概要
カプコンが開発したゲームエンジンの一種。2017年の『バイオハザード7 レジデント イービル』を皮切りに、同社の一部作品で使用されている。
経緯
それまでカプコンは15年に渡り「MT Framework」を使用してきたが、運用が長くなるにつれて各チームによってエンジンコードのカスタム化が進み、データの互換性や移植性が喪われる状態にあった。
特にエンジンコード上の問題で『大幅な新機能の追加や仕様変更が(特に開発後半になるほど)困難』という性質があった。例えば試作工程と量産工程が重なるような追加DLCを前提とした開発計画において多大な労力を要するものであった。
そこで、「フォトリアルなグラフィックエンジンと説得力の高い世界観をイメージさせること」を達成しつつ、開発環境をスマートにする内製エンジンの開発に乗り出した。
統合整備計画めいた話であるが、結果的には成功し、バイオ7は本エンジンの初陣を飾ることとなった。
特徴
- ロゴは『月に手を伸ばす手』である。これは不可能への挑戦を意味する「Reach for the moon」を意味するものである。バイオハザードシリーズの海外タイトル「Resident Evil」の頭文字と揃ったのは偶然とのこと。
- 「MT Framework」が階層型(上位階層のデータに触りにくい)エンジンだったのが、「REエンジン」ではモジュール型(個別追加可能)になっているため、開発後半からでも追加要素を盛り込みやすい。
- 開発環境とテスト環境が同一エンジン上で分離しており、テスト環境がクラッシュしても開発が継続できる。
- 非常に高い描写能力を持ち、PC版『バイオハザードRE:2』はベンチマークソフト(性能テスト)として用いられるほどで、当時の最高級ゲーミングPCでも限界まで画質を引き出せないほど。一方で、フルHD60fps程度でプレイする分には意外とスペックを必要とせず、動作も安定していることでも知られる。これがエンジンの特性によるものか、製作スタッフの最適化の手腕が優れているためかは不明。
- 2018年発売の『モンスターハンター:ワールド』は旧来のエンジンであったが、同作で初出のモンスターや同等クラスのディテールの造形を『モンスターハンターライズ』にて登場させることに成功している。後方互換性の優秀さを感じ取れる部分であるといえる。
- Nintendo Switchにも対応
本ゲームエンジン採用の作品は、初期はクラウドバージョン(クラウド(NAS)サーバー経由のゲームソフト)として発売していたため、Switch単体ではこのゲームエンジンは動作しないのだろうかと思われたが、帰ってきた魔界村やMHRise(ともに2021年発売)、ゴーストトリックのHDリマスター版(2023年)を発売できているとして、Switch単体でも動作は可能であるとしっかり事実の証明がなされている。
とはいえバイオハザード7以降、アセットやコードの数が大幅に増えてきたことから効率的な管理の仕組みが必要になったこと、ゲームに応じたより詳細なカスタマイズ性が求められるようになったこと、海外の外注先でも使われるようになり、多言語に対応した文書が必要になったこと、市販エンジンでの開発経験のある技術者を採用するようになり、市販エンジン並みの使い勝手やカスタマイズ性が求められるようになったことなどから、REエンジンの「次」にあたる、「REXエンジン」(RE neXt)の開発が行われているとのこと。こちらは全面的な作り直しではなく、REエンジンに新しい技術を導入していくとのこと。