概要
2018年5月6日、日本大学(以下、日大)アメフト部が関西学院大学(以下、関学大)アメフト部との定期戦にて、日大選手が、関学大側のボールを持っていない選手に背後からタックルするという悪質行為を働いた。さらに同じ選手によるタックルはエスカレートし、その後2回も行われ、最初にぶつかられた選手は腰に3週間の怪我を負った。
橋下徹氏もTwitterで怒りのコメントを表明、多くのスポーツ界著名人やファンが激怒して炎上騒動となった。
当然関学大側は激怒して記者会見を開き、日大側に謝罪を要求。
負傷した被害学生も父親であるおおさか維新の会の市議が会見を開き、刑事告訴も辞さない構えを見せた。
5月22日に悪質行為を行った日大の選手は独自に弁護士を伴って会見を開き、実名と顔を自ら公表した上で謝罪を行い、経過説明をした。それによるとコーチから「(監督に)QBをつぶしに行くんで僕を使ってください』と言いにいけ」と指示があり、事実上監督から相手QBを潰せという指令があったことを認めた。
これに対して、関学大の監督は「勇気を出して真実を語ってくれたことに敬意を表したい。立派な態度だった」と話し、選手に対して「かわいそう」とコメントした。
日大側はそれに対して監督やコーチも言葉のいきちがいがあったとして指令したことを否定し続けており、記者会見でもその立場を繰り返した。
負傷した関学大選手の父は24日、この記者会見を受け、自身のフェイスブックに「前監督は一切の関与を否定。これでは(タックルした)選手がかわいそうでなりません。ひどすぎます」と投稿した。
これによりパワハラとして批判が殺到しており、日大と似たような名前の日本体育大学(日体大)に抗議文がくるという二次被害が起きている。
30日、関東学生連盟は監督とコーチを事実上の学生スポーツからの永久追放である除名処分とした。
尚、日大の当該選手は事件の責任をとってアメフトを引退すると表明していたが、先述の会見後は仲間からの励ましもあり、後に復帰している。
余談
実は1980年代ぐらいまでサッカーやアメフトなどの接触系スポーツにおいて、思いっきり当たることを『潰す』『壊す』と表現をする事はそれほど珍しいことではなかった。
(参考記事→日大アメフト問題に見る結果主義の歪み。30年前ならメッシは存在しなかった?(外部リンク))
しかし反則した選手は、この『潰す』の意味を真に受けてしまい、3度目の悪質なタックルで相手のQBに大怪我をさせてしまった。
監督と選手の間にジェネレーションギャップ、さらには審判の怠慢(後述)による危険な行為のエスカレートもあってこのような反則につながったとも考えられるが、そのジェネレーションギャップを把握していなかった事、および2度目の反則後までに選手を引っ込めなかった監督側の非は否めない。
また、フットボールの本場アメリカのトップリーグNFLでは、2012年に「バウンティゲート(懸賞金疑惑)事件」という、相手に怪我を負わせた選手が報奨金を受け取っていた問題が発生し、社会問題化している。それだけダイレクト・コンタクト・スポーツでは故意に敵選手に怪我を与えることが容易かつ有効であるため、暴力行為はたとえインプレー中であっても厳しく取り締まる必要がある。
第7のパワハラ
関学大側のボールを持っていない完全無防備状態な選手に背後からタックル(レイトタックル)するという悪質行為を働いた。
本来なら一発退場ものの重大なルール違反である。
当然、ここで一発退場の処分を下していれば、事態がここまで拗れることはなかった。
ところが審判は、これに対して退場処分を下すことはなかった。
これにより、選手の反則がエスカレートしていき、悪質なタックルで相手を大怪我させるに至った。
2回目の危険なタックルでも退場処分を下さず、3回目の危険なタックルが関学大のQBに怪我を負わせる悪質なタックルになった。
危険な反則の場面で然るべき処分を取らなかった事、それにより危険なプレイをエスカレートさせ、相手の選手に悪質なタックルで怪我をさせてしまった。
試合の審判というゲームを支配し、反則などを諌める立場である事を考えると、この職務を放棄させたことも立派なパワーハラスメントと言える。
怪我をした選手、させた選手はもちろん、反則プレイを指示した監督もある意味では第7のパワハラの被害者である(監督はパワハラの加害者・被害者両方)。
現在もこの審判と、アメフト協会関係者による会見などは行われていない。
しかしそれはあくまで日大側の問題。この悪質タックル事件には日大側だけでなく、関学大陣営や、日本アメフト協会側にも疑惑や不可解な点が多くある。
残る疑惑・不可解など。
監督とコーチの除名処分により、ひとまずの決着を見せた事件のように思えるが、まだまだ疑惑や不可解な点は多い。
・日本アメフト協会からのこの試合の審判のライセンス剥奪もしくは停止処分の報道はない。
(これでは他の大学も安心してプレイできない。もはやすべてのアメフト部がストライキレベルで抗議しなければならないレベル。)
・日本アメフト協会が発した『フェアプレイ宣言』には、審判という言葉が一言も書かれていない。
(日本アメフト協会は審判問題からはあからさまに目をそらしている。)
・関学大側も、審判は誤審だと言いつつ『(日大と両方は対応できないので)触れていないだけ』と公言している。
(当該記事は、現在は削除されているが、この記事が捏造だったら名誉毀損で訴えられるレベル。本当に両方の対応はできないのか。最低でも抗議文などの提出はするべきではないのか。)
・被害者は本当に全治3週間だったのか?
(基礎体力、プレー勘、チームの連携など取り戻すことを考えると、3週間での試合復帰は不可能)
・日大監督やコーチが刑事告訴されるのなら、審判や関学大監督の刑事責任は?
(審判は職務怠慢による業務上過失致傷。抗議などの行動をとらなかった関学大監督も?)
・審判買収疑惑はあるか?
(審判を買収し職務怠慢にすれば、意図的にこの様な事件を引き起こせる可能性もある。)
その他様々な疑惑があったものの、日本ではマイナースポーツであるゆえに次第に世間も飽きはじめ、「もっと大事なニュースがあるだろう」という批判も噴出、有耶無耶のまま収束に向かった。
事件の影響
その後、日大アメフト部は2023年の薬物事件で3人の逮捕者が出たことにより、同年11月末に廃部の方針が決まり、反対意見があったため一時理事会で継続審議となったものの方針は覆らず12月15日に正式に廃部が決定した。
なお、薬物の乱用が起きたのは、悪質タックル事件の責任を取って内田正人が退任した後、厳格な指導者のいなくなったアメフト部でモラルや規律が著しく乱れたためとされている。
つまるところ、この悪質タックル事件が日大アメフト部廃部の間接的な要因となってしまったのである。
また、このことから「前時代的な部分もあっただろうが、大きな問題が起こらないよう部員を厳しく管理・統率することができていた点では内田の指導方針は間違ってはいなかったのではないか」と、内田監督に対する一定の再評価がなされることともなった。
関連タグ
矢野通:日大レスリング部出身のプロレスラー(新日本プロレス)。7月にリング上で「悪質タックル」を相手に叩き込んで勝ち点奪取。