食わず女房
くわずにょうぼう
昔々、あるところにまだ未婚(たいていはケチな人)の男が住んでいた。
ある日のこと、「飯を食わずに働く嫁が欲しい」とつぶやく。
すると、若い女性が嫁にしてくれと頼み、「私は飯を食べません」といったため了承する。
確かに飯を食わずにせっせと働く女だな…と男は思っていた。
だが、妙に米の減りが激しいことに気付き出かけると嘘をついて天井に身を潜め観察をすることにした
嫁が帰ってきたためさらに気配を殺して観察すると…
すると嫁は米俵を何個も持ってきて釜に入れ、ご飯を炊き始めた。
そしてそれをおむすび(おにぎり)にしていた。ここまでは良かったが髪を広げ始め、それを見た男は恐ろしくなった。なんと穴のようなでかい口が頭についているではないか。
嫁はその穴へポイポイと放り込み食べ終わるとまた隠して平静になった。
「化け物だったのか…」と思いつつ気づかれないように降りて戻ったふりをした。
そして、離縁してくれと頼んだところ、見たと感ずいた嫁は本来の姿を現し男を連れ去ってしまう。
しかし、何とか逃げた男は菖蒲の中に隠れ、化け物はあきらめて去っていった。
というのがたいていの内容である。差異はあるが「食わない」 「二つ目の口」 「本来は人外」は共通している模様。
様々な地域で語り継がれてきた昔話であるため、いくつものパターンがある。主なものとしては
- 嫁が一人で大量におにぎりを食べていたのではなく、妖怪の仲間や子供に食べさせるために米を盗んでいたパターン
- 食べ過ぎで嫁が寝込んでしまい、男が介抱するふりをしながら嫁の食べた物の名前を口にしていくというパターン
- 男が桶職人だったため男を騙して桶に閉じ込め、住処へ持ち帰ろうとするが木の枝に捕まるなどで桶から離れ、逃げるパターン
など。
菖蒲はその香りや見た目の鋭さから妖を退ける、妖を溶かしてしまうと考えられ、実際に妖を溶かしてしまう終わり方も伝わっている。
端午の節句の菖蒲湯の起源となったとされる(終盤は5月(皐月)か6月(水無月)なのだろうか?)。
西日本に多い蜘蛛バージョン(嫁の正体が蜘蛛の場合もあれば、蜘蛛に変身する能力を持つ別の妖怪の場合もある)の話では正体を知られたと思った女は仲間に「今夜あいつを殺す」と仲間の蜘蛛にいっていたがそれを盗聴されており、逆に殺されてしまったという話もある。
ここから、「夜の蜘蛛は親に似ていても殺せ」という言葉が生まれたという。(別説もある)
化け物が化けたものではなく、正真正銘の妖怪に「二口女」がいる。
この妖怪は元は人間の女だったが子供(義の場合が多いが実の時もある)を殺した。
するとある日、後頭部に大けが(斧でのけがが有名か)を負ってしまい、その傷が死んだ子供に取りつかれて口のようになったというもの。その口は食べ物を食わせなければ酷く痛んだり、子供殺しの罪を懺悔したりするという。
要するに元人間が妖怪になる話であり、妖怪が人間に化ける食わず女房とは真逆になっている。
三枚のお札・・・こちらも正体が山姥だったり、こっそり見てしまったり
何かの力で助かったりするなど共通点が多い。
見るなのタブー・・・見るなとの忠告はされておらず自分から突き止めようとしたパターン。
アフリカの妖怪・・・タンザニアの民話に「もの食わぬ女房」というものがあるが、こちらの正体は隠れて料理を注文していた大食い女である(とはいえ一度に200皿も食べる化け物であるが)。そのため夫は破産した。
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食わず女房ー蛇女房型
(1)後半の闘争モチーフを欠き、正体の露見で終わることも多いです。笑い話の「大食い女房」はこれにつながります。(2)「魚女房」「蛙女房」その他の異類女房のタイプの発端に、モチーフ1が用いられることがあります。このタイプの人気を裏書きしています。(3)蛇はしばしば「山姥」や「鬼」になります。98,800文字pixiv小説作品