概要
てんとう虫コミックス3巻及び、藤子・F・不二雄大全集2巻に収録「ママを取りかえっこ」に登場。
あらかじめ親と子の個人写真をそれぞれ1枚ずつ、かつ必要なペアの数だけ用意し、それを本来親子関係でない組み合わせになるよう親と子で別々に混ぜ、それをペアの数だけ分けてケースに入れると親子関係が改変され、写真の親は本来別人となるはずの子供を難なく接するようになる(いわゆる親に記憶操作を掛けている状態)。取り消す場合はケースの中の写真を取り出せば良い。
ただし、本来の子供の性別が違うとそれによって不都合が出てしまい、男の子がいるのに女の子用の物しか置いていない、あるいはその逆の事態が起こってしまう。
ちなみにアニメ化の際のカラーリングは、1979年版が赤い屋根に黄色い壁、1992年版と2018年版が赤い屋根にベージュの壁、2006年版は赤、青、黄の三色の屋根にベージュの壁となっている。
不明点
作中では3個セットで使用したが、もし1個だけ使用した場合の効力は不明。1個では効果がないのか、それともカッコータマゴややどり木等のように(本来の子の立場を問わず)別の家に上がり込めるかどうか…。
また、子供達は(スネ夫は生き別れた弟がいるが)いずれも一人っ子で父親も登場していないため、写真を入れられた親だけにあらず他の家族の人や、更には家族構成を知る他の人まで記憶が改竄されるかどうかも不明。
ストーリー
のび太は玉子に「そんな悪い子はうちの子じゃありません。どこへでも行きなさい」と怒鳴られ、ドラえもんに「あんなの本気じゃない」と慰められるもショックが収まらなかった。これにはドラえもんものび太に同乗し、そこにやって来たしずかとスネ夫も偶然同じく母親に叱られ、涙を流していた。
空地に集まったのび太、しずか、スネ夫はそれぞれ母親にたいする不満を爆発させるが、ドラえもんは3人に「そう深刻にならないで」と落ち着かせ、しばらく母親を取りかえっこすることを提案して「家族合わせケース」を取り出した。そして3人とそれぞれの母親の写真を用意してよくきった後、のび太としずかのママ、しずかとスネ夫のママ、スネ夫とのび太のママの3つの組を作ってこのケースに入れ、皆に新しい母親のところに行くよう言った。
のび太はこのことをまだ信じきれずにいたが、宿題のノートを家に取り帰ると、玉子に「のび太さん、いらっしゃい」「スネ夫は留守ですけどなにかご用?」と言われ、本当に入れ替わっていた。そしてドラえもんに押されてしずかの家に連れて行かれるが、恥ずかしくて入ることができず、彼女の母親に出迎えられてようやく入って行った。
だがすぐに緊張して体が硬くなってしまい、ドラえもんに「早く慣れなきゃ」と言われていると、そこにしずかの母親がピアノのレッスンのことで怒鳴った件を謝りにきたので、のび太は「いいんですよ。僕じゃないから」と返し、「いいママじゃないか。しずちゃん贅沢だぞ」と心の中で思った。一方でスネ夫もおやつをもらったり、しずかもお小遣いをもらったりして同じことを思っていた。
その後のび太は遊ぼうと思ったが、部屋には女の子用の人形しかなかったため、掃除がけを手伝うことにし、褒められると雑巾がけも始めたが、バケツを倒してびしょ濡れになってしまった。しかし着替えようとしたら、下着が女子用のものになっていて、タンスの中にも同様のものしかなかったため、2人は慌てて逃げ出した。
帰り道で再会した一同はそれぞれの家出あったことを報告しあい、結局親だって人間であり、時には誤解で怒ったり八つ当たりすることもあると思い、最終的には親は神様ではないという考えに行きつく。これにより取り換えっこは止め、元に戻したが、のび太が言えに帰るとそこにはしずかのママがいた。これに対して戻ってないと慌てるのび太だったが、実はのび太はしずかの家に自分のパンツを忘れてきていたため、届けに来てくれていただけだった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版と水田版で各2回ずつ放送されており、放送日は前者が1979年4月19日及び1992年5月1日、後者が2006年6月16日及び2018年5月11日である。
1979年版
- 思いやりがないと言ったのもスネ夫のセリフになっている。またこの後ののび太のセリフはカットされ、スネ夫は母親のことを鬼ママと呼んでいた。
- のび太が自分ちに宿題のノートを取りに帰る下りや、しずかの部屋で硬くなるシーンはカットされ、しずかの母親が謝って来た際のドラえもんのセリフもカットされている。
- 一同は道で出会うことなく空地に集まっていて、この時言ったセリフは、のび太が「あんな優しいママを鬼ママなんてひどいよ」、しずかが「スネ夫君のおばさんだってとっても優しかったわよ」、スネ夫が「のび太こそ反省すべきだ」になっている。
- 3人が反省した際にはそれぞれの母親の写真が笑顔になっていく演出がなされた。
- 本編終了後のショートアニメは、縦に4つ積まれた家族合わせケースが崩れ、ドラえもんが慌てるというものだった。
1992年版
- サブタイトルが「家族合わせケース」に変更
- 冒頭玉子は電卓をたたきながら家計簿に頭を悩ませていて、そこにのび太が20点のテストを自信満々で持ってきてので、余計に頭が痛くなりのび太に怒鳴った。ただこれは前に玉子が「0点以外の答案が見たい」と言っていたためで、のび太もそれのためを思ってのことだった。またドラえもんも「のび太君はのび太君なりに一生懸命やったんだもんね」や「嫌なことは早く忘れたほうがいい。気晴らしに思いっきり遊ぼう」と言って慰めている。
- 3人は誰の母親が一番ひどいかで激しく言い合いになって、ドラえもんは「自分のママのひどさを比較したってしょうがないでしょ!」と言って止めに入っている。
- ケースに入れた写真はドラえもんが実際に取りに行っていて、この時のび太、しずか、スネ夫の母親はそれぞれ、布団叩き、買い物、テニスの練習をしていた。そしてのび太達の写真も同様だったが、この時一同はピースをするなど何気にノリノリだった。
- スネ夫が帰って来た時、玉子は洗濯物を干していて、しずかのママは謝りに来た時、おやつも持ってきていた。そしてスネ夫のママは息子が無駄遣いしていると思って叱ったらしく、しずかにお小遣いを渡した際はファミコンでも買うと言いと言って謝っていて、玉子もスネ夫がおやつのドーナツを食べている時に先ほどの件を謝っている。ちなみにのび太の点数にはのび太も驚いていて、この一連の下りには『少年期』がBGMとして使われていた。
- 反省した後スネ夫はのび太が0点続きだったことも伝えてたため、「しずかちゃんの前でそんなこと言わないで」とのび太に口をふさがれた。
- ドラえもんとのび太が帰って来た時、しずかのママは帰っていくところだった。
2006年版
- サブタイトルには「優しいママは誰のママ?」という文章が追加されている。
- 冒頭ドラえもんは部屋で昼寝をしていたが、玉子の怒鳴り声がしたので飛び起き、頭にとまっていたモンシロチョウも逃げて行った。そして玉子はのび太に手伝いをするよう叱ったが、のび太が皆と野球の約束をしていたため、一旦呆れ果てた後怒りが爆発した。
- 皆が空地に集合した時、ジャイアンも母ちゃんに怒られ逃げていた。
- のび太が「お邪魔します」と言った際、しずかのママは一瞬耳を疑ったが、すぐにのび太が誤魔化した。また、しずかの部屋に入った時寝ころんでいたのは彼女のベットで、のび太は最初中々寝れなかったが、その理由が彼女の甘いにおいのせいだと分かると、途端に枕を抱きしめはしゃぎ始めた。ちなみに1979年版と同じく、しずかのママが謝りに来た際のドラえもんのセリフはカットされている。
- しずかも最初はスネ夫の部屋に慣れず違和感を感じていたが、テレビゲームを見つけると夢中で遊んでいて、この時スネ夫のママが謝りに来た。このことでしずかは最初怒られるかと思っていて、すぐ宿題に戻ろうとしたが、そこでお小遣いをもらい謝られもした。
- ドラえもんとのび太は部屋にあった人形を使って怪獣ごっこをしていたが、女の子用の物であったために迫力が出ず、退屈していたためドラえもんが手伝いをしてみることを提案した。また、のび太がバケツをこぼしたのは床を磨き上げてからだった。
- スネ夫のセリフのうち「公平に見て」の部分はカットされ、この後のび太としずかもそれぞれの母親が優しかったことを伝えている。また、誤解で怒ったり八つ当たりすることもあるのセリフは全てしずかが言っている。
- 皆が反省し元に戻すことを決めた際、ジャイアンが自分を誘わなかったのか悔し泣きしながら現れ、すぐにやって来た母ちゃんにボコボコにされ連行されていった。これを見た一同は最初悩んだものの、やっぱり自分のママが一番と元に戻すことを決め帰って行った。
- ラストでは、ドラえもんがのび太のズボンを下ろしてパンツを確認すると、熊がバックにプリントされていたため、顔を赤らめている。
2018年版
- しずかとスネ夫はのび太の家の前に通りかかっている。
- 不満を言った際のセリフは、しずかが「私の言い分を全然きいてくれなくて」に、スネ夫が「今やろうかなと思ったところでとやかく言ってくるんだ」になっている。ちなみにドラえもんが止めた際、一同はドラえもんを睨みつけている。また今回も2006年版と同じくジャイアンがやって来ていて、土管の中に隠れたものの、すぐに母ちゃんに見つかって連行された。
- のび太が「お邪魔します」と言った際、誤魔化したのはドラえもんだった。
- スネ夫が食べていたおやつは1992年版とおなじくドーナツだった。
- 2006年版と同じく、のび太はしずかのベットに寝ている。また、バケツをこぼしたのは、前方を見なかったためにドラえもんとぶつかったからだった。
- 反省した際一同は夕焼け空にそれぞれの母親の顔を思い浮かべ、涙を流している。そしてそこに母ちゃんと一緒に買って来たものを運ぶジャイアンが通り掛かり、ジャイアンは夕食がカレーだと聞くと途端にやる気を出し母ちゃんを急がせた。