作品解説
中国語原題は『英雄本色』、英題は『A Better Tomorrow』。
1986年に制作・公開された香港アクション映画で、監督はジョン・ウー、主演はチョウ・ユンファが務めた。
マフィアの抗争や殺し屋の活躍といった現代を舞台とした犯罪映画(フィルム・ノワール)に、中国文化で重視される「血族間の絆」や「義兄弟の誓い」といった観念を持ち込み、それまでコメディ映画やカンフー映画が主流だった香港映画界に“香港ノワール”とも呼ばれる新たなジャンルを開拓した記念碑的な作品である。
大量の銃弾が飛び交う激しい銃撃戦、ダンスの動きを取り入れスローモーションを多用した華麗なガンアクション、敢えて実際の装弾数を無視して弾倉交換(リロード)を「溜め」に使う割り切った演出、膨大な火薬を使用した爆発シーンはとりわけ大きな話題を呼び、アジア各国を中心に大ヒットを記録し、ジョン・ウーとチョウ・ユンファの出世作になった。
『荒野の用心棒』等で知られるセルジオ・レオーネ監督や、深作欣二監督の『仁義なき戦い』、サム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ』等から大きな影響を受けていることでも有名だが、本作が後続のクリエイター達に与えた影響も大きく、『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が本作の影響を公言する等、その後のガンアクション映画の方向性を決定づけた一作でもある。
実際、「黒いロングコートをマントの如くはためかせて二丁拳銃を撃ちまくるハードボイルドな主人公」、「教会で繰り広げられる殺し合い」、「明らかに銃の装弾数を超えてる射撃回数」、「猛烈な弾幕が飛び交ってるのに何故か主人公達にはなかなか当たらない敵の銃弾」、「敵と至近距離で腕を交差して互いの顔に銃を突きつけ合う構図(メキシカン・スタンドオフ)」等など、本作が提示した鮮烈なイメージは、現在では映画だけでなく多くのアニメや漫画にも用いられ続けている類型として定着している(特にアニメでは1998年の『カウボーイビバップ』にて盛大にオマージュされた例が有名)。
物語
香港マフィアの幹部ホーは闘病中の父と学生である弟キットの面倒を見ていたが、弟が警官になる希望を持っていることで病床の父から足を洗うよう頼まれる。了解したホーは、次回の台湾への贋札の取り引きを最後に、闇社会から足を洗おうと決意する。
しかし、取り引きは密告によって警察に知られており、ホーは同行した後輩のシンを逃し、自首することを選ぶ。
一方その頃、香港ではホーの父が陰謀によって殺され、そのことでキットは尊敬する兄が香港マフィアの一員であることを知ってしまう。ホーの親友マークは報復のために敵の元に乗り込み、激しい銃撃戦の末に皆殺しにしたものの、自らも足を負傷して障害を負ってしまった。
数年後、ホーは出所するが、今では警察官になり結婚もしているキットから、父親の死の責任とマフィアの兄を持つことから出世の出来ない不満をぶつけられた上に追い出され、親友マークは怪我で自由の利かない体になったことから雑用以下の扱いを受けるほど落ちぶれていた。そして元は後輩だったシンがマフィアで権力を握るようになっていた…。