概要
第5話『大いなる逆転』に登場。年齢13歳。身長149cm。
若き女性判事・水鏡秤の養子。彼女の従姉妹・相沢アミの忘れ形見であり、水鏡とは懇意にしていた母親の亡き後、彼女の養子として引き取られた。水鏡が養母になるまでの間、美和マリーが運営する養護施設『ハッピー・ファミリー・ホーム』にて養育されていた。水鏡とは13歳しか離れていない親子だが、彼女を「母さん」と呼んで実母同然に慕っている。水鏡は『逆転裁判4』以降の弁護士・成歩堂龍一と同じく、結婚を経験せずに20代という若さで義理の親となった身の上であるが、彼女の詩紋に対しての愛情や家族意識も強い。それだけに普段は冷静沈着な水鏡も、義理の息子・詩紋の事となると取り乱してしまい「彼女の唯一かつ最大の弱点とも言える存在」となっている。
現在『英都プロダクション』に所属する「新進気鋭の天才子役」として世間からの人気を集めている。母アミの死後、8歳で芸能界デビューして今年で5年となる。子役としては強味となり得る低身長の持ち主であるが、現役の男子中学生らしく小柄な体型には強烈なコンプレックスを抱いており、少しでも背を伸ばそうと常に大量の牛乳パック(1リットル)を持ち歩いては愛飲している。ちなみに中学一年生の男子の平均身長は154cmなので、149cmの詩紋は平均より5cmも低い。その体型故に「実年齢よりも年下の役」を担当させられる事も多く、可能な限り内心で渦巻く不満を堪えて、どんな役柄でも熱演を心掛ける高いプロ意識を備えている。「牛乳を愛飲する男性芸能人」という点においては『タチミ・サーカス』のマジシャン・マックスと共通しているが、詩紋は牛乳を「私生活でも仕事中でも成長促進剤」として扱っているのに対し、マックスの方は「仕事前の精神安定剤」として扱っている相違点がある。
今は主人公の少年役を担当する『大怪獣ボルモスVSヒョッシー』の撮影に取り組む立場にある。俳優業への並々ならぬ誇りと役作りの為、撮影から離れている時でも「映画の小道具と舞台衣装」を身に付けるのがモットー。今回は「ボルモスとのテレパシーを可能とする証として、対象者の頭の左右に生える角」「赤い牛柄のパーカーと青い短パンの舞台衣装」「小学生である主人公の背負うランドセル」が対象となった。ランドセルの中には沢山の牛乳パックが入っていて、度々その中の1つを取り出して口にする。今回は牛乳も小道具の1つに含まれていて、その理由は「ボルモスのパートナーは新鮮な牛乳を飲まないと、ボルモスとの交信が出来ないという設定」故である。日常生活でも小柄で幼い外見が災いして、頻繁に小学生に間違えられる事を悩んでいるが、今回の小道具のランドセルは彼の悩みに拍車を掛けてしまっている。
多くの大人と接する職業柄に影響されてか、年齢不相応の達観した視点で刺々しく話す。冷めた態度を取る生意気な少年だが、義母の水鏡の前では素直になる。生育環境や立場によるものか、生意気の度合いは『逆転裁判』第3話『逆転のトノサマン』に登場した『トノサマン』シリーズの大ファン大滝九太に比べると控え目な方。なお『トノサマン』シリーズも『ボルモス』シリーズも『英都プロダクション』が制作している。褒められると照れ隠しを目的に、顔を背ける癖がある。撮影本番で最高の演技を発揮する為、人目を避けて練習に励むのを欠かさない、大変な努力家という側面を持つ。
母親・相沢アミ
詩紋の実母で水鏡の従姉妹に当たる故人。現在の水鏡がまだ26歳である事、アミの死亡当時、息子は既に8歳だった事から「水鏡より年上」だと思われる。元々は日本から『西鳳民国』に派遣された外交官であり、現地の男性と職場恋愛の末に息子・詩紋を授かった。『西鳳民国』を原産地とするシシユリの花は、アミにとって初めて恋人から贈られた思い出の花である。詩紋の両親は双方の職業故の立場上、恋愛関係となると一部からの反感を招きかねない間柄であった為、極秘交際していた。当然ながら「私生児である息子の存在」も極秘事項とされ、表向きには独身を装う権力者の父親にとって詩紋は隠し子となっている。しかも母子共に父親とは会う事すら難しい立場にある。それでも「両親の唯一人の我が子・詩紋に対する愛情は本物であった事」が作中における描写からも窺い知れる。詩紋の両親の男女愛も紛れもない純愛だったと言える。
アミは権力者である詩紋の父親の立場を守り、平穏な環境で息子を育てる為にも妊娠を契機に外交官を退職し、日本に帰国すると詩紋を出産。その後は昔から慈善事業に関心が高かったので、孤児院『ハッピー・ファミリー・ホーム』の職員に転職し、息子の詩紋も入居者とした環境下で働いていた。生前のアミは「何とかして息子を父親と会わせてやりたい」と苦心していたが、5年前とうとう願いは叶わないまま病により他界した。水鏡は従姉妹アミの死去から程なくして『ハッピー・ファミリー・ホーム』から詩紋を引き取り、正式に養子縁組を行った上で「名実共に彼の義母」へと転身した。なおアミと詩紋の心情に配慮してか、水鏡は義理の息子の改姓は避けている模様。
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※以下『逆転検事2』のネタバレあり
天才子役の出自
実は『西凰民国』の大統領・王帝君の隠し子である。世間的には王は独身であり、隠し子がいる事は極秘事項とされている。母親の相沢アミは生前『西凰民国』に派遣された外交官を務め、父親の王とは職場恋愛の関係にあった。誕生から現在に至るまで、周囲からは徹底的に「父親が誰なのか」は秘匿にされた上で育てられて来た。後述の事件の結果、実父の王と再会する機会は永遠に失われたのも影響して、詩紋は父親に関する記憶を持っていない。
12年前『ハッピー・ファミリー・ホーム』で養育されていた1歳の頃、父の王が息子へのプレゼントを携えて密会にやって来るが、彼は施設を目前にして暗殺されてしまった。王を暗殺したのは3人の真犯人からの依頼を受けた、盲目の殺し屋・鳳院坊了賢で、この大統領暗殺事件は後世にて「SS-5号事件」と呼ばれる様になった。奇しくも王が息子の為を思い、持って来たプレゼントは『初代ボルモス人形』「親子の絆を花言葉とするシシユリの花束」の2つであった。この『初代ボルモス人形』は録音機能が内蔵された物で、これにアミは「私達の息子に会って欲しいというメッセージ」を吹き込み王の元へと贈り、彼は人形をアミに返す目的も兼ねて持って来ていた。悲しい事に「本物の王の形見となってしまった初代ボルモスの人形」は真犯人の1人・王の影武者に厳重に保管されていた。影武者の動機は本物の王を暗殺して、自分が大統領に成り変わる事であり、本物の隠し子・詩紋は「自分の正体が暴かれる事態を招きかねない危険な存在」と見て、彼をも殺害しようと企図していた。極秘事項として扱われていた為、影武者は王の隠し子が誰なのかまでは知らず、その正体を解き明かす重要な手掛かりとして「王の遺品・初代ボルモス人形」を保管していたのだ。
第4話『忘却の逆転』では、影武者は未だに自分を本物の大統領だと思い込んでいた、詩紋の義母・水鏡から「義理の息子の事で話がある」と『ビッグタワー』に呼び出されて彼女と密会する。卑怯にも影武者は水鏡との会話から必要な情報を引き出し、とうとう詩紋が王の隠し子だと知り、口封じの為に水鏡と詩紋を纏めて暗殺しようとする。しかし自分の目的の為に『ビッグタワー』を訪れていた本作の黒幕と偶然、鉢合わせしてしまった影武者は妨害を受けて撤退する。日を改めて水鏡と詩紋の暗殺に向かった影武者だったが、前述の黒幕の因縁の相手でもあった為、黒幕によって殺害される末路を辿った。何の巡り合わせか影武者の遺体は、詩紋の仕事場である『大怪獣ボルモスVSヒョッシー』の撮影現場にて発見された。この影武者殺害事件によって、最終話にして第5話『大いなる逆転』の幕は上がる。
第4話では水鏡の台詞から存在が仄めかされるに留まり、詩紋本人が姿を現すのに加えて、水鏡の養子と明かされるのは第5話からとなる。第5話の中盤、水鏡は美和マリーが被告人となる裁判の担当判事に任命されるが、協力者であるマリーの無罪を望む人物と影で糸を引いていた黒幕によって、詩紋は「水鏡を脅迫して望み通りの判決を獲得する為の人質」として狙われてしまう。その結果、水鏡はマリーの共犯者からは「マリーを無罪にしなければ息子を殺害する」、黒幕からは「マリーを有罪にしなければ息子を殺害する」という2つの脅迫の板挟みとなってしまう。その後、詩紋は御剣怜侍と仲間達に救出されると「出自や立場を利用されての誘拐事件の被害者となった以上、もう隠し通す事は不可能」と判断した水鏡の説明を受けて、物語の終盤で「王が自分の父親」だと初めて知る事となった。そして12年もの長き時と数奇な運命を経て、最終的に影武者と共犯者から回収された「父の形見・初代ボルモス人形」は一人息子の詩紋に託されるに至った。