その他の用法については→浜風。
概要
大阪駅~香住駅・浜坂駅・鳥取駅間をそれぞれ1日1往復ずつ、東海道本線・山陽本線・播但線・山陰本線経由で運行されている。
使用されている車両はキハ189系である。
大都市近郊の特急列車の例に漏れず、この列車も高速道路および高速バスとの競争を迫られており、同じJR内でも大阪からでは「こうのとり(和田山駅~城崎温泉駅間)」・「スーパーはくと(大阪駅~姫路駅間と鳥取駅)」と競合関係にある。
しかも、これら両列車より走行距離が若干長く、途中姫路駅での方向転換を必要とするなど走行経路自体の条件も不利であるため、所要時間が余分にかかっている。後に発車した「スーパーはくと」の方が下りは鳥取、上りは大阪に先着する事があるほどである(「こうのとり」が「北近畿」を名乗っていた時代には、こちらも先行されるダイヤが組まれていた事もあった)。
一方、播磨地区を中心に見れば、この「はまかぜ」3往復が播但線唯一の優等かつ全線通し運転される列車となっており(途中の寺前駅を境に南は電化区間、北が非電化であるためか、現在の播但線の普通列車はすべて同駅で分断されている)、兵庫県の南北を繋ぐ交通手段としては今も大きな存在感を放っている。また、県都の名を冠する神戸駅に曜日に関係なく全列車停車する優等列車も今ではこの「はまかぜ」のみとなった。(※1)
更に、新快速の混雑ぶりから山陽本線内でこの列車に「逃げてくる」乗客もいる。特に18時4分大阪発の「はまかぜ5号」の乗車率は推して知るべしである。
利用客の減少で整理統合される特急列車も少なくない中、「はまかぜ」が後述するように新車を投入してまでの延命が図られた理由はここにあると言っても過言ではない。単に起点と終点を速達する事が目的ではないのである。
(※1)「らくラクはりま」は平日ダイヤのみ運行。「スーパーはくと」は13号のみ停車。
冬季になると「かにカニはまかぜ」として増発の臨時列車の設定が常態化している事も特筆される。これは但馬地区がズワイガニ(松葉ガニ)の名産地であるためで、 旅館とタイアップしたパックツアーも売り出されている。
1998年からは生野銀山のあった生野駅、2016年からは竹田城のあった竹田駅の停車も始めるなど、時代を下るごとに地域密着・観光重視の方向性を強めている列車と言えよう。
歴史
1972年、播但線初の特急列車(厳密には前年に「ゆあみ」という臨時列車が走っていたが)として1日2往復が運転開始。当初はキハ80系が使用されていたが、1983年の「やくも」電車化に伴い余剰となったキハ181系が転用され、以後2011年までの28年間にわたって使用され続ける事となる。
1986年に福知山線の電化に伴う運行体系の再編が行われると、「北近畿」(→「こうのとり」)の運転開始と入れ替わる形で廃止された同線経由の「まつかぜ(大阪駅~米子駅)」の補充として米子発着の1往復が増発されたが、1994年に智頭急行が開業すると逆に1往復が同線経由の「スーパーはくと」に譲る形で季節列車化(後に毎日運転に戻る)され、鳥取以西への乗り入れも中止された。
その後、阪神淡路大震災の影響で運休を余儀なくされた時期もあったものの、復旧後は特急料金の値下げや、同じ播但線を走っていた急行「但馬」を統合したことなどによる停車駅の増加、塗装の変更といったイメージ転換を進め、今日まで存続している。
なお余談だが、「はまかぜ」が乗り入れを取りやめた鳥取駅以西の区間では、現在、前述の「まつかぜ」の名を継いだ、キハ187系の特急「スーパーまつかぜ」が運転されている。
贈る花道
先述の通り、「はまかぜ」には長らくキハ181系が用いられており、2005年に「いそかぜ」が列車ごと廃止となってからも5年以上の間、同系最後の運用場所であり続けた。
JR西日本の新型特急用気動車としては、2001年にキハ187系が登場しており、それから数えると実に10年近く置き換えが遅れた事になる。
これは「はまかぜ」が冷遇されていたと言うよりも、むしろキハ181系との相性が良かったために置き換える動機が薄かったと言った方が良いだろう。
「はまかぜ」は競争にさらされているとは言え、所定4両のところ5~6両に増車される事も珍しくない程度には乗客を維持しており、列車によっては立ち客まで出ていたほどであった。
所定2両でそもそも先頭車しか造られていないキハ187系各運用や、キハ181系最短の3両を組んでも尚空席が目立っていた「いそかぜ」とは需要が大きく異なっており、国鉄特急華やかなりし時代に設計され、長大編成を前提としていたキハ181系を下げる理由が無かった。
また、「はまかぜ」の所要時間が長いと言うのはあくまで走行経路が直線的ではないためで、各線内では設計最高に近い性能を叩き出していた。
具体的に言うと、東海道・山陽本線上はVVVF世代の新快速電車に伍して120km/hでぶっ飛ばし、播但線も陰陽連絡線としては比較的線形が良く110km/hを出す事ができ、山陰本線に入るとJR世代の高性能気動車に囲まれる中で再び全力疾走する。
これもやや曲線通過に特化した感のあるキハ187系より、幹線から山岳路線までを変わらない速度で踏破する事を目指したキハ181系に向いた条件であった。
DML30HS系エンジンの実用化の不手際により登場時から悪評に付きまとわれ、安定してきた頃には既に電化によって幹線から追われる身となっていたキハ181系にとって、「はまかぜ」はその実力を持って挑める、まさに最後に贈られた花道だったのである。
このため「はまかぜ」用キハ181系の後継には、専用の新型車である前述のキハ189系が導入される事となった。編成はグリーン車を抜いた3両が基本となったが、やはり2本連結した6両で運用される事も多く、デザインもキハ181系を彷彿とさせると「正統進化系」として十分な仕上がりになっている。
関連画像
ちなみに同じ由来を持つ旧日本海軍の駆逐艦がかつて存在したというつながりから、「艦隊これくしょん」のキャラクター「浜風」と絡めたイラストも。→鉄道これくしょん