『今でもイチョウは大好きですよー!!!』
CV:緒方賢一
概要
主人公・江戸川コナンの協力者であり、コナンの正体である工藤新一の隣の家に暮らす発明家。初登場時52歳で作中誕生日を迎えて53歳となる。
新一が黒の組織の新開発した毒薬によって小学生の姿に幼児化した後に遭遇し、彼の協力者となった。
劇場版では現時点では全作品に出演。そのうち『業火の向日葵』『紺青の拳』の2作だけは全くストーリーの本筋に関わらない脇役になっている。
経歴
両親が東京都内の田舎である奥穂町(オックスフォードが元ネタ)に引っ越したのに伴い、奥穂中学校に進学、卒業。
その後、東都大学工学部博士課程を卒業。
現在は東京都米花市米花区米花町2丁目22番地に自宅兼研究所を構えており、当初は一人暮らしをしていたが、灰原哀を保護して以降は彼女と同居している。
コナンたちの協力者
コナン誕生の立役者
幼くなった新一が最初にその正体を告げ、当初は信じられなかったもののその推理力からその事実を認めた人物。
すなわちコナンの正体が工藤新一であることを最初に知った人物である。
そして新一が幼くなった背景に巨大な犯罪組織の影があることを知り、組織が工藤新一の生存を知れば再び命を狙われ、周囲の人間に危害が及ぶことを考慮してその正体を隠すように助言をした。
幼くなった新一はその助言に従い、幼馴染の毛利蘭に名前を聞かれた際に工藤邸の図書室の本棚の表題からとっさに江戸川コナンと名乗る。
更に蘭の父親・毛利小五郎が探偵事務所を構えていることから組織の情報を入手する必要があると考えた阿笠は、遠い親戚の子であるコナンは両親が事故で入院をしていて暫く預かることになったが独身の自分では手に余るため暫く預かって欲しいと蘭に頼む。
コナンが毛利探偵事務所に居候して以降も様々な発明品でコナンをサポートしている。
灰原哀の保護者
コナンが幼児化して暫くした頃、毒薬「APTX4869」の開発者・宮野志保が組織に反抗し監禁され、自殺目的でAPTX4869を服用し、幼児化してしまう。
志保はAPTX4869の服用者で死亡確認が取れていなかった工藤新一の調査のために二度行われた工藤邸調査に考案者として立ち会っており、最初の調査から一か月後の調査で新一の子供服が無くなっていることと、動物実験の段階で幼児化したマウスが一匹存在していたことから工藤新一が幼児化していることを推測した志保は貴重なサンプルである新一が殺されることを阻止するために死亡確認に書き換えていた。
そして自身も幼児化したことから監禁場所から脱出後、同じ状況にある工藤新一こと江戸川コナンを頼り工藤邸の元へ行くが雨の中で力尽きて倒れている所を阿笠に保護される。
事情を聞かされた阿笠は志保と共に灰原哀という名前を考え、彼女をコナンと同じく帝丹小学校に入学させる。
両親を幼少期に亡くし、姉も組織に殺され天涯孤独となった彼女を親身になって世話をしており、哀もまた命の恩人である阿笠に恩義を抱いている。
秘密の保持者
2024年現在、江戸川コナン、灰原哀、沖矢昴の三人全ての正体や詳しい事情を本人達から聞いた上で完全に知っている唯一の人物。
人物
名前
本名は、阿笠博士(ひろし)だが「博士」という漢字や発明家であることから、殆どの人々から「阿笠博士(はかせ)」、「博士(はかせ)」と呼ばれている。
目暮十三警部などは「阿笠さん」と呼ぶ。
名前の由来は、推理小説家のアガサ・クリスティ。
後述の伯父と伯母の名前が栗介(くりすけ)、定子(ていこ)となっているのはクリスティの捩りとなっている。
北米版での名前はハーシェル・アガサとなっており、Hiroshiのスペルや語感からHerschelの名前が選ばれた模様。
灰原哀の名前の元ネタの一つである私立探偵 V・I・ウォーショースキーの相棒、オーストリア人の女医ロティ・ハーシェルに因む可能性がある。
容姿
丸顔の団子鼻に丸眼鏡、真っ白の口髭に禿げ上がった頭頂に残っている髪もすべて白髪。
この容貌から実年齢以上に老けて見られることが多い。
阿笠自身は「わしは白髪で爺さんのような容貌だがまだ52歳じゃよ」と自称している。
お尻のホクロから毛が一本生えているのは工藤新一と読者(視聴者)しか知らない。
目暮警部と同様に肥満体形であるため、灰原が居候してからは栄養管理の厳しい食事を摂らされている。
少年時代(CV:田中一成)からふっくらした体躯で団子鼻だが、眼鏡をかけていなかった。
十年前、42歳の頃は、まだ髪はフサフサで黒髪だった。
また劇場版『天国へのカウントダウン』では、10年後の62歳の顔を予想できる機械を試したが、現在と変わらない顔だった。
性格
穏やかな性格で幼少期の工藤新一及び毛利蘭に加え、コナンたち少年探偵団たちの面倒を見ていたことからも面倒見が良い温厚で優しい性格。
小学生の時も動物嫌いになってしまった少女のために登下校に付き添い、動物に慣れるように付き添っていたため生来の気質と思われる。
コナン(新一)たち殆どの探偵役や警察官が犯人に対して厳しい態度を取る中、彼は犯人に同情・共感し、反省や再起をうながす言葉や被害者の真意について諭す言葉を贈ったり、血気にはやるコナンや手柄のために無茶をする探偵団のメンバーをたしなめる。
このような人柄からか新一や蘭をはじめとする遥かに歳の離れた友人たちからはそれなりに信頼されており、大人のマナーに欠ける毛利小五郎も阿笠に対しては敬語で話す。
また、コナンや灰原と少年探偵団の三人、吉田歩美・円谷光彦・小嶋元太を遠くへ遊びに連れていくのは大抵、阿笠である。
彼らからも若干あきれられたりバカにされたりと振り回されることも多いが、基本的には面倒見がよく穏やかな性格ゆえに実の祖父同然に慕われ、阿笠本人も子供たちを孫のように可愛がっている。
アニメオリジナル回である第140話「SOS!歩美からのメッセージ」では歩美の家に押し入った強盗犯をコナンが欺く際に咄嗟に阿笠の声で「歩美の祖父」のフリをして電話をかけたの旨を聞いた際は「わしの声を使うのは構わないがお祖父さんの役はないじゃろ」と言いながらも「ああいう孫達がいるのもかわいくていいじゃろうなー」とまんざらでもない態度を見せていたりする。まあコナンには「孫より先に嫁さん見つけろよ…」と呆れられていたが。
また年相応にダジャレが好きなのか彼が出すクイズの回答に子供たちが寒気を覚えるのはお約束である。
愛車は「ビートル」こと「フォルクスワーゲン・タイプ1」でナンバープレートは「新宿 500 ひ 164」。ただよくパンクや故障などのアクシデントを少年探偵団と共に出かけた先で起こし、彼らが事件に巻き込まれるきっかけになる。
親族
両親は米花町で暮らした後に阿笠が小学校を卒業した後に都内の田舎である奥穂町に引っ越したことが言及されている。
後述の伯父と伯母の遺産を阿笠が受け継いでいることから、両親は既に死亡しているものと思われる。
恐らく父の兄に相当するであろう伯父の栗介は博士同様ふくよかな体躯、大富豪で小さい頃から病弱、妹の定子以外に心を許さず、50年前に38歳で他界したとされる。
栗介の妹であり恐らく父の姉に当たる伯母の定子は中々の美人で、11歳年上の兄の栗介の面倒をみる傍ら、別荘の近所の小学校で教師を務めていたが栗介の死後は実家に戻って独身で暮らし、作中の一年前に76歳で亡くなったと言及される。
50年前の二人の姿は二人が過ごした別荘の肖像画で確認できる。(「月と星と太陽の秘密」参照)
また20代半ばの高木渉刑事が彼女がいないと少年探偵団に指摘された際に、同世代と思われる従兄の孫娘、阿笠にとって従甥孫(じゅうせっそん)ないし従姪孫(じゅうてっそん)に相当する女性を紹介しようかと発言している。(「本庁の刑事恋物語」参照)
この従兄が栗介の子供なのか、栗介・定子・阿笠の親以外の兄弟の子供なのか、栗介の兄弟でない方の親(恐らく母親)の甥なのかは不明。
しかし、栗介は人間嫌いであったため栗介に子供がいた可能性は低く、栗介の死後に別荘を相続しているのが博士なので阿笠家の他の兄弟はいないと思われ、母方の従兄である可能性が高い。
交友関係
隣人である小説家の工藤優作とその妻で元女優の工藤有希子とは友人関係にあり、工藤夫婦の一人息子である工藤新一及びその幼馴染の毛利蘭の面倒を時折見ていた。
少年探偵団たちが好きな怪獣映画「ゴメラ」シリーズの生みの親である監督・三上大輔(CV:山野史人)は友人であり、その縁から阿笠は子供たちをゴメラの撮影見学に連れて行っている。(「大怪獣ゴメラ殺人事件」参照)
アニメオリジナルである第937-938話「巨人タロスの必殺拳」では、学生時代の友人である加賀見栄三と彼のスタジオ会社を、一人娘で秘書のしのぶの頼みで手助けしようとする。
学生時代野球をやっていた阿笠は捕手であり、投手だった加賀見の女房役だったため。彼を叱咤激励しつつも真っ向から意見を言い合うという普段温厚な阿笠にしては珍しい一面が見られる。
ちなみに阿笠と加賀見の外見と立ち位置は『鉄腕アトム』のお茶の水博士と天馬博士を連想させるが、実はこのエピソードの脚本を担当した辻真先氏は1965年放送の第1作目の『鉄腕アトム』でも脚本を担当していた。
また灰原哀こと、宮野志保の父・宮野厚司とは過去に発明品の発表会で何度か顔を合わせて面識があり、阿笠は「気さくで感じのいい男」「ワシの発明品も気に入ってくれたようだった」と称した。(「お金で買えない友情」参照)
能力
発明家として
阿笠はいつか自分の発明で大儲けすることが夢としているが、コナンによれば「作る物はガラクタばかりでジリ貧」とのことだが、
豪邸住まいで自動車…それもビートルを所有し、灰原を同居させていることからも、金銭面に困っている様子は見られない。
普段は、発明の特許料やゲームソフトの開発などで生計を立てているようで、美術館の解体式に自作の花火を持ち寄った際には「当美術館が美しい最後を迎えるために、高名な科学者の阿笠博士がおいでになりました」などと紹介されているため、住んでいる米花町や近郊では、そこそこ有名人でもあるようだ。(「本庁の刑事恋物語2」参照)
『ベイカー街の亡霊』においてはアメリカの大手IT企業であるシンドラーカンパニーの依頼を受けて、最新体感ゲーム「コクーン」の製作の最終段階に携わっており、完成披露パーティーでは優作(同ゲームの一部の脚本を担当)と共にVIP扱いされている。そのため国内外の業界人からはそれなりに注目されている様子。
しかし一般人からの認知度は皆無であり、全国的に名の通った科学者という感じの知名度には遠く、本当の意味で彼の発明家としての才能を知っているのはコナンの周囲の知り合い関係くらいのようである。
発明品の凄さが世間一般に浸透すれば世界的に超有名になれるほどのレベルではあるのに、その風変わりでどこか間の抜けた面も多い性格が、発明家として出世できる部分を阻んでいる面は否めない。ただし、それを含めた優しい彼の人柄こそ、慕われやすい彼の魅力でもある。
当の発明品については「阿笠博士の発明品」を参照して頂きたいが、そのほとんどがチートじみた性能を持つコナンへのサポートメカと、実用的な物より遊び心を優先したコンセプトの物のどちらかに分かれている。
特に前者は小学生ゆえ非力なコナンの危機を数えきれないほどに救っており、本当にくだらない発明品や失敗作も多いため普段は呆れているが、科学力を認め頼りにしている部分もある。
発明の性質上デバッグや失敗を積み重ねる行為や阿笠のスタンスを、門外漢のコナンは不成功の多さと捉えている部分もあるのかもしれない。
探偵役
回数は少ないがコナンに何度か探偵役をやらされたこともある。
彼は毛利小五郎や鈴木園子などと違ってコナンの正体を知っているため、時計型麻酔銃で眠らせる必要はなく、コナンが阿笠の後ろに隠れ、変声機の台詞に合わせて口パクという手法を取っている。そのため眠りの小五郎ほど違和感はない。
誰も眠らせる必要がないため、眠りの小五郎のカラクリが露見するリスクを減らせるという大きなメリットがある。その他、トリックの解説に実験が必要な場合はスムーズに作業が進められるというのも利点。
おかげで少年探偵団や目暮十三、横溝参悟などからはそれなりに推理力の高い人物であると認識されているが、意識があるのでコナンの吹き替え推理に「なるほど!」と相槌を打ってしまい、不審がられる凡ミスもある。
アニオリ回でも何度か探偵役を担当した他、劇場版では『水平線上の陰謀』にてそうした姿を見せている。
今の所は原作およびアニメにおいて彼が自力で事件を解決するようなエピソードは存在しないが、
特別編17巻に収録されている「密室の人体爆発事件」では学生時代の科学者の友人が殺害される事件が描かれており、科学的なトリックが用いられた殺人事件の真相を見事解き明かしている。
その他
黒幕説
原作の連載が進み、灰原哀が登場して更に大ボス的な存在として黒の組織と首領(あの方)の設定が登場してくると、読者の間で正体の予想が盛んになり、阿笠博士黒幕説が提唱されるようになっていった。
根拠としては、ミステリーの作劇手法として真犯人は最初から登場済みの可能性が高いだとか、初期に「もし阿笠博士が何かの事件の犯人だったらどう対応する?」と蘭が新一に問いかけていた場面があるとか、ありえないほど科学技術力が高いだとか、あの家を保持する財産を犯罪によって稼いでいるだとかなど様々な理由が挙げられていた。
そして敢えてコナンを野放しにしつつ発明品などでサポートすることで、己の配下たる組織の面々にコナンがどう立ち向かっていくのか観戦して楽しんでいるのではないかなどと予想された。
公式の「あの方」予想企画でも第一位になるなど、しょっぱなからとても怪しいポジションにいたことは確かである。
当時の阿笠説の人気は、「わしじゃよ、新一」といって阿笠が自ら正体を明かす架空のセリフがネタとして流行していたことからもうかがえる。
その後、原作者によって阿笠博士黒幕説は公式に否定され、あの方の正体も作中で判明したため過去の話となった。
とはいえ、コナンが大ヒットして連載期間が延長されずに最初期のプロットで進行していた場合はどうだったのかはわからない。