複数の用例があるが、Pixivにおいてはイギリス国鉄(当時)の高速列車(High Speed Train)計画に関するイラストがほとんどであるため本項目ではこれについて説明する。
概要
戦後、蒸気機関車で成功しすぎたのが原因となって斜陽のイギリス国鉄は必死にアメリカやドイツ、フランスの技術に食いつく努力をしていた。ただし、成功と言っても、蒸気機関車のカタログ性能は素晴らしいが実用面に劣るため、財政や人的資源を近代化に回せず技術面や運用に制約を生じさせ、蒸気機関車を効率的に使えないどころか、乗員の技量に依存する旧態依然とした体制を引きずっていた。そのような状況下においても動力近代化を推し進めていたが、性能が不安定な機関車が多く残念な結果になっていた。
そして1964年、そんなイギリス国鉄に衝撃が走る。
敗戦によって焼け野原になったはずの東の変態紳士国家で、東海道新幹線が開業したのである。
先進国として、戦勝国として、そして鉄道発祥の国として、弟子筋である日本に負けているままと言う訳にはいかない。
そこで、既存の路線で運転できて新幹線を超えられる超先進的な高速列車、APTの開発を始めるが……
その結果は、お察しください。
しかしイギリスはそれと平行して、別の高速列車計画も進めていた。
めっさ簡単に言えば「電化区間が短いうえにあってもほとんどが第3軌条で高速運転に不向きというのなら、超強力なディーゼル機関車と超軽い客車で専用編成を組んで突っ走らせてやれば高速鉄道ができるんじゃね?」という発想の元開発された。
この計画では、APTの失敗原因となった実績の不足している技術要素を使わず、極力従来の技術の延長線上のものが使われた。
1976年、これを具現化した「インターシティ125」がデビュー。
大出力エンジンを搭載した43形ディーゼル機関車によって、無煙(この場合の「煙」とは蒸気機関車の排煙を指す)かつ非電化での200km/h営業運行を世界で始めて達成した。
専用客車マーク3形は、フルモノコック構造として軽量化が図られた。
が、長尺の鉄道車両ではフルモノコック車には強度的な問題が付きまとい、イギリスで鉄道事故が起きると死傷者が多くなる要因のひとつになっている(日本では今でも、新幹線以下殆どの車両が、台枠の上に構体を載せる旧来の設計手法が取られている。しかし、こうした設計が強靭なのは新潟県中越沖地震で走行中に脱線した200系の客室が原形をとどめていたことで証明される)。
1988年には機関車を91形電気機関車に変更し、客車も新型のマーク4形と制御客車とした「インターシティ225」が登場している。
ただし、イギリスの鉄道事情の財政的な条件の悪さから、非電化路線・第三軌条路線が多く残存しているため、インターシティ225は東海岸本線系統の拡充・増発のみで新製が終了し、インターシティ125の置き換えはほとんど進まなかった。
その後
イギリス国鉄が分割民営化された後もほとんどの車両が継承され、経年に21世紀序盤に置き換えが計画されたが…
- フランスやイタリアやドイツの車両を入れると、何故か不具合が発生する。
- 日本は、気動車がガラパゴス進化したため、HSTと技術形態が違いすぎる。
- 具体的に言うと、世界的には鉄道用長距離・高速内燃動力車は電気式が主流なのだが、日本は何をトチ狂ったのか本来ローカル用向けとされた液体式を高速幹線用にもぶち込み、さらに電車並の性能を目指してしまった。さすが鉄道と海軍と自動車は英国の直弟子の国。
- アメリカ? ハッ
このためイギリスの鉄道会社は、「イギリスの栄光 HSTの野郎を 末永く大切にこき使いましょう」計画を発動。
機関車のエンジンを換装、更にマーク3形客車は、車内Wi-Fiスポットや座席サービスコンセントなどまで備えた魔改造を施し、運用につかせたのであった。
その後、日本の日立製作所製の架空電車線・電気式ディーゼル併用のクラス800が登場して置き換えが始まるものの、肝心のエンジンがコマツ製ではなくドイツのMTU製であることからまた何かしらトラブルが出るんじゃないかと言われていたが、クラス800及びそのエンジン出力増強仕様であるクラス802の諸問題が解決してからは世代交代は順調に進み、2019年春にロンドンとイングランド南西部を結ぶ路線を運航していたグレートウェスタン鉄道から、同年冬にイングランド東海岸を通りスコットランドへと向かう路線であるロンドン・ノース・イースタン鉄道から惜しまれながらも引退した。特に、ロンドン・ノース・イースタン鉄道で走っていたロンドン~エディンバラ間はHSTが最初に走った路線だったため、引退の際にそれまでの紅白の塗装から登場当時の青と黄色とグレーの国鉄塗装に戻される等、大々的にセレモニーが行われた。他の路線はまだ残ってはいるが、いずれの路線も近い将来クラス800及びその派生型等に置き換えられる予定である。
一方で、グレートウェスタン鉄道所属のHSTの中には客車が8両から4、5両に減らされイングランド西部の末端区間の路線を担当する編成や、同じく客車が4、5両になりスコットランドに転属しそこで都市間輸送を担う編成も現れている。これらの編成はそれまでの手動ドアをバリアフリーに対応した電動ドアに取り替える改造を施されており、これからも長きに渡って使われるものと思われる。
さらに、ロンドン・ノース・イースタン鉄道の編成の中にはイングランド中央部を走る機器や座席が古い他のHSTを置き換えるという、まるでどっかの島国の青い超特急みたいなことになる編成もある(尤も、その路線もクラス800の派生型の導入を予定していて、このHSTはあくまで繋ぎである)。
ともあれ、HSTがグレートブリテン島から完全に姿を消すのは遠い未来になりそうだ。
なお、一部は廃車後にメキシコやナイジェリアへ譲渡され、海外で第二の人生を送るものも現れている。後者ではスペイン製のタルゴ客車を牽引する姿が目撃されるなど、意外な活躍を見せている模様。