「…そんなの考えるまでもない、俺はお兄ちゃんだからな…妹を守るのは当たり前だろ?」
「お前が全のために一を殺すというのなら、俺は何度でも悪を成そう──覚悟はいいか…正義の味方」
※以下、『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』5巻以降のネタバレが含まれます。 |
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概要
美遊・エーデルフェルトの義兄。
『ツヴァイ!』で美遊がイリヤの義兄を自分の兄と見間違える場面があったが、その理由は美遊の兄とイリヤの兄が平行世界の同一人物(=同じだけど違う人)だったからである。
本編やイリヤの世界の士郎とは異なり、肌の一部分が浅黒く、頭髪の一部分が白にそれぞれ変色しており、アーチャーと混ざったような見た目になっている。
また漫画版では夢幻召喚に伴う英霊置換(後述)の影響かエインズワースから拷問でも受けたのか、声すらもイリヤが聞いて衛宮士郎と判別できないほど嗄れた渋い声になっている(アニメ版では没設定となっている)。
衛宮切嗣の「正義の味方」という理想を受け継ぐ事を決めて以降その成就に始終し「人間のふりをしているロボット」と称された原作の士郎に対し、こちらは5年にも及ぶ矛盾と葛藤の歳月を経たことで「ロボットになりきれなかった」衛宮士郎であり、作者のひろやまひろしからは「士郎であって士郎でないナニモノカさん」と表現された。
「世界よりも個人を優先する」という考え方自体は原作の『Heaven's_Feel』ルートでも至ったものだが、こちらは美遊との交流で衛宮切嗣の「正義の味方」という理想に本気で疑問を感じていた(加えて、切嗣のやり方が強引過ぎた)為、さらに極端な思想であり自身の事を「最低の悪」と評している。
しかし、「美遊も世界も全て救う」という理想を掲げるイリヤの姿を見てまだ他の道を模索できるのではと思い直している。
※ 以降「過去編」(『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』7~8巻、劇場版『雪下の誓い』)のネタバレ注意 |
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経歴
幼少時に大災害に巻き込まれた事で家族を失くし、死を待つだけだった自身を救った衛宮切嗣に養子入りするという『stay night』に近い境遇を持つ。
異なるのは、災害が聖杯戦争によるものではないという点。(詳細が一切明かされていないため、単なる自然災害なのか、どこかの魔術師による人災なのかは現状判断できない)。
そのためか、切嗣は「正義に仲間や家族など不要」という妄執が折れず養子入りした士郎を助手のように扱い、2人で人類救済の方法を求めて世界中を巡っていった。(なお、人殺しをする決定的な瞬間だけは見せないようにしていたとの事。)
その全てが徒労に終わった末、神稚児信仰の生き残りを求めて訪れた冬木市で謎の侵食事故に遭遇。事故現場で街を呑み込んだ闇を祓った神稚児・朔月美遊を出会い、自身もその不可思議な力に救われた。
切嗣は侵食事故で天涯孤独となった美遊を養子にし、冬木市で彼女の力を使う研究を始めるが、病を患っていた焦りから美遊を「道具」としてしか扱わない切嗣を見て、士郎は自分たちの「正義」に疑問を持つようになるが、この頃はまだ「悲劇で溢れた世界を救う」という気持ちで自分の疑問を押し殺していた。
そして結局研究に根を詰めすぎた切嗣は衰弱していき、星明かりが満ちる空を見ながら士郎に正義と理想を託して亡くなった。
切嗣が亡くなってから5年ほど後、士郎は美遊を「人類を救う道具」として見るか、それとも家族として見るか、その結論を出せないまま高校生となり、親友・一義樹理庵(=ジュリアン・エインズワース)や後輩の間桐桜と閑散とした学校に通う日々を過ごしていた。
いっそのこと美遊から神稚児の力が無くなってくれていればと思い始めていたが、「士郎さんと本当の兄妹になりたい」という美遊の願いを聞き、美遊と「本当」の兄妹となる事を決意する。
しかし、そのための第一歩として訪れた美遊の生家・朔月家で美遊を助けた本当の理由を明かそうとするが、聖杯の器を求めていた親友・一義樹理庵(=ジュリアン・エインズワース)に美遊を連れ去られてしまう。
美遊を連れ去られ負傷した士郎は、言峰綺礼によって命を救われるが、そこでジュリアン達エインズワース家が世界を救うために聖杯の器を探していたことを知らされる。ジュリアンが起こそうとしていた『第五次聖杯戦争』を傍観するか、それともエインズワース家と敵対するかの選択を迫られた士郎は、「切嗣の正義」を否定することになると理解しながらも美遊を取り戻すため、エインズワース家と敵対することを選ぶ。
美遊を取り戻す糸口すら見つからないまま一ヶ月が過ぎたある日、聖杯戦争の参加者でジュリアンの部下でありながら自身に肩入れしてくれた後輩の間桐桜が、目の前でジュリアンに嵌められて殺される。士郎は桜が遺したどの英霊にも繋がっていないクラスカードの失敗作を「自分の全てを差し出す」事で「英霊エミヤ」に強引に繋げて、「偽物のアーチャーカード」を作成、自身に夢幻召喚する事に成功して刺客を退ける。
聖杯戦争の参加者である「人形」たち六人を全て倒してクラスカード七枚を揃えた士郎は、美遊の元へと駆けつけ、今まで何度も間違い続けたので今回の選択も間違いなのかもしれないと残しながら、この願いは本当だからと聖杯に願いを託す。
「──我 聖杯に願う
美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように
やさしい人たちに出会って…笑いあえる友達を作って…
あたたかで ささやかな──幸せをつかめますように」
美遊を見送ったあと、士郎の願いを阻止するためにやって来た「本物のアーチャーカード」を夢幻召喚したアンジェリカに対して時間稼ぎのため、『無限の剣製』で応戦するが、知らぬ間に士郎と美遊の間で繋がっていた魔力パスが、美遊が世界を越えた(※)ことで切れたため、士郎は力尽きアンジェリカの『天地乖離す開闢の星』の前に敗れる。
敗れた彼は「人類を裏切った許されざる最低の悪(=人類種の敵)」としてエインズワース家に捕縛・監禁され、子ギルの手で解放されるまで地下牢で幽閉されていた。
※大空洞周辺の空間ごと美遊の世界とイリヤの世界が入れ替わったのだが、作者のひろやまひろし曰く「士郎とアンジェリカは、転送のとき固有結界内にいたため影響を受けなかった」「ややこしくてやーねー」との事。
能力
「だから───遥かな彼方へと呼びかけたんだ
何だっていい 誰だっていい 力を貸せ その代わりに 俺の全部を差し出す───と
そんなガキの戯言に 応えてくれる英霊なんて ひとりだけだった」
第五次聖杯戦争では桜が遺した屑カード(クラスカードにできずに失敗してしまったブランクのサーヴァントカード)を、平行世界の未来の自分である「英霊エミヤ」に繋げ「偽物のアーチャーカード」を創り出して参戦した。
しかし、自身のカードを繰り返し使用した結果、彼の身体は「自分の全てを差し出す」という魔力回路を先取りするための条件のせいで、「英霊エミヤ」へと置換されつつある。
この置換は、「自分自身の全てを差し出す」事とクラスカードに使われている「置換魔術」がかみ合わさったために起きた事故で、エインズワーズにとっては予想外の出来事。
力を行使するたびに彼の『起源』は錬鉄の英雄と同じ色に塗りつぶされていく。最終的には意識や記憶すらも錬鉄の英雄と全く同じ存在になる可能性が示されている。現在の彼の体がアーチャーを彷彿とさせる色とのまだら模様になっているのは、これが原因(すでに体への置換が部分的に始まっている)。
現在は身体の置換が進んだことでクラスカード無し(つまり本人の能力)で投影魔術や無限の剣製を使用できるようになった。アーサー王の鞘が一切関わっていないに彼の起源が「剣」で固有結界を使えるのもこのため。
原作同様、固有結界の発動・維持にかかる魔力は本人では賄えないため余所から供給してもらう必要があり、他の士郎やエミヤとは違い完全に体が特化しているわけでもないため使用するだけでも体(主に魔術回路)に大きな負担がかかる。
アンジェリカとの再戦時に無限の剣製が使用できなかったのも、前回の固有結界を発動したことによる魔術回路へのダメージが回復していなかったことが原因。
ちなみに聖杯戦争前の能力でわかるのは、強化魔術を使用できたということぐらいで詳細は不明である(一応、一度だけとはいえアサシンの攻撃を防いでいるためそれなりの練度はあったようである)。
夢幻召喚時のデザインは、エミヤの他にリミテッド/ゼロオーバーの士郎もモチーフとなっている。
また切嗣の影響か銃や手榴弾などの近代兵器も取り扱うことができる。
関連イラスト
関連タグ
衛宮士郎 ジュリアン・エインズワース 美遊・エーデルフェルト 間桐桜(プリズマ☆イリヤ) 言峰綺礼(プリズマ☆イリヤ) クロエ・フォン・アインツベルン アンジェリカ・エインズワース
アーチャー(Fate/staynight) 無限の剣製 起源弾
※以下、更なるネタバレ |
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イリヤの言いつけを守り衛宮邸で待機していた美遊兄だったが、
戦況は悪化し世界が真っ黒な泥に包まれつつあり、凛からは退避するよう言われる。
しかし彼は
「………君たちだけで逃げてくれ 俺はここ(衛宮邸)を離れる訳にはいかない」
と拒否し室内へと戻る。
複雑な表情をしているため、とある「誰か」を待っていたようだが…?
「………待っていたよ桜 きっと来ると思っていたよ」
「ここはお前が心臓(こころ)を無くした場所だから」
改変された世界線では衛宮邸に間桐桜が強襲。
しかし美遊兄は彼女が来る事を予想していたのか、
自前の弓を既に用意し、彼女めがけて射抜く。
もう二度と戦わないつもりではあったが、
「悪い 嘘ついた」と凛ルヴィア達に謝罪しつつも、再び戦場へ出向く。
「でもこれだけは譲れなくてさ」
「後輩の始末をつける それが俺の最後の仕事だから」
こうして彼の最後の戦いが始まろうとしていた…