※「zb26」と表記されているが、正しくは「ZB26(大文字)」である。
概要
ブルノ市(チェコ)の造兵廠「チェコスロヴェニスカ・ズブロヨフカ」(Československá Zbrojovka)で開発された。
第一次世界大戦当時の軽機関銃はルイス軽機関銃のようなありものをつなぎ役として採用したものだったりMG08のような重機関銃を軽量化しただけのもの、ショーシャ軽機関銃のように生産性には優れるが動作が不安定なものなどパッとしないものが多かった。
しかし分隊支援火器としての軽機関銃の有用性に気づいた各国は本格的に軽機関銃を開発、チェコスロバキアもそれに乗じて本銃を開発することになった。
オーストリア=ハンガリー帝国から独立して間もないチェコスロバキアにとって国防力の整備と外貨獲得は急務であり、優秀な軽機関銃を開発して国外に輸出する必要があった。チェコはオーストリア=ハンガリー帝国時代から重工業地帯でありその基盤は十分にあった。
弾倉給弾式機関銃で重量は約8.9kgと他国の軽機関銃と比べ若干軽量であった。
作動機構はオープンボルト式のガス圧方式で、同時期の他国の機関銃よりも壊れにくい特徴があった。
1926年にチェコスロバキア軍がVz.26として制式採用している。
バリエーション
本銃は生産数が多く多数のバリエーションが存在する。
- ZB26
初期生産型。チェコスロバキア軍ではvz.26とされた。
- ZB27
銃身および遊底構造の単純化、ガスシステムの改良を行った。
- ZB30
輸出向けに改良したモデル。弾種によってガス圧を調整できるようにレギュレータを追加、銃身開放レバーの誤操作を防ぐためにカバーを追加、レシーバーの左前方に対空照門用のブラケットを追加している。
- vz.52
戦後1952年に開発された7.62mm弾を用いる改良型。
- vz.59
1959年に開発された改良型。ベルト給弾式の汎用機関銃。
海外での使用
他国の同時期の軽機関銃よりも故障しにくいという特徴を始めとする優秀な性能から世界各国の軍隊で使用された。
直接制式化したのはルーマニア、リトアニア、ユーゴスラビアの3ヵ国であり、特にルーマニアとユーゴスラビアでは国産化もされている。
ルーマニア生産型はZB30R、ユーゴスラビア生産型はZB30Jと識別される。
ユーゴスラビアは戦後の崩壊後も民兵の主装備として多数が運用されていたという。
- ドイツ
ドイツではチェコスロバキアの占領後、MG26(t)として運用。生産が進まないMG34の代用として国防軍では1940年頃まで使用されていたが、武装親衛隊は慢性的な兵器不足から大戦後期に至るまで使用していた。
- イギリス
ZB30をベースとしてチェコスロヴェニスカ・ズブロヨフカとエンフィールド社(イングランド)が共同開発したブレン軽機関銃を採用。優れた信頼性から1980年代まで活躍した。
- 中国
中華民国にはZB26およびZB30が大量に輸出され、その後国産化も行われた。
同時期の日本軍が使用していた十一年式軽機関銃よりも威力・射程・信頼性いずれにも勝り、「無故障機関銃」と恐れられたという。
日本軍がこれに対抗できる機関銃を開発するのは九二式重機関銃の完成を待つことになる。
戦後も国共内戦で両陣営で使用されていた。
- 日本
中国でZB26を生産していた工場を占領した日本軍はチ式七粍九軽機関銃として準制式化。弾薬も国産化し運用した。
更に陸軍造兵廠は十一年式軽機関銃の後継として鹵獲した本銃を参考に試製B号軽機関銃を試作した。この銃は南部銃製作所の試製A号軽機関銃に敗れ採用されなかったが、九七式車載重機関銃のもととなった。
戦後自衛隊向けに開発された64式小銃のガス利用式装填機構も本銃のガス圧作動方式を参考にしたといわれている。