次元戦団バイラム
じげんせんだんばいらむ
次元戦団バイラムとは、スーパー戦隊シリーズ第15作「鳥人戦隊ジェットマン」に登場する敵組織である。
概要
「あらゆるものの始まりと終わりを支配する神」を名乗り、裏次元を征服した謎の武装集団。
裏次元侵略戦争のさなかで首領が不在となり、地球に現れたときは3人の幹部がいたが、マリアを引き入れて4人となった。
地球侵略にあたり、ジェットマンを倒した者がボスになるというルールを決め、ゲーム感覚で攻撃してくる恐るべき組織である。
戦隊シリーズでは初めての次元系の敵組織である。
幹部
裏次元伯爵ラディゲ
演:舘大介(現・舘正貴)
歪んだヤドカリの殻のような兜と、異形の鎧を身に纏ったバイラム幹部で、4幹部の実質的なリーダー。
冷酷な性格で、人間を下等生物と侮蔑する(最終回を見る限り、その指摘はあながち間違ってはいなかったと言える)。また、支配欲と執念深さも並外れており、自らの上に立つ者の存在をよしとせず、ジューザやトランザを策略で弱体化させ、圧倒した。
武器は次元をも切り裂く「秘剣ブラディゲート」で、得意技は右手から放つ衝撃波と、光線状の鞭。また、洗脳の為の催眠光線を放つこともでき、次元移動による撹乱も得意としている。
最たる攻撃法は、空に幻影を投影し、その幻影の口からブラディゲートを光線状に発射する技で、この技は、障害物を完全に素通りし、例えロボのコクピット内であろうと、操縦者を仕留めることが出来るというとんでもないもので、この技でジェットガルーダを操縦していた、裏次元人ディメンシア人のレイを殺害している。
ジューザに反逆し、人間にされた際には、死病を完治させる程の治癒能力を見せている。
怒りの感情が高ぶると、凶獣ラディガンに変身し、口からも赤いエネルギー光球を発射する。
終盤でベロニカのエネルギーを吸収して、魔獣ラゲムとなった。
最終決戦時、ラゲムになる前にリエから受けた深手に追い討ちの一撃を食らい、怨念に満ちた呪いの言葉を吐きながら爆散。
最期は、ラディゲの兜のみが残された。
続編小説では思いもよらぬ方法で復活するも、それが裏目に出て最も屈辱的な形でジェットマンに倒され、消滅してしまう。
マリア
演:丸山真穂
4幹部の紅一点。22歳。
その正体は、スカイフォースW3隊員でレッドホーク/天堂竜の恋人、藍リエである。
アースシップ破壊の際に宇宙に放り出され、バイラムに捕まり洗脳された。
リエとしての記憶は失われているが、ピアノの弾き方は覚えていた。劇中で演奏していた曲は、ベートーベンの「熱情ソナタ」である。
武器は、鞭や剣に変形する万能スティック・ネクロッド。
一度は三魔神の攻撃で洗脳が解けて、リエに戻る。このときは彼女はマリアとしての記憶を失くしてしまい混乱してしまうため、ラディゲを見るなり怯えながら再度洗脳される。その後もリエに戻ってしまう場面もあったが、初回と違い洗脳後の記憶が残ってしまう。自身でマリアに戻ることも可能。
終盤で、力を欲するようになり、ラディゲに血のヒトデを寄生させられ、次第に獣化していった。
そして第49話で竜の接吻で完全に洗脳が解けるが、突如現れたラディゲによって悪事に手を染めていたことを悟ってしまう。
今まで散々自分を弄んだラディゲへのせめてもの復讐として背後から刺すが、怒り狂ったラディゲに斬りつけられ、瀕死の重傷を負う。
最期は海岸でグレイに看取られながら息を引き取る。彼女の亡骸はグレイの涙によって、光となって消えていった…。
グレイ
演:日下秀昭
バイラムのロボット幹部。
ロボットではあるのだが、酒・煙草・音楽を嗜むなど、4幹部の中では一番人間臭い。
組織の潤滑油的存在でもあり、彼がいなければバイラムはもっと早く崩壊していたと思われる。
実際、あのラディゲが頼りにする一幕や、マリアを身を挺してかばう場面、バイラムを支配したトランザに対して「自分のやり方で戦う」というラディゲなら間違いなく痛めつけられていたであろう言葉を返しても不問にされたりと、基本的に協力関係にない他の幹部たちからもかなり信頼されている。
他の幹部や単独で出陣することが多く、次元獣を指揮して戦ったのは3回のみ(11、26、39話で、この3回はすべて井上敏樹の脚本ではない)。
ブラックコンドル/結城凱とは数多くの死闘を演じ、特に最後の戦いは数ある戦隊シリーズでの名勝負の一つとなっている。
最期は、皮肉にも咄嗟の機転で自分の武器を手にした凱に敗北。凱に火をつけてもらった葉巻で最後の一服を嗜みつつ、マリアのことを想いながら眠るように機能停止する。
トラン
演:久我未来
バイラムの少年幹部。9歳。
右手に装備したメタルトランサーで、サイコキネシスやテレポーテーションといった超能力を駆使する。
「ジェットマンを倒したものがボスになる」というルールを発案したのもトランで、年相応らしく戦いをゲーム感覚で楽しんでいたが、子供であることが最大のコンプレックスになった。
そして、36話で敵味方双方から子供扱いされた屈辱と怒りから、急成長を遂げる。
井上敏樹による小説版ではトランザにはならない。
トランザ
トランが、ラディゲ達やジェットマン双方から、子供扱いされたことで、その怒りのエネルギーで急成長し、大人になった姿。
ラディゲ達の作戦に余計な手を加え、それが失敗するや、ラディゲ達に責任転嫁したり、ベロニカで圧倒的な力を誇示したり(わざわざラディゲたちの搭乗席も作った)、ジェットマンの苦悶の声を『素晴らしい音楽』と評する等、何処までも自己顕示欲の塊且つ、トラン以上にひねくれた性格になり、正に「体は大人、頭脳は子供」を地で行った性格である。
超能力も大幅に向上しており、さらに長剣ボルトランザと優れた格闘能力で、初登場時は、ジェットマンのみならず、バイラム(特にラディゲ)を、8対1という不利な状況にもかかわらず、一方的に叩きのめし、その後も大いに苦しめた。
他にも、魔神ロボ・ベロニカや、その前身試作型等身大ロボであるG2の開発、着弾対象を石版化するバイオガンを独自で開発する等、メカニックの知識や技術に長けている面もある。
そして言いだしっぺの法則とでも言うのか、自ら提案した「ジェットマンを倒した者が、バイラムのボスになる」というルールを反故にし、バイラムの玉座に座った上、ラディゲ達幹部をも屈服させる。
しかし、後にラディゲによって、戦隊史に残る、悲惨な末路を遂げることになる。
非公式続編・『時を駆けて』では、ラディゲ復活の影響で回復し、幾度となく行動を妨害。
最期はラディゲを倒すために結果的にジェットマンに手を貸す道を選んだ。
名言
「秋だってのに蛙がうるさいぜ。『井の中の蛙』ってな」
「蛹を破り蝶は舞う。トランの殻を破った時、このトランザが、天に輝く!」
「リボンを付けて返そう。貴様達から受けた屈辱をな!」
「ラディゲ・・・俺の名を言ってみろ」
(上記の台詞はすべて第37話『誕生!帝王トランザ』より)
バイラムの戦力
次元虫
地球上のあらゆる物体に取り付き、次元獣を誕生させる卵生の異次元生物。
ダメージを負うと、次元獣を再生・巨大化させる。
本編では、等身怪人大の親虫が卵を多数産み落とした後にジェットマンに倒され、これ以降に
親虫は登場していないが、この親虫が産み落とした卵を、マリアが次元獣製造用の次元虫を
バイオ次元虫に変えてしまったが、幹部たちはそれに特に困った様子を見せなかった為、繁殖用の次元虫が残されていたか、ジェットマンが倒した個体以外の親虫が存在する可能性もないとは言えない。
次元獣
次元虫が器物に取り憑くことで誕生する怪人。
ゴミジゲン(第21話):捨てられたクマのぬいぐるみがゴミと一緒になって誕生した。悲しい最期を迎える。
ドライヤージゲン(第28話):厄介払いしたトランを見返すためジェットマンに勝負を挑むが肝心の所でドジを踏む。最後は戦団を離れて理容師として地道に働くことに… → (公式が病気)
バイオ次元虫
マリアが超能力で生み出した、次元虫に地球上の全生物の遺伝子を付加させてバイオ次元獣を生み出す虫。細胞に2つの核を持つ不完全生物で、繁殖はできない。
バイオ次元獣
器物と生物の要素が組み合わさった生物。『仮面ライダーV3』のデストロン怪人や、『科学戦隊ダイナマン』のメカシンカと一見似ているが、彼らは生物ベースに器物の要素を加えたものに対し、バイオ次元獣は逆に器物ベースに生物の要素を加えたものである。
ヨロイスネーク/ハンマーカメレオン/アリバズーカ/ヒルドリルなど
グリナム兵
グリナムの種から生まれる下級戦闘員。手に持った剣や手から放つ銃弾が主な武器。
知能はさほど高くないが、今の待遇に不満を持つ者もいる。
女性と思われる個体も存在する。
『悲しきグリナム兵』というテーマソングがある。
魔城バイロック
バイラムの本拠地。次元転移装置を装備し、表次元や裏次元を自由に行き来する。
34話で竜が内部に突入した際、重力などの物理法則は一切無視された空間が広がっていることがわかった。
最後はラゲムの鎧となって背中に取り付き、ガルーダクローによって破壊された。
ちなみにファミコン版では、グレートイカロスのバードメーザーで破壊された。
その他
演:高都幸子
裏次元侵略戦争で行方不明になっていたバイラムの首領。魔獣セミマルの卵を宿しながら
、隕石に擬態し地球にやってきた。
額から発射する光線を浴びた人間は体内から結晶を生み出し、最終的には水晶化する。
また、感情が高ぶると、魔獣形態である『魔獣ジューザ』に変身する。
しかし、ラディゲたち4幹部の反逆に会い、最期はラディゲに卵を奪われて消滅した。
魔獣セミマル(第17~24話)
「その力は一瞬にして大地を割り、天を焦がす」といわれる究極の破壊獣。
ジューザからラディゲが奪った卵より誕生し、人間の苦しみや悲しみを吸って成長する。
ジゴクメドゥーサ(第34話)
バイロックに巣食う異次元生物で、次元転移装置の護衛が使命。
試作ロボG2(第42話)
声:むたあきこ
トランザが製作したテストロボット。失敗作のため、訓練用としてグリナム兵に下げ渡される。
偶然グレイに救われ、彼を慕うようになるが…。
魔神ロボベロニカ(第44・45話)
G2の試作を経て、トランザが独力で造り上げた巨大ロボ。人間を体内に拉致し、生体エネルギーを吸収して動力にする。
敵の位置的にはクリスマス商戦用の中ボスに位置するが、その実力はジェットマンの最強ロボであるグレートイカロスの最強技『バードメーザー』を防ぎ、そして完敗まで追い込み、サポートロボであるテトラボーイを戦闘不能に陥らせるなど、下手をすればラスボスクラスの戦闘力を持つ。
初戦でもジェットマンを後一歩で追い詰める物の、ラディゲの妨害で撤退を余儀なくされ、その後もトランザの圧政に腹を据えかねたラディゲの再度の妨害に始まり、数々の不利な要因が重なり、戦局はジェットマンに傾き、最終的にテトラボーイを乗せて打ち出した、バードメーザーにより胸部を貫通され爆散した。
トマト大王(第46話)
心のトラウマを引き出す異次元生命体メタモルが、雷太の心に反応して実体化したもの。
元はトマト嫌いだった幼少期の雷太の恐怖心が生んだ空想上の存在。
最終的に雷太がトマト嫌いを克服したことにより、頭を食われて弱体化。そのままジェットガルーダに敗れ死亡した。(放送当時、一般から募集したキャラコンテストより採用受賞されたキャラ)
バイラムの強さ
大星団ゴズマや銀帝軍ゾーンなどと比べると組織規模はだいぶ小さいが、幹部・怪人の個々の戦闘能力が高く、裏次元は女帝ジューザと幹部3人(表次元への侵攻前だった為、当時はマリアは不在。ただし既に戦死した他の幹部が存在していた可能性もある)の手で制圧され、ジェットマンも毎回総力戦を強いられる。当初はジェットマン打倒の企てをゲーム感覚で楽しんでおり、「お前達が強ければ強いほど我らのゲームは面白くなる」という余裕を見せた。
レッドホークの恋人を洗脳し、マリアとして幹部に迎え入れたり、アコが大切にしてきたプータンを踏み躙ったりと、戦隊メンバーの精神をも苦しめてきたことからも、その強さが決して力押しだけに止まらないことがいえる。
最大の弱点は団結力と協調性の低さ。ジェットマンを倒した者が地球を支配するというルールで競い合っていたということと、幹部全員が首領であるジューザを煙たがっていた(戻ってきたジューザに再度従うことに対してトランが嫌に大人びた態度と雰囲気で露骨に難色を示していた)ことからも窺える。このため何度もジェットマンを倒すチャンスを逃した。
ただし、ジューザを排除したことを別にすれば、前半は幹部の団結力が無いといっても「各人バラバラで作戦を遂行し、協力し合わない」「互いの失敗を嘲笑し合う」といった程度に止まっている。露骨に足を引っ張り合ったり、まして相手を亡き者にしようとしたりするまでは行かなかった。このレベルの抗争が本格化するのはトランザが登場してからである。
最後は、次第に結束していったジェットマンに対し、ラディゲやトランザの露骨な妨害合戦や、マリアやグレイのもつれた感情によって、次第に組織は瓦解していった。
この団結力の無さが、本編・『時を駆けて』の両方でバイラムの命取りとなっていくことになる。