まんが家は
三日徹夜、座り込み一ヵ月、一日半の絶食ぐらい
覚悟しなければ
(鈴木光明『少女まんが家入門』寄稿より)
1967年に別冊マーガレットでデビューし、以後少女漫画で活躍。
概説
未完の大作「ガラスの仮面」の作者として知られるが、手がけるジャンルは幅広く、歴史ものからアクションコメディ、ミステリーやサスペンスなど多岐にわたる。特に70年代の心霊ブームを背景に生み出されたホラーやオカルト系の短編には、今も伝説のように語り継がれる名作を持つ。
少女漫画界屈指のストーリーテラーであり、少女漫画然とした可愛らしい絵柄ながら、少年漫画にも通じるダイナミックで想像力豊か、時にショッキングな作風が特徴で、男性ファンも多い。
- 代表作である「ガラスの仮面」も、演劇という文化的なテーマを扱いながら、その構造は「才能ある若者が師の厳しい指導の下、時に常軌を逸した修業を積んで成長する」というスポ根ものである。
1982年に「なかよし」で短期連載されたミステリー漫画『妖鬼妃伝』で、第6回講談社漫画賞を受賞。
70年代から80年代にかけて、和田慎二や柴田昌弘と共に「花とゆめ」の黄金期を支えた看板作家の一人。
特に和田慎二とは親交が深く、何度かコラボを行っているが、その作中で神恭一郎と麻宮サキに連続殺人犯として逮捕されたことがある。
また、元アシスタントに魔夜峰央がおり、ガラスの仮面の作中に「クックロビン音頭」が登場したり、『パタリロ!』の作中でガラスの仮面が劇として演じられたりしている。
主な作品
1976年連載開始。演劇をテーマとする大河ロマン。詳細はリンク先参照。
- 孔雀色のカナリア
1973年、月刊セブンティーン連載の中編。
貧しい家庭に生まれ育った少女が、幸せを掴むため裕福な家の養女となっていた双子の妹を殺害して入れ替わるという犯罪サスペンス。生々しい殺人描写や現実感のあるトリックは少女漫画とは思えないほど。
- 白い影法師
1975年「mimi」創刊号掲載。
読み切り短編ながら、そのクライマックスシーンは「みんなのトラウマ」として発表から50年近く(!)が経過した現在も語り継がれるショックホラー。
1981年なかよし連載の中編。
親友の死が何者かによる殺人だったことに気付いた少女が、有名デパートが開催する人形展に潜む謎に挑む。
いたいけな少女たちに日本人形に対する恐怖心を植え付けた、みんなのトラウマその2。
- アマテラス
その他多数。
余談
終わらない連載
1975年に「花とゆめ」で連載がスタートした「ガラスの仮面」がなかなか終わらないことで非常に有名。
これは単行本化にあたって大幅な加筆・改変が行われているためで、連載版を読み続けているファンにとっては、全く展開の異なる物語が二つある状態となってしまっている。
さらに美内自身が元々深く関心を寄せていたオカルト世界にすっかりハマってしまい、精神研究団体(実質的には宗教団体)を立ち上げ教祖となったことから、神との交信に忙しくなり連載は度々長期中断することに。
長らく続きを待ち続けているファンを嘆かせている。
連載初期からリアルタイムで読んでいるファンの高齢化も深刻化しており、自らの弟子(アシスタント)たちが独立後に描いた作品内ですら「先生つづきを描いてください」「先生が(『ガラスの仮面』の)続きを描いてくださるなら、自作を辞めて(自分で打ち切って)でも手伝いに参ります」とネタにされる始末で、それらも含めてファンたちの「私の目の黒いうちに完結してくれ」との嘆きは、日本のみならず海外からも寄せられているそうである。