概要
その名の通り、車体側面に沿って横一列に座席を並べたものである。製造・ランニングコストを低く抑えられることが特徴。
座席間の通路が広いため立席乗車人数を最大に出来て1両あたりの定員数を稼ぐことが可能で、乗降のしやすさはクロスシートに勝る。混雑の激しい路線では着席よりも収容力や乗降のしやすさを優先し、ロングシートを採用することがほとんどである。
主に混雑が激しくなる通勤形電車に採用される形式だが、中には地方路線で使われる例もあり、2ドア・ロングシートでやたら長い「スーパーロングシート」なるものも存在する。
乗客にとっての利点
正面に着席している乗客との距離が離れるという点においては快適であり、車両の幅が狭かった大正時代以前には、一等車や二等車といった上級車両に多く採用されていた。今でも、「着席時などに隣の乗客との接触が多くなるクロスシートを敬遠する」という理由でロングシートを好む乗客もいる。
乗客にとっての欠点
基本的に多くの人と向かい合わせに座ることとなるため、不特定多数が視界に入ること、あるいは不特定多数の視線に晒されることで落ち着けず、クロスシートと比べると長時間の乗車は精神衛生上あまり良くないとされる(一方でクロスシートも「狭い空間で長時間他人と一緒に座る」ことに苦痛を感じる人もいる)。
閑散時や中〜長距離の乗車(都市間連絡や観光目的での利用など)では通常好まれない。とりわけ、駅弁文化などが華々しい日本では、名物駅弁を買てっもロングシートでは周囲の目が気になって食べられないという文化的な弊害も出てくることになる。
また構造上どうしても背もたれが低くなる為、シート自体の座り心地はクロスシートに劣る。
現状
日本では基本的に通勤型車両に使用されているが、製造・ランニングコストの安さもあって701系や静岡地区の211系・313系や熊本地区の815系、最近は長野地区の211系や快速「エアポート」の733系など一部は長距離運用やローカル線にも投入されており、「ツメコミ電車」と大顰蹙を買っている。
国鉄時代でもキハ35系が投入路線の電化によって地方のローカル線に転用されたが、オールロングシートであるため乗客の評判は良くなかった。
そのため、JR四国などは「鉄道は、(他の)鉄道や自家用車・バスを相手に輸送モード間の競争をしている」という理由でオールロングシート車を新造しなくなった。
ただし、クロスシートに見られる閉鎖空間性からくる治安の問題を解決するため有効であるという側面を持っている。クロスシート車に見られた閉鎖空間ゆえの喫煙問題や、窓が開く車両では学生などが窓からカバンを投げ入れて席を取る行為もあり、地域の自治体の要望もあってクロスシート車をロングシート車に改造したり、ロングシート車の新投入例もある。上記の701系などはその一例と思われる。
しかしそれで他の利用客(特に中〜長距離の利用者)がとばっちりを喰らうというのはたまったものではないが。701系は地元住民からクレームが来たこともあってセミクロスシートに改造された例もある。したがって、治安が悪化すると困るのは主に普通の人たちであり、これは鉄道においても例外ではないことがわかる。
また首都圏の中距離列車も例外ではなく、一時期211系などの3扉のオールロングシート車が主流となった時期があったが、中長距離の利用客からの評判は好ましくなかったため、E217系以降の一般形近郊タイプでは編成中のうち数両だけセミクロスシート車が復活している。ただし、扉数は4扉に増やした上での措置であり、乗車定員をロングシート車と同じになるようクロスシートの配置を工夫したものとなっている。しかし新型車両の置き換えで捻出された211系ロングシート車が地方に転属し、不評を買っているという問題も引き起こしている。
また、閑散時にロングシートをベッド代わりにして寝転んでしまうというロングシート特有の治安問題もある。ちょうどこんな感じ。
日本では首都圏など人口の多い地域にて、夜間の空いている列車ではかなりの確率で酔っ払いが寝転んでいるのだが、ロングシートの開放性ゆえに、この状態で混雑すると車内全体のムードが一気に悪化する。
日本国外(特に欧米)では地下鉄や通勤路線でもクロスシート車が主流である場合が多い。逆に言えば、多くの乗客を捌けるロングシート車の多さは、日本国内における鉄道利用人口の多さを象徴するものとも考えられる。
主なロングシート車
国鉄/JR
101系 103系 105系 107系 123系 E127系
キハ35系 キハ37 キハ38 キハ32 キハ54(0番台)
キハ201系 キハ101 キハ120 キハ200系(500・1500番台)