解説
日本においては主に『北朝鮮による日本人拉致問題』のことであり、この呼称で呼ばれることが多い。
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の工作員が、他国民を密かに北朝鮮へ拉致した事件を受け、拉致被害者の親族や探す者、所属国が北朝鮮政府に対し情報を提供、最終的には拉致被害者の生きて帰国を、求めている問題である。交渉に関連した諸問題を指す場合もある。
日本以外でも多くの国で拉致を実行しており、ワシントン北朝鮮人権委員会の報告書によれば、タイ、マレーシア、シンガポール、中国、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、ルーマニア、シリア、レバノン、ギニアなどといった世界14ヶ国から拉致を行っていることが明らかとなっており、アメリカからも被害者が出ているとされ、報告書では18万人が拉致されたと結論付けられているが、20万人を超えるとの報告もされているという。
日本における問題
北朝鮮は、長年事件への関与を否定してきたが、2002年に日本の小泉純一郎総理と北朝鮮の金正日総書記による平壌で行われた日朝首脳会談では、日本人の拉致を認め謝罪、再発の防止を約束した。しかし、このことに対する賠償や拉致被害者の帰国などは行われていない。
日本政府が認定した拉致事案は12件、拉致被害者は17人であり、このうちの13人(男性6人、女性7人)について、北朝鮮政府側は拉致を公式に認めており、5人が日本に帰国しているが、残り12人については「8人死亡、4人は入境せず」と主張しており、日本政府は「全員が生存しているとの前提で対処する」との立場をとっている。
しかし、2016年2月にミサイル(デポドン)発射に成功した影響で特別捜査を中止・解散した。その為か、各国から批判が起きている。詳細はこちら
日本政府が認定した拉致被害者(この内太字の5人は小泉政権の時に帰国)
- 濱本富貴惠
- 地村保志
- 蓮池薫
- 奥土祐木子
- 曽我ひとみ
- 久米裕
- 横田めぐみ
- 田口八重子
- 市川修一
- 増元るみ子
- 曽我ミヨシ
- 松木薫
- 石岡亨
- 有本恵子
- 原敕晁
- 田中実
- 松本京子
あくまでも日本政府が認定している被害者のみであり、実際は100人以上にのぼる拉致被害者がいるとされる。
拉致問題の現状
北朝鮮との交渉は難航しており、上記の5名以外の安否確認はおろか帰国の目途もまったくたっていないのが現状であり、最優先課題としていたはずの安倍政権でもまったく進展は見られなかった。
関係者の高齢化も進み、2020年6月5日には拉致被害者家族連絡会の代表であった横田滋さんが87歳で死去。娘である横田めぐみさんとの再会は、ついに果たすことができなかった。
拉致に対する世間の関心の薄さ、世界情勢の変化などもあり、日本政府も当初に比べて本腰になっていないことが事件解決の難航に拍車をかけているとも言える。