解説
1989年7月15日に公開された押井守監督のアニメ映画。企画及び原作はヘッドギア、制作は初期OVA同様、スタジオディーン。
初期OVAの好評を受け、「娯楽の王道をいくこと」、「主役でありながらOVAでの活躍が少なかった遊馬と野明が大活躍すること」、「レイバー対レイバーの戦いを描くこと」という「劇場版 3つの誓い」と称されたスローガンを掲げた構成で制作されている。
映画公開当時の1980年代後半はまだパソコンの普及度が低い時代だったが、その頃から早くもコンピュータウイルスに着目した構成や、特定の高性能なOSが市場を独占し、社会システム全体を支配することの危険性をシミュレーションしてみせた先見的なストーリーは現在でも高く評価され、クライマックスの『方舟』における要塞攻めアクションや新型パトレイバー・AV-X0零式とイングラムの死闘などのメカニック面でも根強い人気がある。
また娯楽サスペンス調の物語ながら、各所に聖書をモチーフとした要素が散りばめられ、『実体として存在しない敵との戦い』や『東京という街への愛憎』など、押井守作品お馴染みのエッセンスも含まれている。
本作ではキャラクターデザインがアニメ調だったOVAシリーズのものと比べ、目が小さく描かれており、表情を変える時にできる口元の影をデフォルメせずに描き込むなど全体的にリアル調のものへとアレンジされている。
また、過去と未来が混在する近未来の首都・東京を強く演出するため下町的雰囲気の残る場所に対する綿密なロケハンが行われ、緻密な背景美術が描かれた。
あらすじ
1999年夏。ある日の夕暮れ、篠原重工の天才プログラマー・帆場暎一が、バビロンプロジェクトの要となるレイバー用海上プラットホーム『方舟』から口元に嘲りの笑みを浮かべながら投身自殺する。時期を同じくして、レイバーが突如勝手に暴走する事件が多発。遂には自衛隊の試作レイバーまでもが無人で暴走事件を起こす。
続発する暴走事件の処理に当たる特車二課であったが、第1小隊は近々正式配備される新型パトレイバーAV-X0(通称「零式」)に関する研修中のため不在であり、泉野明を始めとする第2小隊の面々は単独での任務に追われ疲労困憊していた。
そんなある日、また一つ暴走事件を鎮圧した際の暴走レイバーの挙動からその異常性に気づいた篠原遊馬は独自に調査を始め、暴走した機体すべてに搭載されていた篠原重工製の最新レイバー用OS「HOS」(Hyper Operating System)こそが原因ではないかと推測する。さらに既に同じ疑念を抱いていた第2小隊長後藤喜一もまた、「HOS」の主任開発者だった帆場の捜査を、本庁の松井刑事に依頼していたのだった。
そしてHOSの謎が解明された時、首都圏にひしめく8000体以上のレイバー一斉暴走による東京崩壊の悪夢がすぐそこに迫っていることが明らかとなる。
特車二課第2小隊は最悪の事態を回避するため、全ての鍵を握る『方舟』に向けて出撃する。