・上田美穂とピアピア技術部出身の起業家・桑野隆が出会う。
そのコンビニの真空殺虫器に、新種の蜘蛛が発見される。強い紫外線と真空に耐え、カーボンナノチューブのような強靭な糸を作る。
桑野はその蜘蛛の生態に興味を持ち、ピアピア技術部のプロジェクトで、小型の人工衛星を使って宇宙で繁殖させる実験を始める。だがそれは意外な結果をもたらした・・・
歌う潜水艦とピアピア動画
海洋研究者の中野は「海自の潜水艦で鯨の群れを追跡調査する」という計画を却下された。友人の後藤は「ソナーの替わりに小隅レイに歌わせる。そしてピアピア動画に投稿しろ」とアドバイス。
萌え文化に興味のない中野が半信半疑で従うと、あれよあれよと事がうまく運び、プロジェクトは実行にこぎ着けた。海自からは退役予定の潜水艦「かざしお」が貸与される。
だが鯨の群れの調査中、海底に異星文明の宇宙船が沈んでいるのを発見。
言葉などを教えてコミュニケーションを取ると、先方は「あーやきゅあ」と名乗り、地球文明の調査に来ているとのこと。
中から移動調査用の端末?として「あーやきゅあ移動体」が出現。その姿と声は後藤が与えた「小隅レイ」のデータを元にしていた!
星間文明とピアピア動画
かざしお艦長、中野、後藤はあーやきゅあ移動体・通称あーやから話を聞く。
- 彼女?の目的は地球文明の調査と報告。
- 星間文明の技術を教えることはしない。
- 地球人が各種の困難を自らの手でどう解決するのかを観察し報告する。
- 地球文明が一定の水準に達したら、星間文明から加盟を認められる。
- 宇宙船が墜落しているので、報告のためには衛星軌道上に大規模な施設を作らなくてはならない。
あーやは目的を達成する手段として「自己を大量に複製して人類の中に溶け込み交流する」事を望んだ。
だがあーやの存在を知った日本政府はあーやを危険な存在とみなして隔離しようとする。
中野と後藤は人類は星間文明と接触すべきと判断、かざしお艦長の努力であーやを連れて秘かに上陸。ピアピア動画の運営母体ピアンゴ社に協力を仰ぎ、あーやきゅあ移動体の複製に取りかかる。官憲に踏み込まれる前にあーやの人数が圧倒的に増えていればいいのだが、そのためにはどうするのか。
関連タグ
野尻抱介 SF あーやきゅあ VOCALOID 初音ミク ニコニコ動画 ファミリーマート ハジメテノオト
関連リンク
作者の二次創作についての考え方と、小説挿絵カラー原画、特に小隅レイ(あーやきゅあではない)全身画があるので参考にするべし。
関連イラスト