「行きなさい。あの方の御為に――」
概要
プロフィール
人物像
折神家親衛隊の一員で第三席。
親衛隊メンバーの中で折神紫と行動を共にする機会が多い。無論紫に対する忠誠心も高い。ただ、大会での実績が全く無く、全てが謎に包まれていた。
表情にも乏しく、本人が寡黙であることが拍車をかけている。
後述の戦い方もあってか真希や寿々花のように前線で指揮を執ることは少なく、紫の政治活動に同行したり予定を確認したりと秘書的な任務を普段は行っている様子。
アニメ本編では語られなかったが秋田出身であり、刻みし一閃の燈火ではきりたんぽが好物であったり、なまはげが気絶するほどトラウマだったり、地元から送られてきた秋田の米を使った塩だけのおむすび(おにぎりではないという拘りも見せている)をひたすら食べ続けたりという秋田絡みの話は多い。
普段は咄嗟の理解が重要な立場にいるため、混乱を避けるためにあえて使っていないが、時折秋田弁が出ることもある。ただし映像化作品においてはその片鱗を見せた場面はない。
またかなりの巨乳の持ち主で結芽から羨ましがられ、『刻みし一閃の燈火』の着せ替えルームにキャラのプロポーションを変更できる機能を勝手に付けられ、貧乳にされた際、「そんな機能はありません」と淡々と突っ込みを入れた。
刀使として
愛用の御刀は水神切兼光。
他の親衛隊メンバーと同じくノロを体内に受け入れている。他のメンバーはノロを身体強化に使う程度なのに対し、夜見は自らを御刀で傷付け、そこから小型の荒魂達を出す事が出来る。
その物量で押したり探索に用いたりするのが基本的な戦い方であり、刀使としては特殊な戦い方ができる。
その一方で、彼女の戦闘スタイルは自身の体内から出す小型の荒魂に依存しており、御刀を交える機会はほとんどない。よって戦闘時は過剰とも言えるまでの補充が必要となり、ノロのアンプルを自ら注射する頻度が最も多い。
傍から見ると破滅的ともいえる戦い方をしており、実際身体に支障をきたしている場面も多い。そもそも大部分が白くなってしまった髪自体が、刀使として相当に身体を酷使してきた証拠でもあり、元々は地味な黒髪であった。
波瀾編の描写より、ノロを受け入れる以前は御刀に選ばれるほどの力がなかったことが判明した。
太刀筋などは設定以上のものを読み取れる機会はあまりない。よってノロ無しでの実力の程度は不明であるが、特に目立った戦績がないということからもわかるように、他の刀使に比べると見劣りする部分も見られる。
実際のアニメ本編では古波蔵エレンとの対戦において、荒魂による援護なしである程度打ち合う様子を見せている。一方で、舞衣や薫には頼みの荒魂を破られた瞬間にあっさりと倒されるなどしている。なお、ゲーム版の刻みし一閃の燈火のプールイベントでは、エレンと互角とされているなど、その実力の程ははっきりとしていない。
経歴
胎動編
紫を襲撃した十条姫和と、それに「加担」してしまった衛藤可奈美、さらには舞草とか言う裏切り者集団の一味である益子薫と古波蔵エレンを倒し、紫の元に突き出すべく、先のやり方を繰り出したのだが、逆にそれがアダとなってしまった。
その後、姫和達が折紙宗家に殴り込みをかけた際、自分達を毛嫌いしていたはずの高津雪那と共に柳瀬舞衣と糸見沙耶香に応対、舞衣との一騎打ちに挑むも、敗れてしまう。だが、倒れる直前に舞衣に対し賞賛の言葉を贈っている。
波瀾編
自らの意思でタギツヒメの元に仕えていた。ゆえに、かつての仲間である獅童真希・此花寿々花と再会した際には、はっきりと敵対と決別を意味する言葉を吐き捨てた。しかし、その後はこの2人に敗れて高所から落下してしまい、以降は消息を絶った。
その際の描写から彼女にはタギツヒメより大事な存在がいることが示唆されていたが…。
過去
夜見はノロを受け入れるまで御刀に選ばれることすらできない非力な少女だった。雪那にとって彼女は気まぐれに選んだ実験台の一人に過ぎなかったのだが、夜見からすれば力のない自分を選び、刀使になるキッカケを作り、最後には親衛隊第三席に至るまでの力を与えてくれた、まさに救いの神のような存在だったというわけである。
要するに夜見の行動原理は全て恩義のある雪那に尽くすことにあり、他者には、乱暴に切り捨てられてもひたすら尽くす姿が当人にすら異質に見えたせいで、誰にも理解されなかった。
最期
その後、タギツヒメに用済みとして切り捨てられた雪那が荒魂に襲われている所に駆け付けると、先の戦闘で満身創痍の身体でその場にいた荒魂から雪那を救った。
助けられたにもかかわらず、半狂乱になりながら夜見を罵倒する雪那に歩み寄り、夜見は呟く。
「ただいま戻りました。高津学長。」
恐らく何十、何百と繰り返されたいつものやり取り。毛嫌いされていても、深く傷付いていても夜見は最後に雪那のもとに帰ることを選んだ。
その言葉を受け、最早自分には何も無いと思っていた雪那は驚きながらも最期まで自分に尽くしてくれた夜見に言葉を返す。
「お勤めご苦労様でした。夜見。」
作中常に無表情だった夜見だったが、その言葉を聞いた彼女は最期に年相応の少女らしい笑顔を見せると雪那に看取られながら息を引き取った。
その献身さは、自分の目的のためなら他者のことなど厭わない雪那の心を大きく動かし、「夜見と心中する」という決意させるまでに至った。
真希や寿々花から諭されたことでむしろ彼女が助けてくれたことを無駄にしないために雪那はその場から離れ、夜見の死体はノロに飲み込まれて行った。
夜見の死後、彼女の御刀である水神切兼光は相楽結月の計らいによって雪那のもとに置かれることになる。
彼女の死は真希や寿々花に結芽の死と同様に影響を与え、二人のことを想う様子を見せていた。
蓋を開けてみれば夜見もまた、雪那とは違う形ではあるが執着心の塊であったと言える。その異常とも言える忠誠心は、改めて本編を1話から見直すとさらに確認することができるだろう。
夜見がもっと自分の思いを表現できていれば、雪那がもっと早く自身のことを考えてくれる人間がすぐ側にいると気づいていれば、こうした結末を迎えなかっただろうことを思うと、なんとも皮肉な関係であるといえる。
未放送予告動画とじよこ!第22話で真希は『彼女は親衛隊の中でも異質だった。僕たちはもっと彼女の事を理解しようとすべきだったのかもしれない』と語り、寿々花は『彼女はきっと私たちとは異なる理由で戦っていたのでしょう、彼女は一体何のために戦っていたのでしょう。』と理解していなかった。予告では表がシリアス、裏がギャグになっているが、この予告だけは裏もシリアスでありイレギュラーと言える。
みにとじ
「よざくら」では紫の側に付き添ったり、荒魂を使って写真撮影しようとしたりしていた。「おむすび」では結芽の歓迎会のため、おむすびをひたすら作っている姿を見せた。本作でも「おにぎり」と呼ばれるとむすっとなって訂正する場面が描かれている。
最終回では自身の目的を胸に秘めつつ、かつて撮影した記念写真を眺めており、親衛隊に対する思い出の中で僅かながらの葛藤があったように描かれている。
刻みし一閃の燈火
メインストーリーではほとんど本編と変わりない活躍を見せている。イベントストーリーの時空では融通の利かないキャラとして描かれている部分も見られる。
メインストーリーでゲームオリジナルで結芽が生存(蘇り)したルートとなったため、心境の変化が生まれることが期待されたが、やはり夜見の断固とした決意は変わらず、元親衛隊との交戦後は本編と同じく行方がわからなくなる。
その後、雪那の救出のため過剰にノロを摂取して右半身が荒魂化した状態で駆けつける。
一途な忠義を見せたことで夜見の真意に気づいた雪那にすら止められるも、荒魂と戦って果てる道を選ぼうとした瞬間、元親衛隊達が援護に駆けつけ、夜見が荒魂の力を行使することを止める。
自身と敵対関係にありながらも、命懸けで助けに来た真希達が、自分のことを「仲間」として大切に思っていることを改めて知り、親衛隊として戻ることを承諾する。
また、ゲーム版では雪那への忠誠心に関する補足がされている。かつて刀使としての資質を見出され、故郷を出て鎌府女学院へと入学。故郷の皆が喜んでくれたこともあり、日夜人より何倍も鍛錬に励んでいたが、力不足(恐らく剣術の技量面)から御刀に選ばれず、同級生が開花していく中で、一人取り残されるようになる。
期待されていることもあり、学校を辞めておめおめと帰郷もできない夜見は、一人でどん底の毎日を過ごしていた。そんな中、雪那が先の通り戯れに夜見を実験体として選出、嘘でも才能があると認めてくれたことで、雪那の心情はどうあれ、自身の存在意義を与えてくれたと感じ、「高津学長のためなら命を捨てても惜しくない」という程の忠誠を抱くに至った。
本編では尺の都合からか、この点はあまり掘り下げられていなかったが、実際は「劣等感」と「故郷の皆の期待」の板挟みに合い、絶望にも似た感情を抱いて生きていたということであろう。そんな中、自身を見出してくれた雪那は、たとえどんな扱いをされようとも唯一希望をくれた「救いの主」であり、その人生観を変える程の出会いだったということだったらしい。
ゲーム版はあくまでパラレルワールドであるため、細部まで本編と同じ心境だったかと言われれば断言はできない。むしろ蘇った結芽を前にしても気持ちがほぼ揺らいでいない辺り、本編以上にこの心情は根深いとも言えるか。
それだけに、袂を分かったはずの元親衛隊の面々が、夜見の存在を認め、必要としてくれたことが、心の動いた理由なのかもしれない。
身体が半分荒魂化するなどかなり危険な状態だったが、年の瀬の大災厄後は療養生活に入り、新学期が始まってしばし経った後に復帰し、特務警備隊として再編成された親衛隊の面々に少し遅れて合流する。
とはいえ、一度は袂を分かったうえ、自分の行動を間違っていないと未だに思っているだけに、仲間達の歓迎は夜見の中では腑に落ちなかったようである。
しかし、結芽から「全員揃った、っていうのが大事なんだから」と過去は気にしていない旨を示され、さらに紫からも「必要だから呼んだ」と感情的な動機抜きで必要な戦力と見なされていることを聞き、ひとまずの納得を得たようである。
余談だが、稲河暁とは同郷の幼馴染であり、夜見が呼び捨てで呼ぶ数少ない人物。そして、互いに大きく道を違えたことを認識しあっている。また、幼い頃の夜見は今とは違ったようで、なまはげに扮した暁を見て号泣しているなど、感情が豊かだったようである。
三周年イベント結芽の帰郷では実家と家族構成が明らかになった。家は普通の一般住宅で両親と既に家を出て自立した兄が二人に犬二匹という家族構成で割と頻繁にたわいもない連絡を取っており特に母からは犬を撮影した動画を送って貰っているとのこと。一番泣いたのは小学生の時に飼っていた犬が老衰で亡くなった事だという。
その他
- なまはげが苦手な理由は、幼少期に牡牛型荒魂が幹線道路に出現した所に遭遇したのが原因。荒魂によって薙ぎ倒された車の中に閉じ込められ、両親の安否がわからぬまま長い時間を過ごすことになり、事件があったのが大雪の日だったため、大雪と恐怖という二つのテーマと関係性が深いなまはげを見ると、トラウマで身体が竦んでしまうようになった。ちなみにこの時救出に赴いたのは、学長就任から間もない雪那が指揮する特祭隊で、もしこの事実を夜見が知っていたら、雪那への忠誠心はよりディープになっていたかもしれない(あるいは知ったからこそか)。