定義
まず西洋の範囲については、インドより西方の地域を指す場合とアラビア半島より西側(ヨーロッパ)を指す場合があり、
本来の意味では地域によって変わるものの、東アジアを基準とした場合であれば前者が概ね正しい。
しかしネットで用いられる西洋剣(及び西洋刀剣)の西洋は、前者の意味合いで使われる事が多く、ヨーロッパのみを指していることが多いのだが、範囲が曖昧である。
形状
西洋剣・西洋刀剣といえば、左右対称で真っ直ぐな両刃の刀身を持つモノ…おおざっぱに表現すれば十字架の形をした中世の長剣が代表的であり、これを想像される場合が多いと思われる。これは西洋に区分される多くの地域ではキリスト教を信仰しており、キリスト教のシンボルが十字架だったからこれになぞらえたといわれる。もちろん、ファルシオンやカトラスのような片刃の刀剣類も存在した。しかし、後述のサーベルや一部の両手持ち型を除いて、大型ナイフもしくは大鉈とみなされ、格式は低かった。中世において「刀剣」とは貴族(騎士)や族長のような偉い人たちが腰に帯びる長剣のみを指す場合が多かった。
これらファルシオンなどの刀剣は、いうなれば「刀剣だが刀剣ではない」刃物ともいえる。中世における歩兵用の刀剣は(全てがそうではないが)、だいたいこんな扱いである。(実際、鉈や作業用ナイフとしても使われており、実際日用品を武器化したものもある。)安価で作りやすかったため、下級兵士に好まれた。
しかし、西洋刀剣の西洋は先述した通り、さまざまな国や土地を包括する言葉であるので、これら以外にも多種多様な形状のタイプが存在する。
具体例としては、サーベルがある。サーベルは中世半ばにハンガリー周辺(東欧)で生まれた騎兵用の刀剣であり、たびたび侵攻してくるアジア系民族の影響から、刀身は基本的に片刃でカーブが付いている。このアジア系民族は軽装騎兵を重用しており、サーベルは重装騎兵より、軽装備の相手を攻撃するのに向いていた。中世の頃は東欧でしか用いられなかったが、近代になるとヨーロッパ各地で使われるようになった。
(ちなみに東欧より西方、つまり西ヨーロッパでは、一般てきには騎士と呼ばれる重装騎兵を重視した。べつに鎧が特別発展したからではなく、軽装騎兵の運用を軽視したからである。また、西方においては騎兵はある意味高貴な戦士の象徴的な面があり、実用上以外の理由からも、その装備も贅を尽くした重装にするのが常識だった。この重装騎兵は戦場で手柄より勇敢さを示すことを重視し、数的主力だった軽装歩兵を無視してでも、より強敵である重装騎兵と白兵戦を繰り広げることを好んだ。すこしでも、臆病なところを見せれば社会的な死につながりかねなかったからである。
軽装歩兵達は敵味方問わず、戦力的に期待出来ない場合が多かったが、脅威となる場合であっても基本的にスルーした。)
ほかの例として、古代スペインで生まれたファルカタがある。この刀剣はククリナイフに似た形状をし、鎌のようにカーブの内側に刃がある。スペイン(+ポルトガル)のある場所をイベリア半島と呼ばれたので、イベリアの刀剣と言うことでイベリアン・グラディウスとも呼ばれた。(グラディウスはラテン語で刀剣の意。)
主に古代ローマの敵対勢力であったカルタゴが用いたほか、ごく短期間の間ローマ軍も使用した。
構造(特に記載がなければ両刃の長剣の場合である。)
取っ手
だいたい刀身及びナカゴ・鍔・柄・柄頭(以下ポメル)からなっている場合が多い。柄はナカゴに棒状の鍔と柄となる木製の部品をナカゴに通すのだが、この木製の部品は日本刀の柄とは違いナカゴより短くナカゴがはみ出るようになっている。そのはみ出た部分をポメルと呼ばれる部品を取り付けて柄がナカゴから抜けないようにした。
このポメルは重い金属の錘であり、単にナカゴに柄を固定する部品ではなく、滑り止めや刀剣の重心を手元に近づけることで長大で重い剣を扱いやすくする効果がある。さらに敵と取っ組み合いになった時に殴り付ける武器にもなった。(敵に切りつけた際に敵に与える打撃力も上がった。)
刀であるファルシオンなどは、日用の刃物的な面もあり、鉈と同じくナカゴに木の部品をサンドウィッチし鋲止めすることが多く、鍔や柄はシンプルで飾りの類を作ることはあまりなかった。
刀身
刀身は基本的に鍛造製であり、鋳造は青銅器時代を除けば鉄製武具との相性は良くなかったためほとんど用いられなかった。刀身の製造には高級品には模様鍛接と呼ばれる手法が取られた。これは硬質化した鉄の棒とそうでない鉄の棒をねじり合わせて一体化させすことで刀身を頑丈にする製法だった。(もっとも「刀剣」自体が長い期間、先祖代々使いまわすほどの高級品だった。)
断面は両刃の場合、冶金技術が低かった頃は扁平な六角形である。また(後世と比較し)肉厚にすることが多かったため軽量化のため刀身の平の中央部に樋と呼ばれる溝を掘ることもあった。
1100年代から徐々に冶金技術が向上し、1300年代半ばぐらいになると、最高級の鎧が鎖帷子からプレートアーマーに進化、これにあわせ刀身の断面も菱形になっていく。全体的な輪郭は前の時代と比し切っ先は鋭くなり、長大化し全体的に二等辺三角形に近くなる。
刃は全く付いてない場合と部分的についてる場合があったが、地域や個人の好みで変わったといわれる。