概要
北朝鮮から他国に脱出すること。
これを行う者は脱北者と呼ばれる。
主な脱出先は、国境を接している韓国や中華人民共和国が主だが、海を渡って日本やヨーロッパに渡る者もいる。
しかし脱北は不正出国・不正入国であるためハードルが高く、失敗すると国境の警備兵に射殺されたり、仮に脱出できても北朝鮮に強制送還される例がある。
特に南北対立の激しかったころの韓国では、スパイと疑われて拷問にかけられたり殺されたりした。
脱北の理由は、食糧難や生活苦、政治体制への不満が主である。
その性質上、正確な脱北者の人数は把握できていない。
脱北者の苦悩
脱北と聞くと、恐怖政治が蔓延る北朝鮮から脱出し晴れて亡命先での自由な暮らしが手に入るというプラスなイメージを抱いている人はいるだろうが、実態は決してそう生易しいものではない。
主要な脱北先である韓国は脱北者に対して自国の社会に馴染めるよう専用の教育施設や住居、給付金を提供するなど、一応の措置を取ってはいるが、名目上未だに北朝鮮とは対立関係にあるために韓国国民の中には脱北者に対して良くない感情を抱いている人は少なくなく、脱北者が差別の被害に遭うなど不当な扱いを受けることもある。例えば、まず韓国は世界屈指の学歴社会と称される程まともな生活を送るには大学進学が必須とされている故に、相応の年齢を過ぎた脱北者はまともな就職先に在り付くことができず、職を得ても大概は低賃金且つ長時間労働のブラック企業である。また同じ朝鮮語であっても、北朝鮮と韓国は標準語が異なるために、脱北者が自身の出自を伏せても北朝鮮特有の訛りで結局は感付かれてしまうオチである。
こうした背景から、脱北者は韓国社会に上手く馴染むことができず、結局北朝鮮へ出戻りしてしまう事例も少なくない。そもそも北朝鮮の社会主義体制に慣れ切った脱北者が韓国の資本主義体制に適応するのはそう容易いことではないのである。
また中国を介して脱北する場合、専門のブローカーの手助けで亡命することが主な手段だが、そのブローカーによってそのまま中国の地で脱北者が身売りに出される被害も多々ある。更に中国は国内で脱北者を発見した場合は北朝鮮に返す条約を北朝鮮と結んでいるために、上記のように脱北者が中国国内で中国軍に発見された場合北朝鮮に強制送還されてしまう。
その他、そもそも脱北は北朝鮮に於いて国家反逆罪にあたる重罪であり、脱北の成功失敗問わず脱北者の一族や、脱北者を取り逃してしまった兵士らとその上官は問答無用で処刑されることになる。
これらのことから、脱北は当事者にとって命懸けの行動であり、成功したとしてもそこに待ち受けているのは北朝鮮以上に厳しいとも言える現実であるため、決してメリットばかりではないのである。
しかし脱北者の中には、そうした厳しい現状に耐えながら北朝鮮の人権問題改善や朝鮮半島の南北統一といった活動に身を投じる人もいるため、結局はその人次第といったところだろう。
参考
北朝鮮から韓国入りした人は3万人超え。脱北者ってその後どうなるの?