「境井殿の息子とあらば、お前は我が子も同然だ」
概要
『Ghost of Tsushima』に登場するメインキャラの一人。英語表記は「Lady Masako」。
対馬五大武家が一つ、優秀な女武者を多く輩出してきた安達家当主の妻。やつれた顔に乱れた白髪という貧相な姿だが、武家の名に相応しく対馬随一と称えられる実力を持つ女傑。幼い頃から男勝りな性格で、女にも好意を抱かれるほどだという。また気の強い人物でもあり、あの偏屈者の石川先生を舌戦で圧倒している。 「様はないな、石川」
元々安達家の者ではなかったが、若い頃に賊の襲撃に遭った時に太刀を持って一人で撃退したという武勇伝を持つ。安達晴信率いる武士が救援に駆けつけた時には既に賊を全て倒しており、彼女の腕前に惚れ込んだ晴信に招かれてその後は安達家に嫁いだ。
一方で言葉で争いを収めるほどに穏やかな人物で、主人公である境井仁の母とは親交があったという。
しかし蒙古襲来緒戦の小茂田の戦いに出撃した夫の安達晴信と息子の繁里・繁成に代わって屋形の留守を預かっていた際に屋形が何者かの襲撃を受ける。
彼女は一族とともに応戦するも、奮戦虚しく息子の嫁、そして折り悪く屋形を訪れていた実姉の花、果ては彼女に託したまだ生まれたばかりの赤子である孫までもが鏖殺されてしまう(いわゆる族滅)。
ただ一人生き残り、さらには夫と息子二人までも蒙古に惨殺された彼女はかつての優しさも忘れ復讐鬼と化した。
彼女のストーリーは助力を請いに来た境井仁と遭遇し、単身で無謀な仇討ちを試みているのを危ぶんだ彼に行動を共にされることではじまる。
自身も血眼で族滅の犯人を追っているからか、蒙古をいち早く駆逐する為に冥人として非道な戦法を以て戦う仁については概ね肯定的な評価をしている。とはいえ流石に武士らしくない戦いは嫌っているのか、闇討ちの際はわざわざ弓矢を用いている。
得物は刀。戦闘ではとにかく敵へ正面突撃を仕掛けるという伯父上もびっくりの脳筋な戦法を行う。背中に弓矢を背負っているがほとんど使わない(作中でも三回のみ、ただしトレーラーでは弓をメインに使っていた)。
その実力は武家の名に相応しく、NPC故に操作はできないもののとにかく強い。放っておいても敵をバッサバッサ斬り伏せていく。ただし基本的に突撃のみなので、敵に見付かって乱戦になる事は必至。
当然放っておいたら囲まれて滅多打ちにされる事は必然なので、その時は支援しておこう。
Berserker of Tsushima
「我が一族の仇!ヴワ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!」
上記の通り一族全員を滅ぼされ、また幼い孫や実の姉さえも一人残らず惨殺されるという憂き目に遭った彼女。最終的な結末を含めれば、ただでさえ重いストーリーな本作ですら一二を争う一切情け容赦のない非常に重い運命をたどる事になる。
……はずなのだが、各種の言動があまりにも苛烈すぎてシリアスな笑いを連発する迷シーン製造機と化している。誰が呼んだかついたあだ名は「対馬のバーサーカー」。
確認できているだけでも
- 捕らえた相手の話を最後まで聞かずにその場で斬り捨てる
- 猿叫を上げながらとにかく突撃
- 金田城の潜入任務で大手門からの正面突破を提案
- 上ノ岳砦の挟撃作戦で後方部隊による正門解放を待たず突撃
- 犯人との接点が少しでもあると疑ったら証拠が無くてもすぐに殺しにかかる
- 情報を知る者がいれば百姓に対しても刀をチラつかせて脅す
- 蒙古兵十数人相手に一人で戦う
- 隠密行動中でも構わず激怒する 「はらわたを引き抜いてやる」
- シリアスなシーンで笑えない復讐鬼ジョーク 「無論、嘘だ」
- 死ぬか殺されるかの選択肢しか与えない 「答えれば楽に殺してやっても良いぞ」
- 熊を一撃で葬る(参考動画)
……などといった暴走ぶりでプレイヤーに強烈な印象を残している。
その有様は普段モーコスレイヤーやってる仁が抑えに回り、その高圧な態度を恐る恐る指摘するどころか、浜で政子が蒙古相手に暴れているという知らせを聞いた仁が蒙古の身を心配するほど。お前のようなババアがいるか。というかいてたまるか。
なお、この蒙古を心配する仁は本作屈指の笑いどころだが、クエストの噂を聞くことでしか見られないため、噂を聞かずに現場の「最澄の峰」周辺に行くとスキップしてそのままクエストが始まってしまうので注意しよう。
挙句の果てにはとある人物を仇の一人と勘違いして不意討ちを仕掛けて矢傷を負わせた(しかも数cm狙いがズレていれば即死)挙句、制止に入った仁を敵と見なして一対一の決闘にまで発展。
敗北すると 「かような最期は無念だろう」「私の邪魔立てをするからだ」「坊主を渡せばよかったものを」「冥土で泣いて悔やむが良い」 などと言って遠慮なくトドメを刺してくる。
しかも勝っても頭が冷えただけで全く悪びれず「お主こそ坊主を庇いおって!」と逆上し、いざ尋問となっても「舌さえあれば話はできるぞ」と吐き捨てる始末。仁がいなかったらどうなっていたことか…
上記の通り仁は彼女を抑える役に回りがちで、彼女は一応は仁の制止を聞いてくれるのだが、上記のようにストッパーにならない時もある。特に族滅事件の関係者を見るや否や理性が吹き飛んでいきなり斬りかかる。更に彼女をまともに止められるのは仁しかおらず、石川先生やゆなですらも彼女を止める事はできない。
実際、要塞の北から忍び込んで闇討ちで敵の数を減らしてから南の政子達と合流する予定だった作戦が、途中から政子の一存で派手に爆発を起こして乱戦に持ち込むという脳筋策になってしまっている。
復讐だけでなく剣術の稽古にも厳しい姿勢であり、志村城奪還の前に武士勢に加勢した鑓川の百姓に訓練も施しているがそのやり方もかなりスパルタだったらしく、仁は「百姓達を苦しめてはおりませんか?」と冗談交じりに心配している。一方の政子は是非も述べず 「流石鑓川、この者らは見た目よりもずっと頑丈だ」と事実上認めてしまっている。
しかしながらこれほどの暴れっぷりは突然家族を皆殺しにされて彼らの遺体を何日もかけて一人で埋葬し、拠り所を失い復讐にしか自分の生きる道を見出せなくなった結果による物であり、その悲劇的な境遇や情け容赦の無い陰惨なストーリー展開に同情するプレイヤーも少なくない。
ストーリー中でも息子二人や夫、郎党達の死を嘆いたり、幼い孫との思い出を語ったり、戦死した若者達を看取ったりなど母親らしい一面も時折見せており、彼女の復讐心は深い家族愛による物であるとも言える。
余談
- 名前の由来はこのサイトでは開発陣は「北条政子のように一般でも親しみのある為政子を選んだ」としているが、当時「~子」という名前は朝廷から身分を与えられた者にしか使われない為、日本語版では「父親が姫のようにお淑やかになれるよう、貴族の女性にあやかって名付けた」という設定となっている。
- このサイトによると、開発陣は「今作の登場人物は仁の内面にある思いが極端に現れた人達」と語っている(この事に従えば、志村は武士としての仁、ゆなは冥人としての仁、たかは臆病だった幼少期の仁、石川は師(志村)と弟子(仁)の対立、竜三は武士と冥人との葛藤、典雄は対馬を守る者としての仁、そして政子は仁の蒙古に対する憎しみをそれぞれ象徴している事になる)。もしかしたら、一歩道を踏み外せば仁も政子のようなバーサーカー…もとい復讐鬼となっていたのかもしれない。
- 日本語吹き替えを担当した安藤麻吹氏は政子が巷ではバーサーカーと呼ばれている事を承知しており、 「政子殿のおかげでバーサーカーという言葉を初めて知った」 とTwitterに投稿している。
関連イラスト
関連タグ
Ghost_of_Tsushima 武士 バーサーカー 悲劇のヒロイン
関連人物
- 安達晴信
政子の夫。政子とはおしどり夫婦のような関係であり、賊を一人で撃退した政子の腕に惚れ込んで結婚した。しかし、序盤の小茂田の戦いで戦死してしまう。
- 繁里・繁成
政子の二人息子。両方とも家族がおり、彼らの妻も優れた女武者である。しかし二人とも小茂田の戦いにおいて戦死し、その亡骸も蒙古軍の手により木に吊るされ見せしめにされてしまう。二人の妻も同日に刺客の襲撃に遭い政子と共に応戦するも死亡する。
- 花
菊池家郎党の池田家に嫁いだ政子の実姉。安達家族滅に居合わせ殺害されてしまう。
- 純信(Junshin)
メインストーリーでチュートリアルも務める黄金寺の住職。
政子の物語では渋々ながら族滅関係者の情報を提供する。
族滅関係者(ネタバレ注意)
以下はネタバレを含んでいるため、閲覧は自己責任でお願いします。
- 曽元(Sogen)
黄金寺の僧。しかし彼は秋の始め頃(仁によると蒙古の噂が流れ始めた頃で、本編ストーリーの直前の時期)に上県から突然屋形を訪ねて来たと言われ、政子は彼を「偵察の為に黄金寺に潜入した」と睨んでいた。
仁が安達家族滅の顛末と政子が辛うじて生き残った事を伝えると「政子様が生きていらっしゃるのなら、喜んで寺に匿いましょう」と答えるが、政子が生きていると知った時の挙動不審な態度から正体を見抜かれてしまう。逃亡を図るも政子と仁に捕らえられ尋問されるが、その時の返答で政子の逆鱗に触れその場で斬殺された。
しかし後に彼が逃げ込んだ宿で見つかった契状とそれに記されていた家紋により、この事件は単なる賊の襲撃ではなく用意周到に計画された組織的犯行である事、そして何者かが安達家の乗っ取りを謀っている事が判明した。
「この世は地獄よ。強き者が正さねばならん。邪魔立てするなら殺すまで」
「童さえもか!」
- 貞夫(Sadao)
安達家の領地である久田の村の村長。知恵が回るため晴信により直々に村長に指名されたが、久田が飢饉に見舞われた際に自ら賊を雇って村を襲わせ、村人から奪った米を売り捌く自作自演を働くなど悪辣な人物であり、その悪評は賊の間にも広まっている。安達家から盗んだ米を転売していた事を政子に咎められ追放されるが、その事を根に持っており、黒幕と共に安達家族滅に加担する。
頭の回転自体は、頭に血が上った状態の政子に評価される程度には良かった模様。
「屋形で死ねばよかったものを!」
「ああ、死にたかったさ!」
- 八郎
貞夫の弟で、協力者間の情報伝達や物資輸送を担っている。兄想いだが頭が悪く、政子は無論部下からも「無能」と陰口を叩かれる。屋形へ連れて行かれたひなの救出に向かうも口封じとして殺害し、自身も逃げる途中で蒙古に襲われ、その時に負った傷が原因で死亡した。
「悪いが兄さんを裏切るつもりはない…」
「死んではならぬ!あやつの居所を吐け!」
- ひな(Hina)
貞夫の妻。安達家族滅について貞夫は濡れ衣であり、犯人は蒙古であると主張する。詳しい事情を聞く為に屋形へと連行されるが、八郎により口封じとして殺されてしまう。
族滅には直接関係していなかった身である為か政子が唯一情けをかけた人物でもあり、死後はせめてもの情けとして政子の手により哀悼こそはされなかったが手厚く葬られた。
「ひなを埋めてやる…せめてもの情けだ」
- 大村(Omura)
本編の20年前に安達家を追放された元下男…の、同名の息子。
盗みがバレて父が屋形を追放されたことを逆恨みし、父の仇討ち及び島から脱出する為の資金を稼ぐ為に、安達家族滅の犯人に大金と引き換えに武器を流していた。
なお、この大村も父親同様の盗人。つまりはなんだかんだ言ってお国のために戦う蒙古兵にも劣る生まれながらのクズであり、卯麦谷の住人にすら嫌われている。
一応フォローしておくなら、弟の吉平に本土へ脱出するよう促したり、荒れていた卯麦谷の道を整備しようとしたりなど、僅かながらも良心を持っている(もっとも後者は自分が歩きづらいからという利己的な理由だし、これだけで根は良いとは言えないが)。
報酬を受け取りに卯麦の浜辺へ向かった所、自身に協力してくれた筈の賊に騙され斬殺された。
「おのれ!わたしの獲物を!」
- 吉平
大村の弟。妻子持ち。父親の所業に天罰が下ったと指摘するなど割と良識的な人物。しかしそれ故に兄からは「あいつは安達の所業を何も知らない」と愚痴られている。
最終的に族滅の惨状を知り、計画に加担したことを後悔するも兄共々賊に襲われ死亡した。
- 梶原(Kajiwara)
犯人の一人で安達家の元下男。表向きは「優しい男」だが、裏で妻子へのDVを行っており、その発覚によりかつて安達家を追放された。
その暴力の程は、現代のそれでよくあるように妻子が梶原に完全に依存してしまうほどで、せっかく匿われても翌日には梶原の元へ戻ってしまっている。
安達家への恨みを根に持ったまま青海寺近くの浜小屋で漁師として生計を立てていたところ、黒幕に誘われて族滅に加担する。表向きの善人ぶりは相変わらずだったらしく、真相を聞いた純信が「一介の心優しき漁師の筈だ」と驚愕していた。
本編では蒙古の襲撃を受けた末に、家族を自らの手で殺して一人で逃げ隠れていた。政子らに発見され問い詰められるが、恨み節を吐いている途中で政子に遮られ斬殺された。
…が、同様の末路をたどった某人物と異なり仁が一切同情しなかったのは、家族愛のドラマに強く感情移入するキリスト教圏制作の作品故だろうか。
「あのお方は分かって下さったのだ…あんたのせいで身を滅ぼし、家族を食わす銭もなくなり、路頭に迷わざるを得なかった事を…!」
「聞くに堪えん」
- 舞(Mai)
安達家の元侍女。
政子が男勝りな性格であるせいか、親しいを通り越して深く想い合っていた仲で宝飾された絆の証の櫛まで送られている。
どうした?塔は立てないのか?…うん、ごめんなさい。
そんなわけで本編の3年前に盗みの現場を抑えられても、激怒し死罪を命じようとした晴信を政子が説得して解雇に留めたほど。しかも政子はさらに穏便な処分にしたかったフシすらある。
だがその際、政子の努力を知りつつも彼女が結局自分より安達一族を選んだことに思うところがあったようで、事情を知りつくす黒幕に文で唆されて襲撃後の屋形から貴重品や安達家の家宝である笛を盗みだしてしまった。
しかし、犯行はあくまで族滅のあとで間接的にも殺しには関わっていなかったためだろうか、政子の生存を知った後は一族の家宝を返却すべく、絆の櫛を売り払ってでも守り通そうとすとしていたことが判明。政子と和解し、何処かへと去っていった。
舞は黒幕の名も顔も知らなかったが、これにより「金銭的な価値はないはずの家宝にひどく執着する」黒幕の人物像に関する大きな手がかりを得ることになる。
黒幕(重大ネタバレ)
繰り返しになりますが、以下は結末に関わる重大なネタバレの為、閲覧は自己責任でお願いします。到達前であればブラウザバックを推奨します。 |
---|
純信が族滅の黒幕に接触されたことを知り、完全に我を忘れた政子は彼を襲撃する。仁が力ずくで政子を止めたことで純信が黒幕の誘いを拒絶していたことがわかり、これが決定打となりついに黒幕の正体が判明する。
しかし、純信の口から出たのは族滅に巻き込まれたはずの実姉、花の名であった。花だと思っていた遺体は蒙古に殺害された百姓の女性を偽装したものであり、本物は上県に戻って菊池家の屋形を乗っ取って自らの根城としていた。
そう、花こそが安達家族滅を謀った張本人であったのだ。
若い頃、安達晴信に恋心を抱いていたが、当の晴信は賊に襲われた時に一人で賊を撃退した政子に一目惚れしてしまった。政子は結果的に姉の想い人を奪ったことに罪悪感を持ち、代わりに優しい事で評判だった池田氏を紹介したのである。
しかし、政子の武勇を知る池田は彼女の前では猫をかぶっていただけであり、その本性は酷い飲んだくれのDV男で、しかも嫁いだ花を 「子供を産まない役立たず」「冬の暖房代わりにしか抱けない」「酔ってないと抱けない」「抱けるかどうかも怪しい」 と罵倒するまごうことなき最底辺の屑だった。花が政子に恨みを抱いたのはこうした嫁ぎ先の環境もあったのかもしれない。
花は政子に対し、晴信を奪い自分を差し置いて幸せな家庭生活を送っていた事への嫉妬と、自分を騙して寒い北の地へ追いやり屑の元に嫁がせた事への恨みの念を抱いており、安達家族滅はその鬱憤が爆発した結果とも言える(政子にとっては完全な逆恨みでしかなかったが…)。
最終的には居場所を突き止めた政子に踏み込まれ、政子に呪詛の言葉を吐きかけた後に自決した。
「よくも息子の嫁を、幼い孫を、一族を殺してくれたな」
「お前の所業に比べれば安い物よ」
「私が何をした!」
「奪ったではないか! 屋形から追い出し、心を寄せる男を攫い、飲んだくれを押し付け身も凍る地へ送ったのはお前だ! 永劫に続くこの苦しみを受けてもなおこの生き地獄はお前には分かるまい。お前が押し付けた地獄だぞ!」
「いずれも私の咎ではない!」
「何を言う! 知らぬふりをしておった癖に! 殺しに来たのだろう。斬れたければ斬れ! 苦しみが終わるのならば本望だ!」
「…始末をつけるのは私ではない。おのれ自身だ」
「お前も地獄を味わえ!」
事件の後、火葬される花の亡骸を呆然と眺めながら、政子はこれまでの復讐劇やもう元に戻らない生活、そして復讐と孤独の果てに自らが行き着く先を嘆いてストーリーは終了する。
「皆を悼む代わりに、笑い合って過ごした日々を心に浮かべようと努めたが、見えるのは姉の顔…それだけだ。これが生き地獄なのか」