萬田銀次郎
まんだぎんじろう
物語の主人公である、"自称”「裏金屋」(本人いわく闇金とは違うらしく、一緒にすると怒る)。
「年中無休24時間営業の萬田金融」を標榜している通り、いつ何時でも、どんな金額でも、客の頼みとあらば必ず資金を調達して貸し付ける、ミナミの住人にとって心強い味方。
と同時に、手段を選ばない「鬼の取り立て」を行うことで知られ、相手が何者であろうと、貸した金は10円だろうが地の果てまでも必ず取り立てる。ヤクザですら彼の借金を踏み倒した者はいないと言われており、ミナミの鬼、もしくはミナミの帝王と呼ばれて恐れられている。
裏の金融業者ではあるが暴力団組員ではなく堅気。
だが紆余曲折経て、関西屈指の勢力を持つ沢木組の組長と五分ともいわれるほどの懇意な関係を築いているほか、そのほかの暴力団にも幾度となく金を融通して貸しを作っているため、下手な暴力団よりも強大な武力を保持している。ミナミで彼に刃物を向ける行為は、途端に周囲のヤクザが一斉に集まってきて「今こそ萬田はんに恩を返す時や」「ワシこいつ切り殺して刑務所行ったりますわ」と襲い掛かってくる位にはタブーである。例えば、単行本5巻「整理屋vs銀次郎」において萬田が敵の整理屋子飼いのチンピラに絡まれた際には、それなりの地位にあるヤクザが3人やって来てチンピラ連中をどうやって恩返しの為に殺すかでモメた末話し合いになった末にチンピラがビビって逃げた程(のちに彼らは半殺しにされた)。
一方、裏社会の住人ではあるが、トラブルに対してはあくまで法律に則って解決策を導き出すのがほとんど。彼が一から十までイリーガルな手段を取り続けるエピソードは、むしろ非常にまれである。
六法全書の丸暗記にはじまり、金融や不動産についての各種法制度や判例についても上述の長老たちからみっちり叩き込まれており、弁護士顔負けの優れた頭脳を大きな武器としている。
作品を象徴する名台詞とも言える利率「トイチ(10日で1割の違法な金利)」は彼なりにはじき出した理論「生かさず、殺さず」に基づいた数値であり、過去にこれの何倍もの暴利を取っていた同業者に「甘い」といわれたことがある。
表面的には陽気で愛想の良い兄ちゃんだが、一皮むけば裏社会の人間らしい冷徹さと厳格さに満ちた一面が姿を見せる。
いつ何時も損得勘定をしており、債務者の活かし方から、たまたま昼食に立ち寄った店でのトラブルに至るまで、身の回りで起こるあらゆることを大小関係なくお金につなげる、よく言えばちゃっかりした、悪く言えば非常に貪欲な性格をしている。
そして、身一つでミナミの街を金貸しとして生き抜いているだけあって並大抵ではない度胸を持っており、刃物や銃を向けられたぐらいでは眉一つ動かさないほど肝が据わっているほか、必要とあればヤクザや宗教団体はおろか、弁護士や大手銀行、果ては国相手にも牙を剥く。
しかし、鬼と呼ばれる割になんだかんだ人情深いところがあり、債務者が直面したトラブルの解決、もとい「元は自分が得るはずだったゼニを他に取られた」の建前で、「ゼニは取れるところから取る」と言うポリシーから協力することが多い。この取り立ての際に過大な利益が出た場合には、債務者にその分を還元するのが恒例である。
債務者からはよく誤解されるが、返済が滞ると即座にタコ部屋ないし心臓も含めた臓器を売り飛ばされる、女性の場合は風俗に売られると思われがちだが、あくまでもそれらは他に返済の目処が無い場合の最終手段であり、銀次郎自身も現金で返してくれる方が有難いとしている事から、債務者から事情を聞いた上で別の解決策を示したり、銀次郎自身が交渉の場に出向いて結果的に債務者を救済するケースが多い。
また、銀次郎が取り立てるのはあくまでも貸し付けた金に対してだけであり、取り立てのための交通費といった経費は基本的に請求しない。
例を挙げれば、ある債務者を追ってバンコクまで赴いた事があり、その債務者が現地のマフィアと一悶着起こしていた為に返済の目処が立っていなかった事から、マフィアと癒着していた現地の警察組織に日本円換算で100万円もの賄賂を渡し、警察組織にマフィアを壊滅させたにもかかわらず、自身の顔を守るための必要経費として、借金に上乗せする事は一切しなかった。
とは言え悪質な債務者や、詐欺師などの犯罪者の場合は「迷惑料」や「被害者への賠償金」といった形で取り立てるケースはある。
殆どの場合、単に取り立てるよりもその方が結果的に実入りがいいから……という損得勘定が根本の理由であるが、飲み仲間が悪徳不動産業者に嵌められて自殺した際には「これは損得抜きの戦いや」と明言し、どんな出費も厭わずに復讐戦を挑んだこともある。
他にも、債権者が失踪したのを受けてその同棲相手の女性を風俗に沈めようとしたものの、彼女と債権者が出会ってまだ三日と経っていない仲だったことを聞いて「いくら何でも会って三日の女を売れるかい」「わしは女衒師やないど」とさすがに踏みとどまってしまうなど、他の闇金漫画の主人公と比べるとかなり良識的な面が見られるのが、彼が慕われるところとも言える。
もともとは貧しいながらも平和な家庭の生まれだったのだが、幼少期に実父が大阪五輪を巡って騙された末に自殺し、実母もとある理由から同じく自殺してしまったことで身寄りを喪い、貧困層の集まる地区へ堕ち延びた末に、長老らに礼儀作法や金融知識などを叩き込まれながら成長して現在の立場にまで成り上がったという、壮絶な過去を持つ。
前述の自殺した飲み仲間にも、平凡からかけ離れた人生を歩む銀次郎に羨望の眼差しを向けられていたが、銀次郎自身は「ワシかって平凡な人生を歩みたかった」と、今の身分を決して望むべくしたものでは無いことを述懐している。
鬼と化してしまった今でも、土の付いたジャガイモを渡された際には「おやつ代わりにオカンがジャガイモを蒸してくれた時の匂いがする」とつい思いを馳せるなど、両親の思い出は忘れていない様子。
- 坂上竜一
銀次郎の舎弟。もともとはチンピラだったが、兄貴分が銀次郎に頭が上がらない様子を見て、金の力を思い知り、彼のようになりたいとして半ば押しかけで弟子入り。以降、彼に付き従い、右腕として活動している。
まだまだ修行中の未熟な若者。金貸しとしての知識や技術は師匠に遠く及ばず、「兄貴、こらどういうことでっしゃろか!?」と彼が訊き、銀次郎がそれに答えるという形で劇中の解説シーンを担う、いわばワトソン君ポジション。勝手に「ミナミの狼」を自称しているが、誰にも呼んでもらえない、
しかしただのコメディ担当ではなく、むしろかなり器用な男で、銀次郎の指示を受ければ情報収集から潜入調査、偵察、裏工作まで何でもこなす。なんだかんだ銀次郎からの信頼は厚く、本気で惚れた女性・有林のために銀次郎の金に手を付けてしまうという大罪を犯しても、最終的に許されている。
金貸しの素質では黒崎千里に劣る、というのが銀次郎の評価だったのだが、結局、その後から現在に至るまで、右腕として最も長く活躍しているのは彼である。
- 沢木大樹(Vシネマ版では沢木英樹)
日本最大の広域指定暴力団・浜口組の直系組織、黒沢組の若頭であるヤクザ。銀次郎の昔からの知り合いで、「銀ちゃん」「沢木はん」と呼び合う仲であり、正式な盃は交わしていないもののほぼ五分の間柄。定期的に儲け話を提供する代わりに、いざという時には武力を提供してもらうというケツモチのような関係である。
昔気質のヤクザらしいヤクザだが、普段は非常に気さくでユーモラスであるうえ、酔うとキス魔になる、子分を引き連れて遊園地を満喫するなど変わったところが多い。とはいえやはりヤクザなところはきちんとヤクザであり、銀次郎も「確かにいい人やがそれ以前にヤクザ」と割り切り、あくまで一線を引いた付き合いをしている。
- 竹井葉子
内縁の妻。高級クラブのホステスで、ミナミでも一二を争うと言われる美貌の持ち主。
かつてギャンブルにハマっていた時期があり、銀次郎とは客として出会ったが、自身の色香に全く惑わされずに苛烈な取り立てをする彼の姿に惚れこんでしまい、現在は借金を完済したうえで交際している。
……という設定だったが、原作の超初期に登場して以来現在に至るまで再登場しておらず、なかったことにされている可能性が高い。映像作品も、OVA以外には全く登場していない。
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