概要
日本各地に現れる災いをもたらす扉を閉める旅をしている「閉じ師」の青年。
長い黒髪をなびかせた美しい容貌をしており、自身の首元には閉じ師の証である不思議な鍵を下げている。
そんな彼は、扉のある廃墟を探すために九州・宮崎県の田舎町を訪れた際に、地元の女子高生である岩戸鈴芽に声をかけ、彼女に廃墟の場所を尋ねている。そうして廃墟にあった扉を閉じることに成功した草太だったが、突如現れた謎の猫・ダイジンの呪いによって椅子の姿に変えられてしまい、自身にかけられた呪いを解くために鈴芽に協力を求めることになる。
人物
容姿
風になびくウェーブがかった長い黒髪と、どこか影を感じさせる鋭く優美な面差しが印象的な、すらりと背の高い美青年。低く柔らかな声音や周囲の空気ごと優しく染めるような綺麗な微笑みなど、彼のまとう雰囲気は俗世から離れた非日常的な美しさを連想させるものとなっている。(小説版、16〜17ページ)
また、彼の大きな体躯は、太く引き締まった両腕をはじめとして生命力にあふれた力強さを秘めており、物語の冒頭で九州を訪れた際には、白いロングシャツと日に焼けたジーンズ、黒いワークブーツという旅人然とした格好に身を包んでいる。
性格
切実な使命感を背負った実直な性格の持ち主で、多少の困難に直面しても懸命に乗り越えようとするたくましい一面も兼ね備えている。
また、弱い者を進んで守ろうとする無償の優しさも随所に見受けることができるものの、その一方で自身のことをいっさい顧みなかったり、たったひとりで何でも抱え込んでしまうような危うさも持ち合わせており、親友の芹澤朋也からは「あいつは自分の扱いが雑なんだよ」と心配を寄せられている。
あわせて、持ち前の優しさゆえの大らかさから隙を見せてしまうことも多く、彼の旅の相棒である鈴芽からもしばしば「草太さんには危機感が足りないと思う」といった不安を抱かれている。(小説版、72ページ、74ページ)
生活環境
東京都の御茶ノ水駅にほど近い、静かな住宅街の一角にあるアパートの一室を借りており、普段はそこを生活の拠点にしている。
八畳ほどの広さがあるメインの部屋には『閉ジ師秘伝ノ抄』や『要石目録』など、先祖代々受け継がれてきた閉じ師にまつわる古い書物が所狭しとあふれており、専門家による研究のための空間というような印象を漂わせている。また、メインの部屋以外の台所や洗面所では、すべての生活用品がきちんと整頓されて収められており、彼の几帳面な性格をうかがい知ることができる。(小説版、247〜248ページ)
草太は家業である閉じ師の仕事を行うかたわら、都内にある大学の教育学部で学ぶ大学4年生でもあり、将来は閉じ師と学校の先生というふたつの仕事を両立させようと考えている。教員になるための4年間の努力は親友の芹澤もしっかりと認めるところとなっており、彼の部屋の一角には古書たちに混じって『教員採用試験・マスター教職教養』『東京都・過去問集』『らくらくマスター・小学校全科』などといった鮮やかな背表紙の参考書がずらりと並べられている。
なお、草太の美貌は彼の近所に暮らす女性たちのあいだでも話題になっており、彼のアパートの大家である絹代やアパートの1階にあるコンビニエンスストアで働くキャロルをはじめとする多くの女性たちが、彼を指して「ほんとにイケメンなのよねえ」「He is sweet and cute!」などとうっとりしている。
その他
- 閉じ師の仕事をしながらも教師を志す理由については、「閉じ師の仕事だけでは食っていけないから」と答えている。
- 自身の寝相についてはすごく悪く、ダイジンの呪いによってすずめの椅子に姿を変えられて以降、就寝時にすごい体勢で寝ているほか、余程のことがない限り起きるのもめっぽう遅い。ただ、劇場での監督への質疑応答の際に、寝相は元は悪くないことが判明しており、単に椅子の姿になっている状態でどう寝るのかがわからなかっただけなのかもしれない。
経歴
由緒ある「閉じ師」の一族に生まれた草太は、自身の祖父である宗像羊朗に育ててもらうなかで、彼から「閉じ師」の技と使命を受け継ぎ、自身の学業と並行しながら全国各地に現れる後ろ戸を閉める旅をする生活を送っていた。
そんなあるとき、草太は九州にある後ろ戸を探すために宮崎県を訪れ、現地の女子高生である鈴芽に道を尋ねながら扉のある廃墟へとたどり着く。廃墟の後ろ戸からはすでに災いが噴き出ており、草太はすぐさま食い止めにかかるものの、その最中に道を尋ねた女子高生である鈴芽がその場に現れ、草太は彼女を危険からかばって左腕に裂傷を負ってしまう。残る片腕だけで扉を閉めなければならなくなった草太は窮地に陥るものの、鈴芽に助けられて辛くも災いを封じ込めることに成功する。
鈴芽の家に招かれ、そこで傷の手当てをされた草太は、そのお礼として彼女に自己紹介をする。しかし、そのような穏やかな時間が流れたのも束の間、草太は突然現れた謎の猫・ダイジンの呪いを受けて子供用の椅子の姿にされてしまい、その姿のままダイジンを追いかけることになる。草太は椅子の姿で人目も気にせずダイジンを追いかけ回し、フェリーの甲板上に追い詰めるものの、あと一歩のところで並走していた警備艇に乗り移られ、ダイジンを取り逃してしまう。
ダイジンの逃げた先がフェリーの到着先と同じであったことを知った草太は、さっそく勇んでダイジンを探しに行こうとするも、先日に人前で椅子の姿で走り回ってしまったことが災いし、SNS上で「#走る椅子」というハッシュタグのもとに話題されていることを知り、一緒についてきた鈴芽に協力を求めることになる。
また、椅子の姿に変えられた当初は体の動かし方がわからず、足をもつれさせて転倒した末にその場でぐるぐると回ってしまうようなことも多々あったものの、鈴芽と旅をするうちに椅子の体が次第に馴染んでいく感覚を味わい、軽さを活かしたスピーディーな跳躍を見せるようになっている。
夢
ダイジンの呪いによって椅子の姿にされてしまった草太は、深い眠りに落ちるなかで孤独な夢を見るようになる。
夢のなかで三本脚の子供椅子に座った人間の姿の草太は、自身が椅子の姿にされてしまったことの意味を悟ると同時に、重力に引かれて下へ下へと落ちていく。常世さえも通り過ぎ、現世とつながるすべてのものから切り離された末に、草太は辺土(リンボ)の波打ち際へとたどり着く。そして、波に打ち上げられた数多の骨と、古びた扉がある以外は何もない世界の果てのような場所で、草太は椅子に座ったままの姿で辺土の地に縫い付けられるように氷に包まれている。
辺土の世界にひとりきりになった草太は、現世に対する未練を諦めるとともに「そういうものか」と自身の定めを受け入れ、果てのない甘やかな無感覚に身を浸そうとする。しかしながら、夢の果てに誰かが自身を呼ぶ声に気がつき、まどろみに浸るなかで「ようやくすべてが消えるのに、なぜ行かせてくれない」というような苛立ちを覚えながら現実の世界へと引き戻されている。(小説版、159ページ、162ページ)
主要キャラクターとの関係
岩戸鈴芽
九州の静かな港町に暮らしている17歳の女子高生。
草太は鈴芽のことを「鈴芽さん」「君」と呼んでおり、対する鈴芽は「草太さん」と呼んでいる。
九州にある後ろ戸を閉じるために宮崎県を訪れていた草太は、扉のある廃墟を探すために現地の女子高生である鈴芽に声をかけ、そののち廃墟で災いと対峙していた際にふたたび彼女と出会ったことをきっかけとして、彼女とともに日本列島を縦断する「戸締まりの旅」をすることになる。
草太は鈴芽と関わった当初、死と隣り合わせである閉じ師の仕事に鈴芽を巻き込まないよう、事あるごとに「君は家に帰るんだ」と強く告げているものの、椅子の姿になった自分自身があまりに無力であることに気づいたり、彼女の持つ強い責任感や熱意に感化されることによって、彼女を対等な相棒として信頼するようになる。
また、草太は旅の始終を通して、鈴芽を安心させようと優しい気遣いを見せているほか、戸締まりを重ねて彼女に信頼を置くようになると、高いテンションで自身に絡んでくる彼女に対してクールにあしらったりツッコミを入れたりするなど、わいわいと賑やかなやりとりを交えている。
ダイジン
草太の前に突然姿を現した、人間の言葉を話す謎の白い猫。
草太はダイジンのことを「ダイジン」「要石」と呼んでおり、対するダイジンは「そうた」「おまえ」と呼んでいる。
草太が鈴芽の家で傷の手当てをしてもらった際に、いつのまにかダイジンが部屋の窓に乗っているのに気づいたのが出会ったきっかけとなっている。草太は当初、鈴芽に可愛がられるダイジンの姿を微笑ましく見守っていたものの、ダイジンの気まぐれのような呪いで椅子の姿にされてしまったことをきっかけに「俺の体に何をした!? お前は何だ!?」と強く問いただすことになる。
草太はダイジンを追いかけるなかで鈴芽の体験談を聞き、ダイジンの正体は鈴芽に引き抜かれた要石なのではないかと推察する。そして、ダイジンを捕らえて要石の姿に戻すことができれば、自身もまた人間の姿に戻れるのではないかという希望もあわせて抱いている。
また、草太はダイジンの自由気ままな足取りに対して「気まぐれは神の本質」と評する一方で、全国各地に開く後ろ戸とともに姿を見せるダイジンには、何か大きな企みがあるのではないかとにらむ様子も見せている。
芹澤朋也
都内の大学に通っている草太の親友。
草太は芹澤のことを「芹澤」と呼んでおり、対する芹澤は「草太」と呼んでいる。
草太にとっての芹澤は、ともに教師を目指す教育学部の学生仲間であるほか、無遠慮にアパートの部屋のドアを叩かれたり、窓が空いているだけで帰宅を察せられてしまうほど親しい友人でもある。草太は芹澤の口調や振る舞いの悪さにやれやれと呆れる一方で、彼の性格の根本にある友達想いな一面もしっかりと認めており、鈴芽にも「悪い奴じゃないよ」と彼の人となりを明かしている。
花と空
神戸のスナックのママとして働く二ノ宮ルミの双子の子供たち。
ルミの車に鈴芽とともに乗って神戸に向かうなかで、後部座席に座る双子たちにスポーツバッグを開けられて発見されたのが関わるきっかけとなっている。草太は当初、双子たちにいじられながらも何の変哲もない子供椅子を装うものの、道中でファストフード店に立ち寄って昼食のハンバーガーを買い、双子のテーブル代わりになった際には、うっかり倒れそうになってしまった紙コップをうまく体勢をとることでしれっと安定させており、双子たちを不思議がらせている。
また、ルミが店の準備をするあいだ、鈴芽が双子たちの子守りを任された際には、双子たちに振り回されて疲れ果てた鈴芽を助けるためにひと肌脱ぎ、双子たちの目の前に立って堂々と闊歩(かっぽ)している。双子たちを喜ばせることに成功した草太は、一緒になってはしゃぐ鈴芽にうっかり「君はだめ!」と返事をして双子たちを驚かせてしまうものの、鈴芽がとっさに思いついた「最新AI搭載の椅子型ロボット」というごまかしに助けられ、双子たちからますます興味を抱かれることになる。
そうして双子たちと一緒に部屋中を転がり回るようにして遊んだ草太は、最終的には彼らに両側からがっしりホールドされながら一緒に添い寝をしている。
宗像羊朗
都内の病院に入院している草太の祖父。
草太は羊朗のことを「じいちゃん」と呼んでおり、対する羊朗は「草太」と呼んでいる。
草太にとっての育ての親であると同時に、彼に「閉じ師」の技と使命を授けた師匠でもある。
東京都内のアパートに戻った草太がふたつ目の要石についての情報を探るなかで、最後の手段として羊朗のもとに聞きにいくことを決意しており、その際に「失望させたくなかったな、こんな姿で」と気を落としたり、東京に帰ってきて真っ先に彼に会いにいくことを考えなかったあたりから、両者のあいだには明るくない事情がある様子がうかがえる。(小説版、182〜183ページ、240ページ)
余談
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