概要
科学・工学・数学などに関わる計算向けに設計された電卓。理工系以外にも不動産や商業会計といった文系の分野でもよく使われているが、簿記や税理士、会計士などの試験では関数電卓の持ち込みは認められていない。
どこまでが普通の電卓で、どこから関数電卓かというのは特に定義がないが、初期の関数電卓が「電子計算尺」とも呼ばれていたことから、昔で言うところの「計算尺を代替できる機能を有する電卓」、つまり対数と三角関数が計算できる電卓が関数電卓と呼べる一つの目安と言える。ルートキーのみを有する電卓は普通の電卓に分類されるのが一般的である。
国産初の関数電卓は1972年にカシオから発売された卓上型のfx-1である。表示部はニキシー管で価格は325,000円だった。2年後にはポケット型のfx-10が24,800円で発売され2年で大きさは1/6、価格は1/13になった。
世界的には数式通り入力方式を採用するTI(テキサス・インスツルメンツ)と、RPN入力方式を採用するHP(ヒューレット・パッカード)が関数電卓の二大メーカーで、どちらが優れているかがしばし議論の対象となる。なお世界で最も売れた関数電卓は1976年にTIから発売されたTI-30($24.95 / 8,500円)と言われている。発売から7年間で1500万台を売り上げた。
現在ではスマートフォンのアプリで代替できることから過去に比べると活躍の幅が狭まったが、教育用として一定の需要はある。関数電卓の持ち込みが許されている試験もあるほか、一部の工事現場では手袋をして計算機を操作しないといけないので、関数電卓が重宝されているという(タッチパネルが使える手袋もあるが、素手に比べると反応性は劣るため)。なお関数電卓の普及により淘汰されたのは計算尺である。
一部の機種は高級言語でのプログラミング機能があり、「プログラム電卓」という。これが発展したのがポケットコンピュータであるが、ノートパソコン、そしてスマートフォンの普及で廃れた。
ポケコンが過去のものになった現在は関数電卓の高機能化が進んでおり、複雑な数式もそのまま画面表示できるようになった(ただし、方程式の入力には制限があり、決められた形に変形して入力しなければならない)。中にはカラー液晶画面やタッチパネルをそなえたものもある。グラフ描画機能などを持つ「グラフ電卓」などと呼ばれる機種も登場している。
主な機能
- 整数、小数、分数の四則演算(加減乗除)
- 対数を用いた演算(自然対数と常用対数)
- 計算の優先順位を指定するためのカッコの使用
- 根号を用いた計算(通常の電卓では平方根のみ使用可能なものが多い)
- 円周率πを用いた計算
- 微分、積分の計算
- ベクトルの計算
- 行列の計算
- 三角関数を用いた計算
- 複素数(実数、虚数)を用いた計算
- 2進数・8進数・10進数・16進数の相互変換
など。