通説
小説家・夏目漱石が英語教師をしていたとき、生徒が " I love you " の一文を「我君を愛す」と訳したのを聞き、「日本人はそんなことを(直接的に)言わない。(直訳ではなく意訳して)月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と言ったとされる逸話から。
解説
漱石の人柄を説明するためによく引き合いに出される、遠回しな告白の言葉であり、「日本人の恋愛観」として俗説日本論にもよく引用されているが、信憑性は低い。
したがって、現時点でこのセリフを「漱石が訳した」とするのは誤り。
そんなわけで、通じなくても漱石を恨まないこと。
世間で周知されているような常識とまでは言えず、都市伝説の域に入る台詞な上、信憑性も謎。場を選ばずに使うとただの痛い人である。
検証
現在発見されている最も古い出典が漱石の死後から数十年後、作家の豊田有恒による1970年代後半の伝聞形式の文章である。
(関連リンク - 「月が綺麗ですね」検証)
ここでは「夏目漱石が、英語の授業のとき、学生たちに、I love you.を訳させた話は、有名です。」とあることから、これが真実ならばどこかの界隈で流布されていた噂と考えられる。
これを吹聴した者の意図を汲むならば、「漱石はロマンチストだから、ストレートに『愛しています』だとか言うのは好きじゃなかった」といったところだろう。もしくは「漱石はひねくれものだから、普通の訳では満点はやれない」ということかもしれない。
また、同じく小説家の二葉亭四迷はロシア文学作品を翻訳した際、腕にキスして抱き寄せるというロマンチックなアプローチに対して女性が " Ваша… " =「yours(あなたに委ねます)」と囁いたシーンを「死んでもいいわ」と訳しており、しばしばこ2つのフレーズはセットで使われる。こちらは明確に"I love you."の訳ではないことに注意。
なお、漱石は「此I love youハ日本ニナキfomulaナリ」というメモを残していたとされ、日本語として訳すにあたって頭を悩ませていた可能性が高い。
関連イラスト
元の逸話以外にも、「単純に月が綺麗な作品」「登場人物の気を惹きたい作品」等にも付けられる。
パロディ・オマージュ
この「月が綺麗ですね」の証拠となる葉書が登場した回がある。もちろんそれ自体はフィクション。
漱石の愛読者である登場人物の永宮幸が、自分に想いを寄せる白崎祐と自分が想いを寄せる深水透子にこの言葉を送った。
博識アイドル「古澤頼子」が本稿の台詞を上記の概要通りの意味で使用した事がある。
第75話にてこの話題に言及している。野崎が「月ネタ出てきたらほぼコレ」と解説している。終盤にて堀が佐倉と同じ話題を話した時に欄外で「実話かはわかんねぇけどな」としている。
ヒロインの1人・中野五月が夜の散歩に上杉風太郎を連れ出した際に無自覚にこう述べたが、風太郎には「勉強をした方がいい」と返された。
関連タグ
月がきれい - タイトルが若干類似している2017年春アニメ。
伊藤ハチ - 漫画家。同名のタイトルの漫画作品を著している。