概要
魔剣とは、何かしらの不思議な力を宿した刀剣のことである。
基本的には人を惹きつける不思議な魔力や使用すると特殊な効果を発揮する刀剣であり、特に人を危うい道へと誘う邪悪な力を持つ刀剣を指して「魔剣」と呼ぶことが多い。
対比として、神聖な力を宿した刀剣である「聖剣」がしばしば引き合いに出される。
魔剣の定義
基本的に以下のようなものを魔剣と指す場合が多い。
- 人を魅惑したり、正気を失わせる
- 呪いや魔法がかかっている
- 凄まじい切れ味を誇る
- 使うと特殊な効果がある
- なにかしらの特別な素材でできている
etc…
特に1.と2.の特徴をもつものを魔剣とする場合が多いが、明確に区別する際に必要な条件は、その剣がなんらかの効果(伝説や俗信でも可)を有し、なおかつ「神などの加護や祝福を受けているかどうか」である。この祝福を受けていない(=聖なるものでない)ものは総じて魔剣と定義されている。
『魔剣=邪悪』…?
「魔剣」はその言葉の響きから邪悪な存在に思われがちである。事実、北欧神話に登場する魔剣ダーインスレイヴは凄まじい切れ味を持つ名剣である一方、一度抜かれると血を見るまで止まらず、持ち主に破滅をもたらすという呪いがかかっている。同じく北欧神話に登場する魔剣ティルフィングも、持ち主の願いを三度まで叶えるが最後には持ち主を呪い殺すという魔法がかかっている。
その一方で、もともとは神の手で造られた北欧神話に登場する剣グラム(別称・バルムンク、ノートゥングとも)は、神剣とされておかしくない出自にもかかわらず魔剣扱いされることがある。またケルト神話に登場する魔剣カラドボルグも、凄まじい威力を持つことを除けばこれといって呪いのようなものはない。
つまり魔剣とは「魔法の剣」であって、「悪魔の剣」ではない(悪魔の剣とする場合、「邪剣」と呼ぶことがある)。魔剣に分類されている武器に正邪の区別はなく、単に上記にあるように祝福を受けているかどうかが問題なのである。
代表的な魔剣
ファンタジーに登場する多くの魔剣はケルト神話や北欧神話出身のものが多い。
- グラム
- 北欧神話の英雄・シグルズの愛剣。凄まじい切れ味を誇り、魔竜ファフニールの鱗をも斬り裂いてみせた。
- バルムンク
- ドイツの英雄・ジークフリートの持つ名剣。柄には青い宝玉が埋め込まれていたという。起源を同じくするグラムと同様に竜殺しを成し遂げジークフリートの戦いを支え続けた正に名剣だが、物語の中では製造したニーベルンゲン一族から最後に所有したクリームヒルトまでの全員が死んでいるというかなりの魔剣。
- ダーインスレイヴ
- 「ダインスレイヴ」「ダインスレイフ」とも呼ばれる。北欧神話の登場人物・デンマーク王ホグニの所有物。ダーインの遺産という意味であり凄まじい切れ味を持つ名剣である一方で一度抜かれると血を見るまで止まらず、斬れば外すことはなく、つけられた傷は癒えないと言う性質を持つ。フレイヤの陰謀によって持ち主であるホグニ王はヘジンと言う名の王と永遠に殺し合う羽目となる。
- ティルフィング
- レーヴァテイン
- 北欧神話に登場する邪神ロキによって作り上げられた武器。神話中では名前に言及されるのみで正確な形状については不明であり、剣とも杖とも、矢とも棍棒とも解釈される。炎の国(ムスピスヘイム)の王・スルトの妻であるシンモラが保管しており、ヴィゾーヴニルという雄鶏を唯一殺せる武器だと言われている。
- フラガラッハ
- カラドボルグ
- クラウ・ソラス
- クォデネンツ(サモショーク)
そのほかにもケルト神話やアーサー王伝説(カリバーン、アロンダイト)など、魔剣は多数存在する。
創作における魔剣
- 暗黒の魔剣ダーク・ブレード
- 『バトルスピリッツソードアイズ』の物語のカギを握る12本の聖剣の一本。闇の赤きソードブレイヴとして謳われ、物語中盤において主人公の手に渡り、使用され、数多くの勝利を持たらした。黒い刀身に赤い返り血を浴びたかのようなフランベルジュ的な曲線的な刃、それを掴まんとする悪魔の左手が柄となっている。
- シャルトス、ウィスタリアス、キルスレス
- 『サモンナイト3』に登場する魔剣。普段は物理的に存在せず、使い手の意思で、もしくは使い手が危機に陥った際に発現する。その際に使い手は白い長髪に蒼白の肌、剣と同じ色の瞳という姿と化して、背後に茨の冠のような光の輪が現れる。
- システム的には戦闘中のコマンド、あるいは戦闘不能時に自動的に発動(+全回復で復活)し、能力を強化するうえに、暴走召喚(召喚石を破壊する危険がある代わりに、召喚術を強化して放つ)もできるようになる。
- しかし、使い手の意思により発現する性質上、その力は使い手の精神力に依存しており、使い手が魔剣の力を疑えば、途端になまくら以下の性能になってしまう。
- 関連する小説版等では「フォイアルディア」、「バルバリーア」、「ヴェルディグリオン」といった新たな魔剣が登場している。
- 邪剣ソウルエッジ
- 同名の格闘ゲーム『ソウルエッジ』とその続編『ソウルキャリバー』に登場する魔剣、というか邪剣。対となる霊剣ソウルキャリバーも魔剣に当てはまる。
- 『ソード・ワールド2.0』における魔剣
- ラクシア世界の生物の創造主である「始まりの剣」ルミエル、イグニス、カルディアは、それを手に取った人型生物(人族と蛮族)を神にするほどの力を持つ。「始まりの剣」の複製である魔剣(剣でない武器でも「魔剣」と呼ぶ)には様々な物があるが、所持者がいない状態では新たな持ち主を選定するために迷宮を作り上げる事がある(強力な物ではほぼ確実に。普通に店売りしているレベルでも可能性は0ではない)。
- 邪聖剣ネクロマンサー
- ドラゴン殺し
- 日本のダークファンタジー漫画の大作『ベルセルク』を象徴する無骨な大剣。後天的に魔剣へと変質した稀有な例で、元はガッツの馴染みの鍛冶師・ゴドーが当時の領主に「竜をも殺せる(荘厳で美麗な)剣を作れ」と命じられるも、貴族趣味に辟易していたゴドーが意趣返しに「竜をも殺せる(ほどに巨大で頑丈な)剣」として鍛えたもの。“蝕”から生き延びたガッツがゴドーの蔵に死蔵されていたこの剣を見つけ、以降はガッツの武器として振るわれる。何十何百という魔性を斬り伏せ続けた結果、剣自体が斬った魔性の怨念で闇の力を帯びており、生半可な退魔用の武器では及ばないほどの威力を示す。幽界(かくりよ)の深淵『クリフォト』で出現したゴッド・ハンドの一人・スランの顕現体を(本体の片鱗程度の体とはいえ)一撃でぶち抜き、屠り去っている。
- 魔剣リベリオン
- 魔剣カオス
- アリスソフトの看板ゲーム『ランスシリーズ』に登場する魔剣。主人公ランスの振るう意思を持つ剣であり、ランスシリーズ世界の魔人・魔王の持つ「無敵結界」を中和する特性を持つ。規格外の威力を誇るが、真価を発揮するには魔族への憎悪かエロへの情熱を燃やす必要がある。対魔族用の最強武器の一つである一方、持ち主の精神力が弱ければ持ち主を魔に染めてしまう副作用がある。その出自にはある秘密が隠されている。
- 七殺天凌
- ブレイズオブカオス
- 不死斬り
- ベリアロク
- 魔剣(ダンまち・名称不定)
- 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する魔剣。作中では回数制限がついているが、強力な魔法を放つ事ができる武器として登場している(使いきると砕け散る)。形状と効果はものによってまちまちであり、使用者は数多い。ヴェルフ・クロッゾはそれらを作り出せる鍛冶師であることが劇中で語られている。
ファンタジーにおける魔剣の役割
基本的には悪役の武器として、ときには主人公サイドにおけるキーアイテムともされる。RPGなどでは特殊効果を持ったレアアイテムとして扱われる場合が多い。また、魔剣そのものが主人公の作品(『魔剣X』)も存在する。
東洋風の世界観を持つ作品(ファンタジーに限らず、時代劇等も含む)においては、「習得に尋常ではない修錬や、何かしらの代償を要する剣技」「(作中における)一般的な剣術武術の常道を外れた、異質な挙動で相手の虚を突く剣技」等を『魔剣』と呼ぶ事がある。その場合、これまで挙げたような「それ自体が魔性を有する刀剣」は『妖刀』と呼ばれる事が多い。