略称:ポケコン
概要
1980年代を中心に広く使われた小型コンピューター。電卓と比べて一回りから二回りほど大きいハンディサイズで、電卓の「ポケットカリキュレータ」に倣って「ポケットコンピュータ」と呼ばれた。安価なことから若者の趣味的プログラミングに使われたほか、関数電卓の代わりとしても使われた。
BASICなどの高水準プログラミング言語を用いてユーザーが自らプログラムを組む事ができるように設計されている。ただし当時の技術の関係上、表示機能や記憶容量は非常に限定されていた(そもそも当時はデスクトップであるPC-8801でさえ640×200ドット、メモリ64Kbだったので…)。
オプションとして今で言うドッキングステーション(データレコーダとプリンターを内蔵)が存在する機種も。
1990年代にはハンドヘルドやラップトップの大画面化・軽量化・高性能化(名称もノートパソコンに)が進み、大規模なプログラム作成に適さないポケコンの活用範囲は工業高校の実習用や工事現場での構造計算用程度に狭められていく。
ポケコンとほぼ同サイズではるかに多機能・高機能なスマートフォンが普及した2010年代には完全にその役割を終え(ポケコンを再現するアプリもある)、シャープのPC-G850VSを最後にすべてのポケコンが製造中止となった。
類似するものには関数電卓というものがある。こちらはその名の通り関数計算機能を強化した電卓だが、高機能なものはポケコンのようなプログラミングもでき、かつてのポケコンの需要を取り込んだ面もある。新機種の開発も続けられており、タッチパネルを搭載したものやカラー表示機能をもつものなどもある。逆にポケコンに関数入力キーを併設して関数電卓と2in1にしたようなモデルもあった。
代表的な機種
SHARP
- PC-1211 - BASIC言語を搭載した世界初のポケコン。
- PC-1500 - 同社のフラッグシップモデルだが、ポケコンとしてはデカい(単3電池使用)
- PC-1245 - 『プラレス3四郎』(普段はPC-8801を使用)にも登場した小型機(ボタン電池使用)
- PC-1350 - 4桁表示(縦32ドット)で(白黒だが)絵を描く事も可能。当然デカい。
CASIO
- FX-702P - 同社でBASIC言語を搭載した初のポケコン。PC-1211の対抗機種となった。
- PB-100 - 下記参照。
PB-100
1982年8月発売。カシオのお家芸「価格破壊」を行ったポケコン。
当時としては驚異の14,800円と言う最安値(※)で、「コンピューターの勉強ができて関数電卓の代わりにもなる」と言って親にねだれるギリギリの価格。技術評論社が編集した200ページにわたる入門書『パソコン必勝法』(下のイラストの女の子が持っている本)も付属して至れり尽くせりであった。
ある時期の工業高校出身者は実習用として(後継機の)PB-110やPB-200を買わされた記憶があるだろう。『遊COM』という名前で日清焼そばU.F.O.の懸賞品にもされた。
翌年の春、シャープもPC-1245というポケコンを17,800円で発売して対抗した。
(※)当時はホビーパソコンの代名詞であるパピコンことPC-6001が89,800円、一番安いポケコンのシャープPC-1210で29,800円していた時代である。と言ってもPB-100はメモリが0.5KB(拡張で1.5KB)しかないのだが… 後にカシオ自身が29,800円の価格破壊MSX「PV-7」を発売するが、こちらも拡張しない限りメモリは8KBしかない。
余談
- 漫画家のすがやみつるは、睡眠不足で目ヤニが固まって目が開かなくなるほどパソコン(MZ-80K)に没頭したことから、妻にパソコンを没収されてしまうが、それでも隠れてコンピュータを使うのにポケコンを買ったという逸話が残っている。
- かつての北朝鮮の工作船には、ハイテク機器として日本製のポケコンが積まれていた。
関連動画
伊武雅刀を起用したPB-100のCM