概要
グルコース(ブドウ糖)がβ1-4結合で多数つながった生体高分子。
分子式は(C6H10O5)nで表される。これはデンプン(アミロースおよびアミロペクチン)と全く同じだが、結合のしかたが異なる。α1-4結合で螺旋状に結合するアミロース、α1-4とα1-6結合で枝分かれしながら連なるアミロペクチンに対し、セルロースは直線状に結合する。このためセルロースは物理的に丈夫で消化されにくい。
植物とセルロース
セルロースは植物の細胞壁の主成分であり、植物体に豊富に含まれる。地球上で最も存在量の多い有機化合物はグルコースであるが、その多くはセルロースの形態で存在する。
木綿はほぼ純粋なセルロースである。紙は基本的にセルロースが水素結合でシート状になったもの(セルロース以外の分子を多く含んだ紙もある)、木材はセルロースにリグニンが沈着してさらに丈夫になったものである。
動物とセルロース
動物のほとんどはセルロースを合成することができず(例外はホヤ)、自らの体を構成する分子としてセルロースを利用することはない。
またセルラーゼ(セルロースを分解する酵素)を持たないため、ウシなどの草食動物は消化器にセルロース分解能力のある微生物を共生させ発酵産物をエネルギー源としている。シロアリはセルラーゼをコードする遺伝子があるにもかかわらず発現しておらず、木材の消化を共生微生物に頼っている。
人間もセルロースを直接消化することはできないが、グルコマンナンなど他の難消化性多糖類とともに食物繊維とされ、血糖値の調整や整腸作用があることが知られている。
その他
セルロースを硝酸で処理するとニトロセルロースとなり、綿火薬として爆薬に利用された。これを樟脳と混ぜるとセルロイドとなる。
セルロースを苛性ソーダなどのアルカリで溶かすとビスコースとなるが、これを硫酸などで中和して薄いシート状にしたものがセロファン、繊維としたものがレーヨンとなる。セロファンはプラスチックの台頭で駆逐されセロハンテープや医薬品や菓子の包み紙に使われる程度になっていたが、近年は生分解性のある素材として見直されている。