概要
1994年から2008年までに927両が製造され、JR西日本の在来線用車両で最大勢力を誇る車両である。
当初は関西空港へのアクセス列車用に0番台が投入され、1995年より1000番台がJR京都線・JR神戸線(東海道本線・山陽本線)の新快速・快速電車用として投入された。1999年からは大量生産タイプの2000番台・2500番台の増備が続けられ、大阪近郊区間(アーバンネットワーク)エリアにおける主力車両となっている。
2003年には岡山駅~高松駅間の瀬戸大橋線快速「マリンライナー」用として5000番台が投入され、JR四国も同型車を5000系として導入した。2008年には福知山地区向けの5500番台と、車両性能を221系相当に固定した6000番台も登場した。
座席は扉間転換クロスシート、車端部が転換クロスと同等のシートピッチを確保したボックスシートの配置が基本だが、関空アクセス向けは横2列-1列配置だったり、ローカル線向けは車端部がロングシートになっている車両があったりと、運用線区に合わせて異なる仕様となっている。
特筆事項
1000番台
1000番台は阪神・淡路大震災で被災廃車された在来車両の代替、及び路線復旧に伴う逼迫した輸送需要に対する輸送力増強のため、当初の予定よりも試運転期間を削減し、その上で敢えて前倒し投入を行った。このため、車両から発生する電気ノイズで近傍を走行する201系の保護回路を誤作動させて緊急停止させるなどの初期不良や、離線により消灯と空調の停止が頻発し、関西では新聞記事で取り上げられるほどになった。現在はいずれも対策済みであるが、離線は比較的発生しやすい。
本形式に限り、付随車には低重心化のためセパレート式の冷房装置を採用し、一部機器を床下に搭載する。2000番台以降は床面高さ自体を引き下げることで低重心化を図ったため、冷房装置は集約分散式に統一。
また、補助椅子を展開すると背もたれがせり出すようになっている。こちらも2000番台以降では省略。
223系で唯一ビードの入った車体で、車端部にのみ戸袋窓がある。1段下降窓を採用し、茶帯は細くなっている。
0番台・2500番台
0番台は登場時、6両または2両編成であった。1999年に紀州路快速が運行開始することに伴い、5両編成と3両編成に組み替えることとなったのだが、組み替えの際に先頭車が4両不足してしまい、これの補充用として2500番台1次車が4両だけ製造された。
2006年には輸送力増強として、2500番台2次車を5両・3両編成1本ずつ製造し、2500番台の中間車がようやく登場した。
しかし、運用効率の改善を目的として、日根野電車区所属の223系を4両編成に統一することとなり、再び組み替えが行われ、不足分に応じて2500番台3次車が1両単位で製造された。結果、0番台と2500番台との混結編成が大幅に増えてしまい、編成美は崩れてしまった。
車両設備の格差を無くすため、0番台の和式トイレが大型の洋式トイレに改造されている。
客室設備は大型荷物の持ち込みを想定し、2+1列配置のオールクロスシートで、補助椅子はない。0番台は扉間6列、2500番台は扉間5例である。
また、0番台は全ての戸袋部に戸袋窓が存在し、扉間のうち中央部の2枚が1段下降窓という、独自の仕様となっている。
2500番台ではパールブルーの帯を追加。3次車は車体構造の都合から帯が細い。
0番台はライト周りが丸型2灯であり、他番台とは異なる柔らかいデザインになっている。そのため他番台との判別が比較的容易である。(他番台はライト周りが全て角形4灯である)
また一時期に関空快速の運用において指定席車が設定されていたことがある。
5000番台
「マリンライナー」用として投入された車両で、5500番台が登場するまでは223系唯一の貫通型先頭車であった。車体構造の都合で1段下降窓を採用できなかった2000番台と異なり、窓周辺を骨組み工法に限定することで1段下降窓を実現した。この構造は2000番台5次車以降にも反映されている。
頑丈な窓枠が追加されたため、窓枠に干渉しないよう茶帯が細くされ、1000番台と同じ太さになった。
駆動装置にTD継手を採用しているという情報が出回っているが、これは誤りであり、実際はJR四国5000系も含めてWN継手を採用している。
輸送力増強のため、一時期2000番台の中間車を組み込んでいたが、増結されたサハ223形は全車の開閉可能な側窓が内折れ式であったため、全編成で帯幅、窓構造が揃っていなかった。なお、この期間中に5000番台先頭車の事故修理のため、2000番台の先頭車が一時的に編成に組み込まれたことがあった。
JR四国内の線路使用料を相殺する関係上、早朝深夜を除き、JR四国5000系と常に併結する運用を組まれている。
また関西圏の新快速以外で唯一130km/h運転を行う車両でもある。
221系性能
網干総合車両所の223系には、加減速性能を221系と同等にするスイッチが付いている。新快速の130km/h運転開始前は、このスイッチを切り替えることにより、定期列車でも221系との併結運転を行っていた。
2008年頃、網干総合車両所に所属する221系4両編成が、嵯峨野線の113系を置き換えるためにほとんどの車両が転出してしまい、その穴埋めとして223系を221系の運用に回すこととなった。しかし、日常的に221系との併結運用が組まれることと、そのダイヤも221系の性能を基に作成されていることから、スイッチ切り替えの際のトラブルを防止するため、2000番台1次車の一部を221系性能に固定、車番を+4000して6000番台とし、他の223系と区別されることとなった。
外観は前面非常扉と乗務員室扉にオレンジ色の帯が追加され、運転台には「221系性能」と書かれたシールが多数貼られている。
ほぼ同時期、2008年3月に開業するおおさか東線への直通車両を用意するため、当時製造されていた2000番台5次車の一部と6次車を福知山線に転用することになった。当時、福知山線では221系・113系が多数運用されていたので、これらの223系も221系性能化により6000番台に区分された。
剛体架線を採用する東西線内での離線対策として、6000番台化の対象となる編成は、製造当初から電動車にパンタグラフを2基装備している。
だが2011年、東西線北新地駅にホームドアが設置されてしまい、223系は直通運用から外されてしまった。
2012年、再び223系と、新たに225系に221系性能化が行われた。対象となったのは、最終増備車である2000番台7次車。同年のダイヤ改正で、福知山線の113系・221系を完全に置き換えている。
なお、これらの車両は網干総合車両所宮原支所に所属する。
5500番台も221系性能車である。福知山線・山陰本線の113系・115系を置き換えるために2008年8月に登場した。
221系性能となっているのは、定期運用で京都〜園部間の嵯峨野線に直通し、嵯峨野線内では原則として221系と併結運転を行うためである。
近年はJR京都線・神戸線において221系の運用が減少しているためか、221系性能化を解除されて2000番台に復元された編成が登場している。
9000番台
事業用車として9000番台が1両だけ在籍している。2000番台を製造するため試作されたクモハ223-9001号車のこと。詳しくは「U@tech」の記事を参照
走行機器
製造期間が15年に及び、その間に多くの仕様変更がなされている。
共通事項は歯車比が15:98(6.53)であることと、VVVFの制御単位が1C1M(1台の制御器で1台のモータを制御すること)であること。
0番台は、同時期に落成した281系と同一仕様。
GTO素子を用いたVVVFインバータを採用。形式はWPC4形。
主電動機は1時間定格出力が180kwのWMT100B形。台車は円錐積層ゴム式軸箱支持方式。
補助電源装置も含めて、機器は電動車に集約されているが、空気圧縮機は付随車に搭載。
1000番台からはIGBT素子を用いた一体型車両制御装置を採用している。
これは、従来主回路用と補助電源用で完全に別系統であったインバータ装置を、まとめて1台のユニットにしたもので、4台の電動機制御部、1台の補助電源部で構成される。万が一補助電源部が故障した際は、電動機制御部のうち1台を補助電源装置として使用できるバックアップ機能を備える。
1000番台での形式はWPC7形。
機器の小型化により、従来は付随車に搭載していた空気圧縮機を電動車に搭載。完全な電動車集中艤装を実現した。
また、新快速の130km/h運転に備え、台車は681系で採用実績のある軸梁式に変更され、ヨーダンパと軸ダンパ、アンチローリングトーションバーが装備された。主電動機も定格出力の高いWMT102A形(220kw)に変更。
1000番台での特徴として、電動台車のブレーキが両抱き式踏面ブレーキであることが挙げられる。
2000番台1次車と2500番台1次車では、制御装置がWPC10形に変更。運転台からバックアップ機能の操作が可能になった。
2000番台1次車については、主電動機を3台に減らした3000番台、補助電源部と空気圧縮機を省略したモハ222形の設定があるため、制御装置の形態が多様となっている。
空気圧縮機はスクリュー式に変更。レシプロ式の従来型から大幅に静音化。
主電動機はWMT102B形(220kw)。台車も空気ばね位置を下げた新型に変更し、以降の標準となる。
なお、2500番台は台車からアンチローリング装置が省略されている。
2003年に登場した2000番台2次車でも変更点があり、制御装置がWPC13形に変更。東芝・三菱製の装置は純電気ブレーキの使用が可能となったが、日立製は現在も実装されていない。また、WPC10形を搭載する車両のうち、東芝製の装置には制御ソフト更新が実施され、純電気ブレーキが実装された。
3000番台とモハ222形を廃止し、空気圧縮機のみが省略されたモハ223形2100番台を設定。よって、制御装置の形態は全て共通となった。
走行機器と直接関係はないが、2007年に登場した2000番台5次車、2500番台3次車以降の車両は、床材がゴム系の素材に変更され、高速走行時の騒音が大幅に抑制されている。
2008年以降に増備された2000番台6・7次車、5500番台では主電動機をWMT102C形(230kw)に変更。これは、長寿命化のために絶縁を強化したもので、521系に採用されたものである。同時期に編成組み替えが行われていた0番台も、主電動機をWMT102C形に換装している。
余談
モハ223形2000番台と通し番号が組まれていた2100番台(6100番台)だが、車番が2200(現6200)に達してしまい、仕様との整合性を取るためやむなく2301(現6301)から振り直されている。(万が一空気圧縮機を設置した際に、車番を-100すると2100番台=空気圧縮機なしという法則が崩れてしまうため)
体質改善工事
2018年5月より、0番台の体質改善車がお目見えした。基本的な改造メニューは221系・207系と同様だが、何よりも注目を浴びたのはライトであった。
本来ステップ部にあった尾灯は埋め込まれ、ヘッドライトの上半分に323系タイプのLED式前照灯が2灯入り、下半分が新たにLED式の尾灯となったのだ。
大昔に福知山線で活躍していたクハ111-819を思わせる、実にユニークな顔となっている。
仕様の違い
吹田総合車両所日根野支所
編成 | 形式・区分 | 備考 |
---|---|---|
HE401〜HE409 | 0番台 | |
HE410〜HE416 | 0番台・モハ223-2500組込 | 両先頭車は100番台 |
HE417・HE418 | 2500番台1次・サハ223-0組込 | モハ223は3次車 |
HE419・HE420 | 2500番台2次 | HE420のモハ223-2522は3次車 |
HE421〜HE435 | 2500番台3次 | HE433のサハ223-2502は2次車 |
※クモハ223-サハ223-モハ223-クハ222の4両編成。
※2500番台1次車は黒色ガラス、2次車は濃緑色ガラス・グラスファイバー製蛍光灯カバー、3次車は1段下降窓・床材変更・低音ドアチャイム。
網干総合車両所
8両編成
W1〜W4 | 1000番台1次 | |
---|---|---|
W5〜W9 | 1000番台2次 | 東芝・日立製制御装置の仕様変更 |
W10〜W27 | 2000番台1次 | W10は量産先行車、黒色ガラス |
W28〜W38 | 2000番台2・3次 | 緑色ガラス |
W39 | 2000番台4次 | 濃緑色ガラス、GF製蛍光灯カバー |
※2000番台1次車はクモハ223t-サハ223-サハ223-モハ222-サハ223-サハ223-モハ223-クハ222、t付は3000番台。2次車以降では3000番台を廃止、モハ222をモハ223-2100に変更。
※量産先行車はライト周辺が少し盛り上がっており、継ぎ目があるように見える。
4両編成
V1〜V4 | 1000番台1次 | |
---|---|---|
V5 | 1000番台2次 | 東芝・日立製制御装置の仕様変更 |
V6・V7 | 2000番台1次 | 量産先行車 |
V8〜V28 | 2000番台1次 | 黒色ガラス、V22〜V26は現在6000番台 |
V29〜V54 | 2000番台2・3次 | 緑色ガラス |
V55〜V57 | 2000番台4次 | 濃緑色ガラス、GF製蛍光灯カバー |
V58〜V64 | 2000番台5次 | 1段下降窓、床材変更、低音ドアチャイム |
※2000番台1次車はクモハ223t-サハ223-モハ222t-クハ222、t付は3000番台。2次車以降では3000番台を廃止、モハ222をモハ223-2100に変更。
6両編成
J1〜J10 | 2000番台2・3次 | |
---|---|---|
J11・J12 | 2000番台4次 | 濃緑色ガラス、GF製蛍光灯カバー |
J13・J14 | 2000番台5次 | 1段下降窓、床材変更、低音ドアチャイム |
※クモハ223-サハ223-サハ223-モハ223-サハ223-クハ222、モハ223-2100は設定なし。
網干総合車両所宮原支所(全車両が6000番台)
MA01〜MA07 | 2000番台5次 | 製造当初よりWパンタ |
---|---|---|
MA08〜MA11 | 2000番台6次 | 主電動機変更、製造当初よりWパンタ |
MA12〜MA16 | 2000番台5次 | 製造当初よりWパンタ |
MA17〜MA20 | 2000番台6次 | 主電動機変更、製造当初よりWパンタ |
MA21・MA22 | 2000番台7次 | 元V65・V66、車体強化、パンタ1基 |
※MA01〜MA11を川崎重工業が製造し、MA12〜MA20を近畿車輛が製造する、という分け方を行ったため、5次車と6次車が複雑に入り組んでいる。実際はMA08・MA09のみ例外的に近畿車輛製となっている。
※車番は編成番号に従って振られているため、MA08〜MA11はMA12〜MA16よりも番号が若い。
※5次車は2007年度落成分、6次車は2008年度落成分。7次車は2008年8月に落成、近畿車輛製。
福知山電車区
F1〜F9 | 5500番台 | Wパンタ |
---|---|---|
F10〜F16 | 5500番台 | パンタ1基 |
※2000番台7次車と同じく車体強化構造。貫通構造、WMT102C搭載、低音ドアチャイム、整理券発行機・運賃箱・運賃表・自動放送装置を搭載、外観は入口・出口の標識がついており、221系性能でオレンジ帯がある。妻面側の座席はロングシート。
※223系で唯一、トイレが真空吸引式となっている。
岡山電車区
P1〜P7 | 5000番台 | 1段下降窓、貫通構造 |
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※本番台のみ先頭車間転落防止幌が設置されていない。
今後の予定
2019年春以降、223系1000番台を改造して有料新快速を新設する計画がある。かつて運行されていた「関空特快ウイング」指定席車とは異なりリクライニングシートとなり、JR西日本の普通車では初めてとなる全座席コンセントも設置される。
主な運用区間
- 東海道本線、山陽本線 米原-上郡間
- 北陸本線 米原-敦賀間、湖西線
- 赤穂線 相生-播州赤穂間
- 大阪環状線、阪和線、紀勢本線 和歌山-御坊間 ※0番台、2500番台
- 福知山線 ※5500番台、6000番台(近ミハ)
- 山陰本線 京都-城崎温泉間 舞鶴線 ※5500番台のみ
- 瀬戸大橋線 岡山-高松間 ※5000番台のみ
かつてはJR東西線、おおさか東線、関西本線の尼崎-奈良間の直通快速にも使用されていた(現在は通勤型を使用)ほか、JR東海エリアの米原-大垣間にも乗り入れていた。また、6000番台のうち1本は、227系導入を控えた2013年頃に広島地区で試運転を行っていた。