機動戦士ガンダム_MS_IGLOO
きどうせんしがんだむえむえすいぐるー
概要
一年戦争をテーマとしたフル3DCG制作によるガンダムのOVA作品。
基本的に一話完結型の短編という形を取り、戦線に投入された兵器やそれに関わるパイロットや技術者のドラマを追う形で物語が進行していく。
3DCGを駆使したハイディテールのメカ、キャラクターの表情、考証の行き届いた軍服など見るべきところは多く、それらに裏打ちされたミリタリーな作風は人気が高い。
タイトルの「IGLOO」とはアラスカ原住民が住居とする氷のドーム型建造物が語源で、その形状から転じて戦場で軍事物資を集積するための土饅頭を指す軍事用語としても使われており、ジオン軍の秘密兵器群をイメージさせる語としてタイトルとして使われたという。
一方、ジオン視点で描かれる作品とは言え、本作に登場する連邦軍側は、ジオン贔屓で有名なガンダム作品である『SUTARDUST MEMORY』以上に、悪役及びやられ役として徹底的に描かれているのも特徴。
第1作では、ジオン側が感動的かつドラマチックな描かれ方をされているのに対し、連邦軍側ではまるでヤクザみたいな軍人達が多数登場し、新兵を盾にしたり新兵を切り捨て敵ごと撃墜する描写もある等、軍隊というよりもテロリストに近い有様から、一部視聴者からは「やりすぎだ」と批判され、それに開き直った今西隆志監督自身も「ヤンキー軍隊」などと酷い呼び方までしている。
連邦側を視点に描く第2作では、「連邦=絶対悪」の印象を誇張する描写は多少抑えられたかと思われたが、「連邦は敗者でなければならない」という本作のカタルシスそのものは貫かれ、どの話でも連邦軍人達が犬死同然で死んでいくと言った悲惨な描写ばかりとなり、今西監督本人も自身の連邦嫌いの感情を誇張させた上で透写した作品内容である事を認めている(本人曰く「連邦の仕官で良い人なんて、マチルダさんしかいない」との事)。
第1作 機動戦士ガンダム MS IGLOO
ジオン公国軍の第603技術試験隊を舞台に、ジオンの試作兵器の試験の様子を描く。
劇場作品の第1期シリーズ『1年戦争秘録』とOVAの第2期シリーズ『黙示録0079』の各3話ずつ、2期合わせて全6話構成で、いずれもジオン側を主役とした内容となっている。
スーパーバイザーの出渕裕は本作について「負けていく『プロジェクトX』」と表現しており(出典)、その言葉通り、本作に登場する試作兵器はどれも1回または数回の実戦試験に供されるのみで開発が打ち切られた「珍兵器」と呼ばれる物ばかりである。
しかし、それら時代の主流となり得なかった兵器に携わった男たちの全身全霊をかけて試験に挑み、そして散っていくドラマは評価が高い。
なお、本作はジオンサイドで物語が進行する反面、連邦軍の描き方が粗暴に過ぎると批判が上がるが、これに対して今西は小説版『黙示録0079』の巻末解説で、「本作はあくまでジオンの実直な一青年の視点からの物語であり、顔も見えない連邦軍兵士達のキャラを立てるためにあえてヤクザっぽく描いた」と語っている。
全てのエピソードに様々なモビルスーツが登場するが、タイトルに「MS」の文字を冠しつつも第603技術試験隊が運用したモビルスーツは全メディアを通してヅダとゲム・カモフの二機種のみ。またガンダムシリーズの作品でありながら、ガンダムという名の機体が劇中の記録映像内の1カットのみしか登場しないという異色作である。
第2作 機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線
前作のジオン軍視点から一転し、地球連邦軍視点による地上戦が描かれるシリーズ第2作。
前作同様の設定考証や世界観を踏襲しており、また「ガンダム」が登場しない点も前作と共通しているが、本作では全話共通の登場人物こそ登場すれど、特定の主人公が居ない完全なオムニバス形式となっている事が挙げられる。
また、本作では死神と呼ばれるキャラクターが登場しており、彼女に見つめられながら各話で主人公役を務める地球連邦軍人たちは、いずれもラストシーンで予期せぬ無慈悲な事実に直面し、希望を断たれた形で非業の死を遂げる事になる。
このため、前作にあったような不遇ながら雄々しく戦い散っていくような反骨のカタルシスは無く、戦場の非情さがより強調されている。
登場人物
一年戦争秘録/黙示録0079
モニク・キャディラック(CV:長沢美樹)
ジャン・リュック・デュバル(CV:土師孝也)
デメジエール・ソンネン(CV:天田益男)
マルティン・プロホノウ(CV:飯塚昭三)
アルベルト・シャハト(CV:大木民夫)
エーリッヒ・クリューガー(CV:松本大)
アレクサンドロ・ヘンメ(CV:宝亀克寿)
フェデリコ・ツァリアーノ(CV:中田譲治)
ヴェルナー・ホルバイン(CV:堀内賢雄)
エルヴィン・キャデラック(CV:相田さやか)
ヘルベルト・フォン・カスペン(CV:沢木郁也)