古き女神の時はここに終わりをつげ、我ら魔族の
新たな時代が始まる。この、魔王も神をも超えた存在、
黒の貴公子の名の元に!フハハハ…
解説
CV:近藤隆
風の王国ローラントの北に位置するダークキャッスルの主である魔界の王子。
容姿端麗だが冷酷非情な青年であり、献身的に仕えた美獣の最期を知るなり「使えないヤツ」「あんな女の一人や二人は捨て駒」と吐き捨てている。
それどころか主人公たちの方が有能だとして平気な顔で勧誘して来る。
境遇を知っていた美獣は深く同情しており、その心が救われる事を信じて黒の貴公子に献身的に仕えていたが、結局、闇に閉ざされた心を開くことはできなかったという(リメイク版におけるホークアイは、「美獣もまた愛を知らなかった」と述べている)。
作中の動向
全編共通
元々は光の城と呼ばれる城塞国家の王子だったが、「国を滅ぼすという予言された運命の王子」として生を受けたため、生後間もなく幽閉されてしまう。
心が絶望と闇に染まったところ、その資質を見抜いた魔王に勧誘されて魔界の後継者『黒の貴公子』として配下となった。そして魔王から授かった魔界の力で祖国を滅ぼしたことで予言を現実のものにしてしまった。
その後、光の城をダークキャッスルと変貌させ、魔界の拠点としたが、その心が晴れることはなかった。
マナの聖域への扉を開くために、失われた闇のマナストーンを自らの命と引き換えに魔界から現世へと召喚し、死亡する。
その後、自身を蘇生させるために、美獣と邪眼の伯爵を聖域に侵攻させ、マナの剣を手に入れる計画を進める。
ホークアイかリース以外が主人公の場合
別の敵対勢力に敗れ、死体を消去された上に魂を永遠の闇へ封じ込められてしまう。
もはやマナの剣でも復活が叶わなくなり、姿を見せる前に舞台から退場する。
ホークアイかリースが主人公の場合
マナの剣の力で復活を果たしたのち、自らに力を授けた魔王を殺し、名実ともに魔界の支配者になる。
それだけでは飽き足らず、神獣の力を全て取り込んだ“マナの剣”を砕き、その力を我が物とする。
しかし間もなく、マナの女神による最後の抵抗で苦しみだし、急ぎ女神を倒すために聖域へと入り、マナの樹を切り倒す。
一足遅れて駆けつけた主人公たちに女神の死を伝え、地上を魔界へと作り変えて魔界千年王国を建造し、その統治者である“魔界と人間界と聖域を統べる3界の王”とならんと目論み、過去の忌まわしい思い出に彩られた現在の肉体を捨て、リースの弟のエリオットに肉体を奪い、新世界において不要な存在である主人公たちを血祭りにあげるために真の姿を現し、最後の決戦を挑む。
しかし、借り物の力では主人公たちの心にある『希望』というマナの剣を折ることはできず、敗北を喫する。千年王国は築かれることすらなく滅びることとなった。
余談
彼の過去を見てもわかるように、生まれはリースの弟であるエリオットと似た境遇を持つ(エリオットも王子だが生まれると同時に母を死なせているので「忌み子」だった)。
しかし、エリオットには愛情を注いでくれる家族や家臣達が大勢おり純真に育っていたが、黒の貴公子は美獣が誰からも愛されなかったと明言されていたため、絶望を心に秘めながら成長した事が、明暗を分けることになった。
そんな黒の貴公子が次代の肉体に選んだのは、家族の愛を受けて育った王子だった。
選んだのがたまたまエリオットだったのか、それとも実現しなかった可能性に想いを馳せていたのかは分からない。
ただし、リースが邪眼の伯爵に弟を返す様に迫っても「黒の貴公子様が彼を必要としている」と発言し、黒の貴公子はエリオットを「同じ王子でも私と違って生まれついての王子らしいからな。大切に育てられた事だろう」と自身の境遇と比較した含みを語っている。
そのため、幸福な王子だったからこそエリオットを自身の次代の肉体に選んだのは間違いないと思われる。
リースやホークアイの奮戦で黒の貴公子は倒され、エリオットもローラントに帰還する事が出来たが、同時にエリオットには『私利私欲が動機で大勢の家臣を無駄死にさせる結果を招いた王子』と言う生涯に渡って、下手をするとローラント王国が存続する限り消えない罪を負わせる結末になってしまった。
そもそも、家臣も国民も外敵を防ぎ、国内の秩序を守護する存在として国王を頂いているので、幼いとは言え第一王子が外敵に騙されて侵略に利用されたと言うのは大問題である。
姉や助かった主要家臣達に見捨てられていない、と言う点は救いでは有るが、戦死者遺族に対する贖罪と補償は永く付いて回る。
ローラント王国自体、歴史が浅く、フォルセナやアルテナ程強力な王権が無い分、与党勢力の強化や臣民の支持率に気を配らなければならない国体であるだけ尚更である。
黒の貴公子はエリオットを幸福な王子から一生ものの贖罪を背負った王子に落としてしまった訳だが、同時にナバールの占領政策が拙過ぎて美獣が撤退した途端にパロの市民の怒りが爆発した、即ちローラント王国時代の方がマシだったと認識させて復古政権の支持率を上げる結果も招いており、エリオットの経歴の傷を浅くした面も無くはない。
恩人である魔王を裏切ったり、仕えていた美獣を使えないヤツと吐き捨てるなど冷酷非道な面が強調されているが、一方で我が身を犠牲にして闇のマナストーンを呼び出すという行為をしている。
この手の悪役は部下や罪もない人間を斬り捨てるのがお約束なのだが、そんなことはせず自分が犠牲になることを選んでいる。
復活できる方法があるとはいえ、それは美獣や邪眼の伯爵が裏切らないことが前提である。
「自分がいなければ魔界千年王国の夢は成就しない」という自信からだったのか、それとも美獣なら裏切らないという確信があったのか。今となっては分からない。
あるいは復讐を果たした末に、自分にはもう何も残っていないことを自覚した黒の貴公子は死に場所を求めていたため、死した自分をわざわざ復活させた美獣には恩義どころか恨みを持っていたのかも知れない。
聖剣伝説 HEROES of MANAで過去が明かされたホークアイとの類似点も強調されるようになった(ホークアイもまたある事情から家族の顔を知らず、正体を隠した親族の手で育てられているため「家族の愛」を知らなかった)。
裏設定として聖剣伝説4に登場するストラウドは黒の貴公子の前世というのが存在しており、意識したかどうかは定かではないが、担当声優も同じとなっている。