愛知県小牧市に鎮座する田県神社(正確には田縣神社であるが「縣」が機種依存語である為、以後は「県」にて代用する)が毎年、三月十五日に開催している祭りである。天下の奇祭として有名であるが、田県神社が他の各県に存在する同類の祭りと異なる点は「海外メディア(確かBBC)が何を思ったかテレビで祭りの様子をオンエアしてしまったが為に、大受けした外国人の参加者が非常に多い」点にある。
故に毎年、豊年祭にて神社で使用される常備品の類に括り付けられる全ての木製益荒男に跨がったり頬擦りしたりキスしたり艶めかしくさすったりする姿が多く撮影される。その手の話題に強い外国人さんならではである。更に、外国人からの盛況ぶりに英語でのアナウンスが求められた結果、「留学生による外国人の臨時巫女さん」を目にする事が出来る、大凡は全国で唯一の神社と思われる(2007年筆者実見。臨時なので豊年祭の時だけではあるが)。由緒書も日本語と英語の二種類が存在する。
そして毎年、海外の様々なメディアがこぞって取材に訪れるので歳を重ねるに至って大いに賑わい、本来の社格で云えば遙かに格上である近所の大県神社(大縣神社、田県神社の夫婦神)も、同じくの豊年祭だけに限っては参加者数で田県神社の後塵を喫している。余りに客が来ないからと本来、同日開催であった豊年祭を大県神社側が三月十五日より以前の直近土日にずらしたという曰く付きである。
そして、田県神社豊年祭時に神社境内で販売される土産物はどう考えても成人向けな品が非常に多い(特に陶磁器の類)。子宝飴なんぞは隣のスーパーマーケットで常時、販売されている程度のお茶の子さいさいクラスで、筆者もオフ会にて名古屋土産にと人数分、持参したくらいであるから末恐ろしい。諸兄諸姉方々、私が云うのも何だが日本土産がそんなで良いのか。
田県神社豊年祭は「田県神社の御神体で毎年、新調される『超大型木製益荒男』を近所の神明社から田県神社まで御輿で担ぎ、練り歩いて奉納する」ので、折良く(折悪しく?)御神体が練り歩く時間帯にぶつかった場合、旧国道41号である県道27号が通行止めにされる程の優先度を誇る。途中で歩みを止めて大回転などもする為、故に近所を通行する場合、日付固定の三月十五日は禁忌である。周辺には工業団地もあるが、商談に間に合わなくなっても決して益荒男様に怒りを覚えてはいけない。外回り中に危険な幟を見かけた場合、疾く踵を返そう。
トップイラストの装束は周辺の住民から参加者を募り、晴れて選ばれた女性がこの衣装と益荒男を所持して、御輿に担がれ練り歩く御神体の後ろを静々と付いて歩く。どんな罰ゲームだとも我々の業界ではご褒美ですとも云われるが、この益荒男に触れた女性は安産、子宝に恵まれるという御利益付きなので、練り歩く最中、益荒男に手を伸ばす女性が絶えない。尾張のおなごさんはほんにお盛んやわぁというのは(恐らく)誤解である。同国内に間々乳観音(正確な寺名は「飛車山龍音寺」)という寺院も構えるが全くの偶然である。……恐らく。
御神体である超大型木製益荒男であるが、御神体なので継ぎ木ではなく一本木から削り出す。その堂々たるサイズはホームページから引用するに数値を見るだけでも凄まじいので、その恐ろしさを諸兄に想像して頂きたい。
この祭は直径六〇センチ、長さ二メートル余りの大男茎形(男性の性器)を毎年新しく檜で作成し、それを厄男達が御輿に担ぎ、御旅所から行列をなして当社に奉納し、五穀豊穣、万物育成、子孫繁栄を祈願する祭です。(田県神社ホームページより抜粋)
尚、上記の大県神社(旧国弊中社)は田県神社と対を為し、田県神社が男神である点に対して大県神社は女神を祀っている。どちらも子宝、安産の神様である。