ビートル(beetle)とは、英語で甲虫類、とくにカブトムシを指す名詞。
多くの場合、ドイツのフォルクスワーゲン社の自動車(タイプ1とビートル)を指し、本項ではこれについて記述する。
タイプ1
フェルディナント・ポルシェが設計し、フォルクスワーゲンが製造販売していた乗用車。
正式名称は「タイプ1」。
「ビートル」の名は、その形状がカブトムシを思わせるために自然発生的についた愛称であり、公式の名称ではない。
なお、部分一致で検索すると「ビートルズ」なども引っかかるため、自動車のイラストを探したいときは完全一致で検索するか、「フォルクスワーゲン」などと併せて検索するとよい。
解説
1945年の量産開始から、2003年にメキシコ工場でラインが閉じられるまで、実に2153万台が生産された名車中の名車。生産台数は、単一モデルの自動車として世界最多であり、あのT型フォードすら上回る。おそらく四輪自動車で、今後もこれを破る記録は現れないであろう。オートバイを含めても、これを超える記録はホンダのスーパーカブしかない。
基本的な設計が第二次世界大戦前の1930年代になされたにもかかわらず、イギリスのミニ、フランスのシトロエン2CV、イタリアのフィアット500(2代目)と並ぶ戦後大衆車の代表格として、モータリゼーションに多大な貢献を果たした。
また、第二次世界大戦中のキューベルワーゲンに始まり、1950年代から60年代にかけてワンボックス車のタイプ2、セダン/ワゴンボディのタイプ3、クーペボディを載せたカルマンギア、オフロード車のタイプ181などの多くの派生モデルを生み出した。ポルシェ最初の自社市販モデルとなったポルシェ356も、このビートルの設計を基本としている。
他社に与えた影響としては、VWの兄弟企業であるポルシェの空冷各車種を別にすると、ルノーの4CV、スバル360にタイプ1の面影が色濃い。
モデルライフを通じて、サスペンションの刷新や1.0Lから1.6Lへの大幅な排気量拡大などの改設計はあれど、基本的な設計と外観は初期型から最終製造車まで同じである。これは、タイプ1後継としてVWがポルシェに設計を委託したEA266の開発が1960年代に頓挫したためで、1970年ごろになると前時代的なスペースユーティリティや高速走行時の挙動の不安定さ、ボンネット内の燃料タンクの危険性、空冷エンジンの騒音などが問題視されるようになる。1970年にポルシェの協力を得てフロントサスペンションをストラットに置き換える改設計を行い、操縦安定性は大幅に改善したが、その他の基本的な設計に起因する問題は、そのままであった。
1974年に至り、タイプ1の後継を担う新しい大衆車として「ゴルフ」がようやく成功し、ドイツ本国での生産は1978年で終了することになった。
しかし、それ以降もメキシコで2003年まで製造が継続され、メキシコではタクシーや庶民の足として愛用され、日本などにも輸出された。メキシコ製のタイプ1を俗に「メキシコビートル」略して「メキビー」と呼ぶ。
愛称
本国ドイツでは「Kafer(ケーファー)」と呼ばれた。これはビートルと同じく、ドイツ語でカブトムシを指す単語である。
フランスでの愛称は「Coccinelle(コシネル)」で、テントウムシの意。
イタリアでは「Maggiolino(マジョリーノ)」で、コガネムシの意。
ブラジルでの「Fusca(フスカ)」は、なんとゴキブリという意味である。
最後まで工場が残っていたメキシコでは「Vocho(ボチョ)」と呼ばれていたが、これはスペイン語で虫を表す「Bicho」と「Volkswagen」を合わせた造語だった。
いずれも甲虫のイメージからついた愛称であったが、タイでは、亀を連想したのか「タオ」という名で呼ばれていた。
ビートル
タイプ1はフォルクスワーゲンの象徴たる車種であり、旧式化が著しくなってからも、そのデザインから人気が高かったため、ビートルを名乗る車種(「ビートル」はタイプ1がそう呼ばれるような愛称ではなく正式名)が生産された。
これらはタイプ1とは設計から何から全く違い、後継車種ではないのだが、ザ・ビートルの生産終了時に多くのメディアが「初代から通算して約80年の歴史に幕を下ろした」と紹介された。
ニュービートル
1998年から2010年まで生産された。タイプ1のデザインイメージを採り入れつつ、より丸っこく現代風にデザインされた。
ゴルフのプラットフォームを流用しているため、初代がリアエンジン・リアドライブ(RR)で後輪駆動であったのに対し、こちらはフロントエンジン・フロントドライブ(FF)で前輪駆動となる。
ザ・ビートル
ニュービートルの後継車種として2012年に生産開始。
よりタイプ1に近いシルエットになっている。2019年に製造終了。製造終了時点では後継車種の予定はなく、「ビートル」を名乗る車種の系譜はニュービートルから21年をもって途切れることになった。
関連タグ
:名探偵コナンの主要登場人物で、愛車が黄色いビートルである事でも知られている。少年探偵団(名探偵コナン)をキャンプに連れて行ったり、コナンたちの救援に向かったりするなどして登場頻度は多い。鳥取県のある道の駅に隣接する原作者の記念館前には、原作者の父親が手がけたレプリカ車が展示されており、運転席には博士の人形が「ワシじゃよ」と言わんばかりに乗っている。
:スタジオジブリが制作したアニメ映画版では、街中の一般車としてよく登場する。