国際連合
こくさいれんごう
概要
第二次世界大戦の戦勝国(連合国)を母体として1945年10月24日に発足した国際機構。本部をアメリカ合衆国のニューヨークに置き、国際連合憲章に基づき運営される。英語での名称はUnited Nations。(直訳すると「連合国」)
あくまでも独立主権国による国際機構であり、世界政府では無い(その証拠に国際連合に固有の武力は無い。軍事力を行使する場合には安全保障理事会に発議して「多国籍軍」を編成することになる)。国際連盟とは全く別の組織だが、関連機関の一部を国際連盟から引き継いでいる。
国際連盟の「民主的」ではあるが、それ故にうまく機能しなかった失敗に反省し、連合国の主軸となったアメリカ合衆国・ソビエト連邦(現在のロシア連邦)・イギリス・フランス・中華民国(国際連合設立当時。現在は1971年10月以降から中華人民共和国となっている。)に特別な権限を与えて責任を自覚させることで紛争を解決することを意図して制度が設計されている。一方で、こうした制度は安全保障理事会常任理事国主導による世界秩序を守るための組織という側面も与えている。
旧敵国(枢軸国)とされる日本・ドイツ・イタリア・ハンガリー・フィンランドなどは当初排除されていたために加盟が遅れていたが、フィンランドは1955年に加盟し、日本など他の旧敵国も後に続いた。
さらに、1960年代以降は発展途上国(第三世界)の加盟が増えたため、全世界参加の国際連合総会における安全保障理事会常任理事国の主導権は低下して国際社会の多極化をもたらした。2016年9月現在では国際連合に加盟している「国と地域」は195に及んでいる。
冷戦時代から指摘されていたが、拒否権を持つ安全保障理事会常任理事国の利害(アメリカ合衆国・中華人民共和国・イギリス・フランス・ロシア連邦の5カ国)が衝突する際には国際連合はうまく機能しない。冷戦時代においてはそもそも大国の利害が対立する紛争が国際連合の場に持ち込まれることが少なかったため、表面化することはあまり無かったが、冷戦終結以降国際連合が本来の紛争解決機能を発揮する場面が増えるに従って、安全保障理事会常任理事国の対立の場として議論が立ち往生するケースが目立つようになっていった。また国際連合事務総長の選出に際しても安全保障理事会常任理事国は拒否権を有する為、基本的に事務総長の人事は安全保障理事会常任理事国の妥協によって成立している側面がある。
安全保障理事会常任理事国(2021年6月時点)
ロシア連邦はソビエト連邦の後継国と見做されて、安全保障理事会常任理事国の座を引き継いだ。元々安全保障理事会常任理事国だった中華民国は1971年10月のアルバニア決議によって国際連合から追放され、現在は中華人民共和国がその座に就いている。(現在では日本・ドイツ・インド・ブラジルなどが新たな安全保障理事会常任理事国になるべく運動を展開しているが、いまだに実現の目処は立っていない。)
安全保障理事会常任理事国には非常任理事国を含む他の加盟国に無い特権として拒否権が与えられている。これは動議が発議された場合、いずれかの国が1カ国でも拒否権を発動すれば、その動議は否決されることを意味する。この場合は文言を弱めて新たな動議を発議することで何とか妥協を取りつけて体裁を整えることになるが、最近では決裂することや動議に何の拘束力も無い文言に修正されることが多くなるなど、安全保障理事会常任理事国の間の対立が深刻化しつつある。
関係機関
以下は国際連合と提携を結んでいる国際組織であるが、下部組織ではない。したがって国連未加盟の国家や地域が関連団体に加盟していることもある(例えば日本はユネスコに国連加盟前から参加している)。
世界保健機関(WHO)
国際通貨基金(IMF)
国際連合食糧農業機関(FAO)
世界銀行(WB)
世界知的所有権機関(WIPO)
国際連合児童基金 (UNICEF、ユニセフ)
など。
非加盟国
世界中の国のうち、ほぼ国際的に認められた国の大半は2000年代後半までに国際連合への加盟を完遂している。発足以前から独立主権国と見做されていた国は、2002年のスイス加盟以降はバチカンを除いて全加盟状態となり、それ以降に独立した国(例えば2006年6月のモンテネグロと2011年7月の南スーダンなど)は独立後すぐに国際連合に加盟するのが普通となっている。
現在国際連合に加盟していない国は以下のような国である。なお国際連合の定義する「国際連合非加盟国」と、国際連合に加盟していない国は厳密には異なる(下記の「オブザーバー」欄を参照)。
該当国の自主判断で加盟を見合わせている国
前述の通りこの条件に当てはまる国はもはや世界中でもバチカンくらいしか存在しない。バチカンは中立性を保つために国際連合の加盟を見合わせているが、オブザーバーとして参加している。この地位にはバチカンを含めたいくつかの国家組織と、国際的な地域連合組織などが該当している。かつてはスイスも同様の理由で加盟を見合わせてオブザーバーの地位に留まっていたが、国民投票により加盟することとなった。
独立主権国であると同時に外交関係を外国に委託又は連合体制を組んでいる国
例えばニュージーランドと自由連合を組むクック諸島・ニウエがある。こうした国は連合相手の国に外交権・軍事権などを委託し、自らの虚弱な体制を補填する関係にあるが、一方で自由連合の場合は国家間の地位は対等と見做されている。
他にもアメリカの自由連合相手であるパラオ・ミクロネシア連邦などがあるが、これらは国際連合に加盟している。一方でクック諸島・ニウエの国際連合代表権はニュージーランドが付託されたまま掌握しており、国際連合からは独立主権国と見做されていないことが非加盟国のままの原因である。
とは言え国際連合自身が一方で両国の「条約締結権」つまり独自の外交権を認めるという矛盾した対応も採っており、2000年代以降両国とも独自の外交関係を築きつつある。なお国際連合原加盟国であるウクライナとベラルーシは、独立した外交権をソビエト連邦に握られ、その一地域としか見做されていなかったにも関わらず、当時のソ連の強い主張で加盟国となった。認められたのはソ連の国際連合の脱退を防ぐためだったと言われている。独立したのはそれから遥かに後の1991年である。
事実上独立しているが、国際連合加盟国との深刻な係争により加盟出来ない国(殆どの「非加盟国」はここに該当する。以下はいくつかの国を個別に紹介する。)
- パレスチナ
- 加盟国136ヶ国が国家承認。この中でも特別な地位にあり、いくつかの国家と外交関係を結び、国際連合からもオブザーバーの権利を貰っているが、加盟は未だ成されていない。原因はもちろん領土を巡って係争関係にあるイスラエルとの関係があるが、そのバックで国際連合安全保障理事会最大の実力国であるアメリカが首を縦に振らないことがパレスチナがこの地位に留まる最大の要因であろう。
- 台湾(中華民国)
加盟国19ヶ国が国家承認。但しかつては大半の国際連合加盟国が国家承認していた。言わずもがな安全保障理事会常任理事国の1つである中華人民共和国と地位を巡って係争状態にある。そもそも安全保障理事会常任理事国の一角は同国が占めていたが、1971年10月のアルバニア決議によって中華人民共和国と入れ替わった経緯を持つ。両国とも「一つの中国」を主張し、互いに互いを国として認めていない。然るに、両国共に外交関係を結ぶ国は存在すらせず(それを両国が認められない)、このため台湾が再び国際連合に加盟することを難しくさせている。近年になって中華人民共和国の政治・経済的規模が増し、中華民国と国交を結ぶ国は減少しつつあるが、それでも台湾が経済的に重要な国家であることに変わりはなく、この状態を保ったまま45年以上が経過している。
- コソボ
- 加盟国107ヶ国が国家承認。こちらは独立元のセルビアと、そのバックにつくやはり安全保障理事会常任理事国のロシアの反対により加盟は実現していない。独立の大元の経緯はユーゴスラビア紛争によるもので、この時最初のユーゴスラビア解体時からセルビアに対して対立的な立場を取っていたアメリカ・イギリス・フランスら旧西側諸国の空爆などもあり、国際連合コソボ暫定行政ミッションによりコソボは暫定的に統治された。この後平和裏にセルビアと統治問題が解決出来たら良かったのだが、交渉決裂の形で独立した。この経緯もあってロシアとセルビアは同国を承認する気は無く(現在もセルビアの一自治区と考えている)、オブザーバー加盟すら出来ていない。
- 北キプロス・トルコ共和国
- 加盟国1ヶ国(トルコ)が国家承認。キプロスの北部をトルコ軍が占領し、そのままトルコ系住人を独立させた。ギリシャ系が多く残ったキプロス(南)の方は国際連合加盟国としてトルコと北キプロス以外の国から国家承認を受けてヨーロッパ連合にも加盟しているが、対する北キプロスを承認するのはトルコのみである。
上記以外にもミクロネーションなどの「自称」国が世界中に数多存在するが、外交関係など存在しないような国も多く、まず国とは認識されていないことも多い。それらの国は当然国際連合に加盟していない。
国家条件を満たしていない国
外交権の委託による自由連合国家の他にも、国民を持たないとか領土を持たないとかで国としての基本的資格を喪失している国がある。その1つがマルタ騎士団で、この「国」には領土が存在しない。しかしながらかつては国としての体裁を保っていたために「主権団体」として外交関係がある国があり、国際連合もオブザーバーとして同騎士団を扱っている。
オブザーバー
オブザーバーの地位は正しくは「オブザーバーとして参加するために招待を受ける実体あるいは国際組織」であり、要は「国際連合が総会に招待しますよ」としている国・団体である。
同じオブザーバーでも国際連合の認める範囲内で行使出来る権限は異なる。最上位と見做される「国際連合非加盟国」は国際連合自身が独立主権国と認めるが正式加盟していない国で、安全保障理事会の決議があれば正式な加盟国となる権利を有する。「国際連合非加盟国」は現在バチカンとパレスチナのみである。もちろん汎用的な意味での非加盟国はこの場合の「国際連合非加盟国」とは見做されていない。
「国際連合非加盟国」以外はヨーロッパ連合などの地域連合や、イギリス連邦など旧植民地帝国により形成される緩やかな国家連合などの機関がオブザーバー団体と見做されている。