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ディオニュソス(ダンまち)の編集履歴

2020-07-15 21:23:03 バージョン

ディオニュソス(ダンまち)

でぃおにゅそす

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する男神の一人。

注意

この項目ではダンまちの人物について説明します。ギリシャ神話に登場する方についてはこちらを参照。


概要

CV:松風雅也


フィルヴィス・シャリアを始めとする【ディオニュソス・ファミリア】の主神である男神。

葡萄を素材にした葡萄酒(ワイン)造りに長けている酒神である。


ヘスティアヘファイストスデメテルヘルメスアポロンアレスアルテミスとは、天界でも同郷となる。

特にヘスティアからは、自身が故郷でも最高の栄誉となる「十二神」の地位を得られなかった時、その地位をあっさりと譲られた事がある。


神物像

流れる金髪に高貴な貴族風の出で立ちをした貴公子の姿をしており、性格も上品さや優雅さを兼ね揃えた紳士的な人物。

その人格者的な振る舞いからファミリアの団員達だけでなくオラリオの人々からも慕われており、特に女性や女神達からは絶大な人気を誇っている。


自らの手で葡萄から醸造された神酒は、その道において右に出る者はいないとされているソーマですらも、「俺の酒より…極まっている」、「これなら…神さえも酔わせるだろう」と評される程の逸品である。

また、その酒造りに関してはデメテルとも交友関係が深く、彼女のファミリアで造られている葡萄が、自らの神酒となる葡萄酒の原料となっている。


団長でありながらも、同じ団員達と反りが合わずに孤立しているフィルヴィスの事を心配しており、【ロキ・ファミリア】のメンバーであるレフィーヤ・ウィリディスと交友関係を持つようになった事を心から喜んでおり、スイーツを奢った事もある。

その一方、何故か【ギルド】…特に主神であるウラノスに対しては、殆ど敵意に近いまでの猜疑心を向けており、知性や感情を持ち合わせたモンスターである『異端児達』の存在が発覚するまでは、頑なに疑う姿勢を崩そうとしなかった程である。


劇中の様相

ダンまち』の外伝作である『ソード・オラトリア』の第1巻にて、神々の集まる神会(デナトゥス)において、デメテルと共にロキと顔を合わせる形で初登場。


その後、謎の極彩色のモンスターによって自らの眷属達を殺されてしまい、その仇討ちを望んでオラリオでも最大勢力の一つとなる【ロキ・ファミリア】の協力を得るべく、ロキに打診する。

当初はロキに断られるが、互いの信頼を得る為、ダンジョンの24階層にある食糧庫へと向かった【ロキ・ファミリア】のメンバーであるベート・ローガとレフィーヤを含んだパーティーにフィルヴィスを同行させ、この件が切っ掛けでフィルヴィスはレフィーヤと友人関係になってゆく。


その後、【ロキ・ファミリア】がダンジョンの59階層で精霊の分身と対決した事もあって、ロキやヘルメスのファミリアと正式に同盟を結ぶ事になり、オラリオを守る者として、オラリオの破壊を目論んでいる闇派閥怪人(クリーチャー)、そしてそれらと繋がっている謎の存在「都市の破壊者(エニュオ)」との対決姿勢を固めていく事になる。


関連タグ

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ソード・オラトリア

フィルヴィス・シャリア 人格者 葡萄酒 ワイン 葡萄











ここから先はネタバレの為、注意











衝撃の死

【ロキ・ファミリア】によって、クノッソスの進攻作戦において要となる『鍵』の入手に成功した後、殺された眷属達の仇討ちを強く望んでいたディオニュソスは、危険を覚悟の上で【ディオニュソス・ファミリア】の団員達と共に人造迷宮であるクノッソスの進攻作戦に同行する。


【ディオニュソス・ファミリア】、【ロキ・ファミリア】、【ヘルメス・ファミリア】、『異端児』の同盟軍による進攻作戦の中で闇派閥の神の一人であるタナトスが倒れ、作戦は順調に進んでいるかに見えたが、ディオニュソスは仇討ちにはやるあまり、フィルヴィスを同行させて単独行動に出てしまう。

しかし、実は行動を共にしていると思っていたフィルヴィスはレフィーヤ達と行動を共にしておりフィルヴィスを同行させていると思い込まされてエニュオの策略に掛かってしまう事になったディオニュソスは、前後不覚に陥った状態で何らかの「真実」に気付いてしまった直後、連絡手段である眼晶(オクルス)越しに「すまない、ロキ…」と詫びを入れる形で連絡を絶った。



その直後、迷宮(ダンジョン)を突き破る形で、一つの光の柱が天井を突き立った。



光の柱と共に展開へ強制送還されたのはディオニュソスであり、その証拠にフィルヴィスを始めとする【ディオニュソス・ファミリア】の眷属達は「神の恩恵(ファルナ)」によって得たステイタスを封印されて、ただの人間へと戻ってしまう。

その事実に気付いて絶望に支配されたフィルヴィスは、反撃する暇もなく仮面の人物によって首を折られ、遺体もそのまま食人花の元へ放り投げこまれた挙句に捕食されてしまい、片腕のみを残す無惨過ぎる光景を見たレフィーヤは、ショックのあまり精神を崩壊させてしまった。


その直後、精霊の分身達によって不気味な緑肉が放たれてダンジョン内全体へと拡がっていき、対処が出来ない事態に撤退命令が下されるも、緑肉は闇派閥の残党達やモンスター、そして「神の恩恵」を封印されて殆ど無力化されてしまった【ディオニュソス・ファミリア】の団員達も見境無く呑み込んでいく事になり、地獄絵図も同然の光景が広がる中、自分達の身を守るだけでも手一杯であった【ロキ・ファミリア】は、ステイタスを封印されて必死に助けを求める【ディオニュソス・ファミリア】の団員達を見殺しにするも同然の結果になってしまった。

タナトスを追い詰めていたロキ達もまた緑肉に呑み込まれる寸前であったが、自分や眷属達がエニュオに良い様に利用され使い捨てられていた事実に気付いたタナトスが、その意趣返しとして自ら命を絶って発生させた光の柱によって天井に脱出口が開きいた事で、間一髪の所で生還した。


この日、第一次クノッソス進攻作戦は、闇派閥の壊滅とタナトスの死亡という形で『成功』したが、同時にディオニュソス及び80人にも及んだ【ディオニュソス・ファミリア】の全滅という形で『失敗』に終わった。

その後、ロキとヘルメスは、ディオニュソスが黒幕であるエニュオではないかと睨んでいたが、当人がエニュオの仕掛けた策略によって死亡してしまった事で完全にあてが外れてしまった事から、「本当の黒幕」が誰なのか奔走する事になる…。











ここから先は更なるネタバレの為、注意











デメテルとの関係

ディオニュソスが天界に強制送還された事で黒幕が彼ではない事を知ったロキとヘルメスは、本当のエニュオの正体が何者なのかを突き止めようとしていた。


そして、「黒い邪竜とそれを囲う6人の乙女」の絵を見たベル・クラネルより得た情報から、エニュオの真の目的が、かつて邪竜『ニーズホッグ』を倒したとされる大秘術『精霊の六円環』によってオラリオ全体を吹き飛ばす事にあるのが判明する中、ヘルメスはロキの推理から、行方の知れないデメテルの追跡を開始する。


デメテル・ファミリア】の別邸である大量の食糧を貯蓄できる巨大保管庫にてデメテルと対峙したヘルメスに、魔物とは異なる不気味な雰囲気をまとった彼女は「『慈愛の化身』である自らが、下界にまつわる全てを愛せないという矛盾」について葛藤し「理不尽」や「差別」や「区別」の蔓延している下界への不本意を語ろうとするが…。


ヘルメス「———茶番は止めよう、デメテル。もうネタは上がってる」

    「あなたは『都市の破壊者(エニュオ)』なんかじゃない」


「エニュオはあくまでも自分だ」と主張するデメテルに対し、ヘルメスは彼女(デメテル)が真のエニュオの身代わりになっているだけで、その理由が「取引」か「脅迫」のどちらかであるだろうと推測を述べ、それを聞いた彼女は観念して真実を打ち明ける———。


デメテルは、何処か様子のおかしかった『ある神物』について探っていたのだが、深入りし過ぎて不用意な真似をしてしまった結果、エニュオであったその神物に感付かれてしまい、ペルセフォネを始めとする眷属達を人質に取られてしまう事になった。

最初は「自分の言う事を聞け」と脅迫してくるエニュオに屈しようとしなかったデメテルなのだが、目の前で眷属達を見せしめ感覚で殺されてしまう無惨な光景に、「慈愛の化身」である彼女は耐えられず心が折れてしまい、エニュオに言われるまま「何もしなくていい、何も殺める必要はない、ただ口を閉じていろ」という強迫を受け入れざるを得なかったのである。

そしてデメテルが愛する眷属を守りたい想いで必死だった結果、事態はどんどん悪化していく事になり、気付いた時にはオラリオが滅ぼされるまであと僅かとなってしまったのだった。

デメテルは、「エニュオ」を名乗る神物とは天界の頃から関わりがあったが、その時より彼の中にある「歪んだ本性」についてまでは、気付く事が出来なかった。


なお、彼女が真の黒幕であるエニュオでは無いとヘルメスが悟ったのは、アレス率いるラキア王国が攻め込んできたあたりの時期、タケミカヅチから「デメテルの様子がおかしいから、力になってやってくれ」と相談された為である。

おそらく、その時には既にエニュオからの脅迫が始まっていたのだと思われる。












その神はずっと待っていた———。

仮面を剥いで、哄笑を上げる時を———。

己の身に宿した『邪悪』を解き放つ瞬間を———。


エニュオの真実

「死に絶えろ、オラリオ。冥府への道は私が開く———」

闇派閥や怪人達と結託してオラリオの滅亡を目論んで、【ディオニュソス・ファミリア】を全滅に追い込み、更には【デメテル・ファミリア】の団員達をも人質に取ってデメテルを脅迫していた、全身を黒いローブで纏い、顔だけでなく全身にも仮面を纏った邪神の一柱・エニュオの正体…。


それは、第一次クノッソス進攻作戦にて死亡したと思われていたディオニュソス本人だった!!


ロキやヘルメスが、一度はディオニュソスが怪しいと疑いながらもその正体を完全に見抜けなかったのは、ディオニュソスが自らの手で生み出した「神をも酔わせる事の出来る神酒(葡萄酒)」の影響であり、それを自ら飲んでいたディオニュソスは、ワイングラスに映る自分自身の瞳を通して「自分が正義の為に行動する神である」という自己暗示を掛けており、それによって本当に自分を正義の神と信じていたディオニュソスの振る舞いから、ロキやヘルメスはその正体を完全に見抜く事は出来なかったのである。


また、ロキも当初は、ディオニュソスの醸造できる葡萄酒の原料となる葡萄を作る事の出来るデメテルが、神酒を使ってディオニュソスを操っていた黒幕ではないかと疑っていたが、あくまでも原料を作っていたにすぎないデメテルに、ソーマをも超える神酒の製法を押さえる事が出来るのかという疑問が浮かび、更に第一次クノッソス進攻作戦の後、ディオニュソスやタナトス、デメテルの他に「貧窮」を司る老婆の女神であるぺニアの行方が分からなくなったという事実が判明した結果、ディオニュソスと思われた光の柱と共に強制送還された神の正体が、実は神酒で酔わせて操られていたぺニアであったという結論に結び付いている(その証拠として、ロキがダイダロス通りでペニアと接触した際、彼女は骨付き肉と共にディオニュソスの元から盗み出していた神酒のワインボトルを持っていたのを、ロキは思い出している)。

なお、ペニアが神酒によってディオニュソスに操られていたのは、自らの死を偽装する為の『身代わり』にするだけでなく、【ディオニュソス・ファミリア】の眷属達を身代わりであるペニアの眷属として改宗(コンバージョン)させる為でもあり、ディオニュソスに提供された神酒で酔わされた彼女達は、同じく操られていたペニアを本物のディオニュソスと思い込んでしまい、何も気付かないまま操られたペニアから『神の恩恵(ファルナ)』の編纂を受け、知らず知らずの内に改宗してしまう事になっていた(しかも、ペニアは「貧窮」を事物としているが故に、眷属がゼロという変わった女神で、つまりはペニアの異変について気付かれるリスクが限りなく低いという、身代わりにするにはうってつけな利点もあった)。

そして、ディオニュソス(実際は彼によってナイフを突き刺されたペニア)が死んだと思い込んだのと同時に、ペニアの眷属となっていた彼女達も『神の恩恵』の封印によってステイタスが無力化されてしまった結果、誰もが本当にディオニュソスが死んだと思い込まされてしまったのである(唯一、ディオニュソスの眷属のままであったのはフィルヴィスのみで、仮面の人物に殺された上で食人花の餌にされてしまったと思われた彼女は、魔法によって構成された分身だった)。

ただし、ディオニュソスの眷属達の誰もが真実に気付いていなかった訳では無く、一部の者達は神酒の「酔い」が薄れて自分達の主神がディオニュソスでは無かったという真実に気付いた結果、口封じという形で仮面の人物に殺されてしまっており、それが『ソード・オラトリア』の初期にてディオニュソス本人が語っていた「『仇』に殺された子供達」であったのである。


正体を明かしたディオニュソスは、自身の行動の目的が、世界をかつての「英雄の時代」へと戻す事であると主張する。

まだ神が下界に降りなかった時代、人類は当初こそモンスター達に蹂躙されつつも、次第に成長していく事になり、神々が送った『精霊』の影響こそあったものの、人類は『神の恩恵(ファルナ)』の力が無くとも自分達の力だけで『人』としての限界を超え、モンスター達に立ち向かって未来を切り開いており、ロキを始めとする神々からも、『当時の子供達は化物で、未知の塊』とさえ評されていた。

人類が神々も認める程の偉烈を起こし続けた、あの奇跡の時代を取り戻す為ならば、悪名を背負ってでも冥府の扉を開くと主張するディオニュソスであったが、ディオニュソスの潜んでいた空間の周辺に飾られていた『狂騒』を表している壁画の数々を見たロキにはそれがすぐに「嘘」であると見破られ、本当はただモンスターの群れから逃げながら泣き叫び壊れていく子供達の光景である「狂乱(オルギア)」が見たいだけであるという歪んだ願望をロキに指摘されたディオニュソスは、あっさりと『貴公子の仮面』を外して、自己満足に陶酔した『獣の本性』を剥き出しにした。


「くひひひひっ……!」

「なぁんだぁ……バレているのかぁ」

「やめろよ、ロキぃ。ここまでくると不愉快だぞぉ?何も知らないお前に、何もかも見透かされるというのはぁ~」

「だが、そうだ、当たっている、当たっているとも!私が求めるのはただ一つ!」

「嗚呼、オルギア!愛しき狂乱の宴!!」

「英雄なんぞが活躍していた、かつて!下界がモンスターに蹂躙されていた、昔日!あの時代は良かった!誰もが醜悪な怪物から逃げ惑い、つんざかんばかりの悲鳴を上げる!天(そら)よりそれを眺めていた私は、いつも胸を高鳴らせていた!」

「知っているか、ロキ!!脆弱な子供達は理性が振り切れた途端直後、笑うんだ!」

「多大なる恐怖は偉大なる絶頂に変わり、精神と魂を解き放つ!!肉や酒をいくら貪ろうと届かない最高の瞬間は、怪物の爪牙に切り裂かれる血と臓物をもって完成される!愛らしくも美しい『巫女』達は己が身を『贄』に変え、私に『供物』を捧げるのだ!!」

「狂い叫ぶ子供達の悲鳴は、極上の葡萄酒にも勝る!!」


「温厚で紳士的な人格者」と思われていたディオニュソスのその本性は、一言で言ってしまえば「常軌を逸した快楽主義者」そのもの。

『逸脱の神』としての本性を露わにし、善良なる世界に混乱を引き起こす事を至上とするディオニュソスの持論は、もはや常人どころか神ですらも理解に苦しむものでしかなく、かつて神々同士で殺し合いをさせようとした凶悪な悪神であったロキですら、自らのエゴを満たす為なら他人や自分以外の神、その眷属達はおろか、自分自身の眷属達まで身も心も弄んだ挙句に平然と殺してしまえるディオニュソスの恍惚に満ちた醜悪な本性を見た事で、絶句していた。

ただ一人、天界で同郷の出身であるヘスティアだけは、その狂気に満ちた危険極まりないディオニュソスの「本質」について、漠然としながらも気付いていた様で、彼の事を「おかしい」ではなく「怖い」と評している(この時のヘスティアの一言が、ロキが最終的にディオニュソスこそが真の黒幕であったと確信する決定打となっていた)。


かつて天界に神々が退屈な日々を送っていた頃も、ディオニュソスは普段こそ温厚な振る舞いをしていたが、実は些細な事で激昂し、手当たり次第に他の神々に当たり散らすという酷い癇癪持ちであったらしく、このディオニュソスの問題的な部分について、ヘスティアは「病気」または「発作」と評している。

当たり散らしていた神々の中には、後にギルドの主神となるウラノスも含まれており、天界時代には自分のやる事なす事の邪魔をされていたらしく、『密約』を交わす形でモンスターの出没するオラリオとなる地を封印した事についても「自分の楽しみであった『狂乱』を奪われた」と考えている等、もはや愚劣極まりないまでの逆恨みを抱いていたのである(ディオニュソスがロキと結託する前より、ウラノスを「敵視」する位に疑いを向ける姿勢を見せていたのもその為)。

そして、かつての天界で行われたヘスティア達の領地における最高位「十二神」選抜の際も、自分がその席に選ばれなかった「事実」を口実にして、神々で殺し合いをする『狂乱』を起こす事を目論んでいたらしいのだが、諍いになるのを望まなかったヘスティアが自ら席を降りて自身に譲った結果、目論見は頓挫してしまう事になり、正体を現した際にロキの前でヘスティアを「ふざけた女神」と評していた。

ヘスティアは「善意」を持ってディオニュソスを助けようとしたにもかかわらず、それに対する彼の逆恨みはあまりにも身勝手で筋違いとしか言いようのないものだった。


しかし、天界で『狂乱』を起こしても、いくら殺し合いをしようが『恐怖』も『絶望』も感じない『神』では自らの理想的な『狂乱』は実現しないと考えていたディオニュソスは、命に限りのあるが故に『恐怖』や『絶望』を感じられる『人間』達の暮らす下界で『狂乱』を起こそうと考えて、その自分勝手過ぎる欲望を満たす為だけに天界を離れて下界へと降りて来たのだった。

そして、ゼウス・ヘラの二人の神と双方のファミリアが失脚した15年前にて、闇派閥や怪人達と結託し、今日までにおいて念願の『狂乱』を起こすべく暗躍し続けていた事実をディオニュソスはロキに明かすのだった。


当然、ディオニュソスにとっては、結託していた闇派閥のメンバーや怪人達はおろか、自分の眷属さえも、全てが自分の欲望を満たす為の『道具』でしかなかった。

自らの子供達(口封じに始末した子供達)の墓の前で告げた『謝罪』の言葉でさえも「寂しくないよう他の子供達(アウラ達)と一緒に『生贄』に捧げられず、すまない!私の為の眷属(ファミリア)として、華々しく葬ってやるという『契約』を履行できず悪かった!」という悪意極まりない『本音』が隠れており、「私は私なりの方法で彼女達を愛でたいだけさ」と宣いながら笑うディオニュソスの姿に、ロキは「必ずこの『下界の凌辱者』を破滅させる」という憤怒と誓いを宿す程であった。


オラリオの戦力となる冒険者達と『異端児』の同盟軍によって『精霊の六円環』を構成する6体の精霊の分身達との激しい攻防戦が繰り広げられる中、新たに【フレイヤ・ファミリア】、【カーリー・ファミリア】、そして【ヘスティア・ファミリア】のメンバーやアステリオスまでもが援軍に駆けつけ、次々と精霊の分身達は追い込まれていき、ディオニュソスによって捕らわれていた【デメテル・ファミリア】の眷属達も救出されていく。


しかし、ディオニュソスの表情は未だに余裕に満ちていた。

実は、冒険者達と6体の精霊の分身達の戦いは、最初からディオニュソスにとって想定内の事態でしかなく、『オラリオを滅ぼす』という目的も本当の狙いを隠す為のフェイクでしかなかった。闇派閥と結託していたイシュタルを使って精霊の分身の脅威を見せつけ、それらが潜んでいるとされる人造迷宮にまでオラリオの冒険者達を乗り込ませて、6体の精霊の分身達と交戦させた真の目的は、6体の精霊の分身達のいる階層よりも下部に眠っていた「切り札」となる第7の精霊『ニーズホッグ』によって、総動員する形でクノッソスに乗り込んでいたオラリオの冒険者全員を抹殺する事で、時代が逆行するよう仕向ける事にあったのだった。

オラリオ自体よりも、次代の担い手となるオラリオの冒険者達が滅びにこそが、下界崩壊の『鍵』になると、ディオニュソスは睨んでいたのである。

ちなみにロキ達は、イシュタルが所有して【ロキ・ファミリア】が撃破した『天の雄牛』が7体目の精霊だと考えていたが、それは精霊の分身の『粗悪品』…所謂『偽物』でしかなかった(ディオニュソス曰く「懇切丁寧に育ててきた計画の礎を、あんなアバズレ(イシュタル)に渡すものか!」)。


ニーズホッグによって魔力が逆流された影響で、一度は冒険者達に追い詰められた精霊の分身達も再活性化し始め、その勢いを押し返し始めていく。

ディオニュソスは、自らの計画の障害となるのは【ロキ・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】、【ガネーシャ・ファミリア】、【ヘファイストス・ファミリア】の4つのファミリアに、ウラノスの私兵となる『異端児』、予想外という形で参戦してきた【カーリー・ファミリア】の6つの勢力であると判断しており、それは概ね間違ってもいなかった。

しかし、フィン・ディムナによってレイの協力を得てニーズホッグの元へ向かったベルは、自らのスキルである英雄願望(アルゴノォト)と憧憬一途(リアリス・フレーゼ)を発動。それによってクノッソス中に鳴り響いた大鐘楼の音にディオニュソスが半ば混乱する中、各地で追い詰められていた冒険者達は大鐘楼の音と共に奮起する形で6体の精霊の分身達を次々と撃破していき(ついでに『異端児』達の援軍であるアステリオスは、半ば暴走している)、そして【ロキ・ファミリア】のメンバー達を憧憬の対象に、その力を最大限にまで増幅させたベルの「英雄の一撃」によって、最後の切り札となるニーズホッグも撃破されてしまう。

ニーズホッグの存在を暴露していた時には、自らの計画が完璧で勝利を確信していたディオニュソスは哄笑を上げていたが、ここ1年の間で冒険者となり、急激に頭角を現していったベル・クラネルという一人の冒険者の存在を見落としてしまった事が最悪なミスへと繋がってしまい、ここにディオニュソスが15年もかけた計画は完全な破綻を迎えてしまったのである———。


自らの敗因が、「神らしい慢心と全知の驕り…そしてとっておきの『未知』」にあったとロキに指摘されたディオニュソスは、逆上して短剣でロキを殺害しようとする。

しかし、手の中に隠していたモンスターの死骸から拾った灰紛を投げつけられた事で視界を奪われ、その隙を突かれる形で、これまで奪われた自分や他の神々、そして使い捨てにされたディオニュソス自身の眷属達の無念の代弁者となったロキによって、「落とし前」としてボコボコに叩きのめされる(しかも、やりすぎて『送還』される事にならないよう、ギリギリ加減されていた)。

異常なまでの『狂乱』への執着から、「『神の力(アルカナム)』を使ってロキを殺す」という手段も取れなかった(『神の力』を行使してしまうと、それを察知した天界側によって強制送還されてしまう)ディオニュソスは、自分が切り捨てたタナトスや怪人、闇派閥の残党、挙句の果てにはモンスターにまで助けを求める往生際の悪さを見せていた。


最後は自らの元へと駆け付けてきた分身の方のフィルヴィスに散々悪態を吐きながらも、同時に「そんなお前が愛おしい」、「天界に帰っても、私の側にいろ」という本心を告げた後、ロキ達に自分の敗北宣言と称賛の言葉、そして「ダンジョンがもう限界だ」という事実と、「私の野望が阻止された所で『約束の時』を待たずして下界は『冥府』へと変わり自らの望んでいた『狂乱』はやってくる」と言い放ち、自らの胸を短剣で貫いたディオニュソスは、哄笑を上げながら分身のフィルヴィスと共に光の柱に包まれて天界へと強制送還されるのだった。


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