概要
アイテム番号:SCP-058-JP
オブジェクトクラス:Keter
SCP財団日本支部が管理するSCPオブジェクトの一つ。通称「血飲みの嵐」。
見た目は薄い暗赤色に濁った、強い腐敗臭を漂わせる液体。その正体は、人間に対して非常に攻撃的な反応を示す、知性を持った「水」。その総量はなんと87,000㎥(およそ25mプール161個分に相当)とされており、このうち財団が収容できているのは約76%。今なお50mプール8個分以上に相当するSCP-058-JPが「普通の水」を装って自然界に潜伏しており、財団は完全収用を急いでいる。
一般的な水とは違い、自分の意思や目的に応じて固体・液体・気体の形態を変化させ、自発的に動き回る事ができる。どのような形態でも一か所に集まろうとする性質があり、水中や大気中においても拡散せずに「SCP-058-JP」一個体として活動する傾向がある。
何より恐るべきはその攻撃性。人間が一定量以上のSCP-058-JPに触れると、肉体を瞬く間に分解され、着ていた衣類のみを残して跡形も無く「捕食」されてしまう。赤い濁りや腐敗臭はその中に含まれる血液や動物性油脂に由来するものであり、遺伝子検査によって相当数の人間のものである事が確認されている。また、犠牲者の遺体からは大量のSCP-058-JPが新たに発生(犠牲者の体内の水分がほぼそのままSCP-058-JPと化す模様)し、その体積と脅威をますます大きなものとしてしまう。ちなみに血液や油脂以外の物質を取り込んだ場合、何らかのメカニズムにより数時間内に分離して排出する。
この分解作用は人間の肉体に対してのみ有効であるらしく、前述したように衣類などは影響を受けないためその場に残される。つまり全身を完全に覆い尽くす特殊なスーツなどを着込めば、SCP-058-JPから「捕食」はされない。ただしその場合は深海8,000mのそれに匹敵するほどの強烈な水圧に晒され潰されてしまうため、結局取り込まれればただでは済まない。
ただひたすら人間を捕食するだけが能ではなく、時には雹となって物理的に人々の家屋や装備を破壊し、時には霧と化して逃げ惑う人々の視界を奪うなど、水の性質を大いに利用しつつ的確に状況を判断して獲物を狙う生粋の「捕食者」である。派遣された特殊車両を一気に気化する事で上昇気流を生み出し転倒させる、冷却装置などを破壊し、その隙を突いて海へ脱出するなど、収容のために動こうとする財団に対してもあの手この手で抵抗してくる。
まさしく人類の敵である。
唯一の弱点が、強制的に凍らせる事ができれば自発的には動けなくなる事。ただし普通の水とは違い、自分で熱量をコントロールして形態を維持しているため、単純に0℃まで冷却しても凍らない。また同様に普通に加熱して100℃に達しても気体に変化しない。
強制的に形態を変化させようとする場合、通常の水の転移点より±157.4℃以上に冷却/加熱する必要がある。つまり-157.4℃を下回れば凍り、257.4℃まで熱せば水蒸気となる。収容されているSCP-058-JPはこの性質を利用し、常に液体窒素を利用した特殊な冷却タンクに封じ込められ、絶対に0℃以上にならないように徹底的に管理されている。
財団が確認している限り、およそ100年前からその存在と被害が確認されている。雷雨や濃霧、巨大な雹などを伴う大規模な水害や土砂災害に紛れて出現し、時には1000人を遥かに超える死傷者を出したり、町一つを記録や地図上から消去せざるを得なくなったほどの被害を叩き出した事例さえある。
しかし、2000年代のある年、財団は海上を舞台にこの怪物に真っ向勝負を挑み、100人を優に超える犠牲者を出しながらも全体の半分以上のSCP-058-JPの確保に成功。「収容記録058-43-0002」として記録されているこの戦いはSCP-058-JPに対しての最大の戦果として称えられ、犠牲者全員に勲章が与えられた。
現在、未収容のSCP-058-JPはおよそ20,880㎥。行方不明者を伴う水難事故の一部にはこのSCPの関与が確実と見られており、今なおその脅威は続いている。日本支部理事会はSCP-058-JPの早急な確保と対策は急務であると考え、収容計画の拡充や更なる資源の投入が決定されている。また、「一か所に集まろうとする」性質を持つ事から、回収されたSCP-058-JPが現在収容されている収容エリア-8120での出現率が高まると予想されており、これを利用した陽動作戦も審議されているという。